「鬼滅の刃」下野紘&松岡禎丞、“先輩・後輩”互いから見た演技のスゴさとは? 【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

「鬼滅の刃」下野紘&松岡禎丞、“先輩・後輩”互いから見た演技のスゴさとは? 【インタビュー】

2020年10月16日(金)に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。2019年にTVアニメが放送された『鬼滅の刃』は老若男女問わずファンを増やし、今や人気作となった。

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松岡禎丞、下野紘
  • 松岡禎丞、下野紘
  • 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
  • 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
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  • 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
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2020年10月16日(金)に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。2019年にTVアニメが放送された『鬼滅の刃』は老若男女問わずファンを増やし、今や人気作となった。


心に響く物語を盛り上げる要素のひとつが声優陣による熱演。
我妻善逸役・下野紘が原作の表記の完全再現に挑んだという“汚い高音”や、嘴平伊之助役・松岡禎丞の野性味あふれる演技も聴き応えがある。

劇中の初対面ではいきなり取っ組み合いの争いを見せるなど、最悪の出会いを見せた善逸と伊之助だが、劇場版では仲間としての信頼感を築いているように思う。
2人の関係性は、TVアニメを経てどのように変化していったのだろうか。お互いの演技の印象や劇場版の注目ポイントを含め、劇場版公開前のタイミングで下野と松岡に話をうかがった。
[取材・文=ハシビロコ、撮影=Fujita Ayumi]

■「配役を聞いた瞬間に納得した」


――同じ事務所の先輩・後輩であるおふたりですが、『鬼滅の刃』での共演が決まったときのご感想は?

下野:松岡が伊之助役に決まったと聞いたときは「あ、同じ現場だ」と嬉しく思いましたし、「なるほど」と納得しました。現場でどういう芝居が飛び出してくるのか楽しみになりました。

松岡:「伊之助で受かりました」と聞いたときは喜びと同時に、「善逸役は誰だよ!」と気になっていました(笑)。

「善逸役は下野さんです」と聞いてあまりにも納得しました。

『鬼滅の刃』に上限はない


――お互いに納得のキャスティングだったようですが、アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?

下野:アフレコ現場へ実際に行ってみると、竈門炭治郎役の花江(夏樹)くんの覚悟と気迫が想像以上でした。
アフレコ本番前のテストで彼の声を聞いたとき、「炭治郎がこれほどの声量や気迫を出すのであれば、善逸はもっとテンションを上げていかないとダメだ」と思いました。徹底的に善逸を演じる。
改めて、任されたキャラクターを演じ切る覚悟を決めました。

松岡:伊之助は猪の頭をかぶっていて表情が見えない分、難しい役どころになるなと感じていました。だからこそ、これまで声優として培ってきた経験や技術を総動員しなければなりません。


でもアフレコをするたびに「まだ足りない」と思ってしまいます。『鬼滅の刃』のアフレコはいつも限界が見えないので、「これ以上やってはダメだ」という感覚がありません。
自分はまだまだだと感じる一方で、「もっと上へ行ける」と向上心を持って臨んでいます。

――TVアニメの最終回から約1年経ったなかでの劇場版です。アフレコにはどのようなお気持ち臨まれたのでしょうか。

下野:画にも情報が詰まっているので、ひとつひとつのセリフを大事にしながら演じていきました。
『鬼滅の刃』は大胆な作画の中にも、繊細な表情が詰まっています。そこを捨てるわけにはいかないと演じる側も集中して臨みました。

それでも松岡が先ほど言っていた通り、どれだけ演じても「まだ足りない」。もっと高みを目指したいと思えます。


松岡:ufotableさんの作る画の力はすさまじいです。アドリブで息をひとつ入れようとタイミングを探してみても、息つく暇がありません。画自体がかなりお芝居をしているので「アドリブを入れなくてもいいのでは?」と感じてしまうほどで、常に画と芝居の駆け引きがありました。

劇場版を制作すると決まったときは、演技も映像に負けないくらいファンの心に届くものにしようと気合いが入りました。

進化し続ける高音と叫び


――TVアニメと劇場版を振り返って、お互いの演技の印象はいかがでしたか?

下野:「松岡はどうしてその叫び方で伊之助を演じ続けられるの?」と驚きました。
僕の場合、善逸を演じるうえでこれまで培ってきた声の出し方をコントロールしつつ“汚い高音”を出しています。のどに負担をかけ過ぎない方向性を見定めたうえで演じているんです。

でも同じ方法で僕が伊之助を演じたら、確実にのどを痛めてしまう。それくらい叫びがすごい。普通に叫ぶのではなく、荒々しく瞬間的で、それこそ獣……いや、ケダモノみたいだな、と(笑)。

松岡:ケダモノ(笑)。

下野:これほど動物的な表現ができるのはすごいと思いますし、叫んでいる中でも的確に芝居を乗せてくるんです。
アフレコ中は気持ちが高まってくると、肉体への負担を無視してしまいがちだし、アドレナリンも出ているから痛みを感じない。とはいえその後の仕事も考慮すると、冷静になってセーブするのが普通です。

でも松岡は痛みよりも演じることを優先している。「のどが痛むから今日は伊之助を演じられない」と一度も弱音を吐くことなくコンディションをキープし続けている。
これはすごいことですね。やっぱり伊之助は、松岡にしか演じられないと思います。

松岡:逆に僕が下野さんのように善逸を演じると確実にのどが壊れるので、汚い高音は下野さんにしか出せないです。下野さんならではの発声方法があるからこそ、善逸の声が生まれたのだと思います。

実はアフレコで初めて善逸が汚い高音を出したとき、隣にいた僕はあまりの声量にのけぞってしまって。あんな経験は声優人生の中でも初めてです(笑)。


下野:松岡の首が一瞬ビクッと横に折れたので、僕もびっくりして(笑)。まるで「ちょっと下野さん、うるさい!」と言っているかのようでした。

松岡:つんざくような音というか、本当に耳に「キーン!」とした衝撃が走りました。

――アフレコではお互いに、今まで聞いたことのない演技に驚かされたのですね。

下野:松岡がこれまでどんな役を演じ、どんな経験を積んで役者として生きてきたのか。その経験が活かされているからこそ、これまでになかった演技が飛び出してきたのだと思います。

『鬼滅の刃』の戦闘シーンは息つく暇がない中で、そのキャラクターの呼吸のまま戦い続けなければなりません。
伊之助の呼吸は、さまざまな修羅場をくぐり抜けてきた松岡にしか演じられないと実感しました。

松岡:善逸はときには劣等感をのぞかせながらも、ひとつのことを極めようと真摯に取り組む、そんな善逸の声を聞いていると、声優業界の第一線で活躍し続けている下野さんにも、つらいことや心が折れそうなときを乗り越えてきた経験があったのかなと感じました。
TVアニメや劇場版などを経てこれからどこまで高みに上がっていくんだろうと、楽しみでなりません。


下野:そのうち高音の周波数が上がり過ぎてコウモリ並みの超音波のようになるかもしれません(笑)。

松岡:知らず知らずのうちに下野さんの声がみんなの鼓膜を破壊していく(笑)。

下野:「なんか今日は耳が痛いな」と思ったら僕の声が原因……もはや人間の出せる音ではないです(笑)。

ようやく演じられたお気に入りののシーン


――最初、予告映像を見たときの感想はいかがでしたか?


下野:期待感を高めてくれる映像ですし、主題歌の「炎(ほむら)」は曲を聴くだけでも泣けてきます。予告の時点でこんなに感動するのか、と驚いたくらいです。

松岡:『鬼滅の刃』のアニメーション制作を担当されているのがufotableさんなのですが、予告映像を見るだけでも鳥肌が立つような映像でした。

――まだ観ていない方へも、劇場版の演技で「ここを聞いてほしい!」と思うポイントを教えていただけますか?

下野:とあるシーンの幸せそうな善逸です。実は大好きなセリフで、「いつ本番で演じられるのかな」と楽しみにしていました。
しかしTVアニメが「無限列車編」直前で最終回を迎えてしまい……。そのシーンを演じずに「終わっちゃったな」と寂しく思っていたので、ようやく劇場版でお披露目できて嬉しかったです。
全力で幸せそうな善逸を演じたので、ぜひ聞いてください。

松岡:僕もネタバレしないようにオブラートに包んで言いますと……伊之助の夢の中のシーンです。

下野:オブラートに包みきれてない(笑)。

松岡:理想の伊之助が登場する良いシーンなので、ぜひ観てほしいです。こんな伊之助に追いかけられたら怖すぎて漏らす、と思っていただけるほどの迫力で演じました。もはや化け物です。

下野:伊之助ならそこは「ケダモノ」って言わないと(笑)。

松岡:そうでした(笑)。ケダモノのような伊之助が登場するシーンは必見です。

――伊之助は劇場版で炭治郎と共闘するシーンもあります。炭治郎との信頼関係を出そうとアフレコで意識したのでしょうか。

松岡:伊之助は、それほど信頼関係を自覚してないかもしれません。むしろ自分は親分だから子分である炭治郎たちを守らなければ、と思っているんじゃないかと考えています。

それでも初めて会った頃に比べれば炭治郎との絆も強くなっているので、戦いにも信頼感が表れていると思います。

ケンカからじゃれ合いへ


――善逸と伊之助の出会いを振り返ると、TVアニメ第13話「命より大事なもの」で対立するシーンが印象的でした。2人の関係は物語が進むにつれ、どう変化していったと感じていますか。

下野:仲良くなったと思います(笑)。鬼の気配がする箱を守る善逸と、彼をボコボコにする伊之助という最悪の出会いから始まりましたが、戦いや修業を共にするなかで絆が深まっていきました。
第26話「新たなる任務」のラストで電車を乗り逃しそうになる善逸を伊之助が引き上げてくれるシーンを見たときは、「本当に仲良くなったなあ」と感慨深かったです。

劇場版では、善逸は伊之助をあきらめたりほったらかしたりするのではなく、ずっと相手をしている。仲良くなったんだね、としみじみ思いました。

松岡:たしかに最初の出会いは衝撃的過ぎました。あれほどボコボコにされたら普通は「ごめんなさい」のひとつでも言ってもらわないと気が済まないと思うんです(笑)。

下野:たしかに(笑)。

松岡:それでも善逸なりの優しさで伊之助を受け入れてくれましたし、苦楽をともにすることで仲良くなれました。

第26話で機能回復訓練が終わって旅立つ前、蝶屋敷の3人娘からおにぎりをもらったときのシーンにも、善逸と伊之助の変化が表れていると思います。
伊之助がすぐにおにぎりを食べようとして、善逸と言い争いになる。
しかしケンカをしているのではなく、どちらかといえばじゃれ合っている雰囲気が出ていました。
登場したばかりの頃の伊之助なら、言い返された時点で善逸をぶん殴っていたと思います。

下野:炭治郎の反応も変わりました。最初は2人が言い争っていると止めに入っていたのに、第26話ではまったく気にしていない。きっと「この2人はもう大丈夫だ」と認識しているのだと思います。


だから劇場版でも炭治郎は伊之助たちのことを止めない。自分が話している相手のことしか見ていません。あんなに心優しいやつが、俺たちのいざこざに関してはまったく口出ししてこないなんて(笑)。

松岡:前までだったら「やめろ!」ってすぐに言ってきたはずなのに(笑)。

下野:無限列車でも俺しか伊之助を止めていない……!

――劇場版では唯一のツッコミ役になってしまった善逸。下野さんが演じるときも、ツッコミとしての立場を意識していましたか?

下野:ツッコミとしてはあまり自覚していません。たしかに炭治郎や伊之助に比べて一般常識があるとは思いますが、女の子が絡むと周りが見えなくなるので…(笑)、それほど常識人とはいえないと思います。

炭治郎の場合は煉獄(杏寿郎)さんから話を聞くなどほかに集中することがあるので、ツッコんでいる場合ではない。
「善逸たちは放っておいても大丈夫だろう」と炭治郎が思えるほど、チームとしての信頼が強くなっていたのかもしれません。


◆◆◆
熾烈な戦いや何気ない日常のなかで、結束を深めていった善逸と伊之助。下野と松岡もインタビュー後の写真撮影では、ともにアフレコという戦いを乗り越えた仲間としての絆をのぞかせていた。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』
公開: 10月16日(金) 全国公開
配給:東宝・アニプレックス
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
《ハシビロコ》
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