■巨大IP同士のコラボ、外せない重要なこととは?
――ここからは普遍的なお話として広げていきたいのですが、企業同士がそれぞれのIPをコラボさせるうえで大事な点を教えてください。
大場:何よりも、これまで支え続けてくれたファンの皆様を裏切るようなことはあってはなりません。今回のようにキティちゃんやガンダムのように息の長いIPはなおさらです。
「何でこんなことしたの?」「これまで応援してきたことは何だったの?」と思われてしまうようなコラボは絶対にやってはならないと思います。
――ファンを裏切らないために気をつけたことは?
大場:今回に限らずですが、ガンダムで徹底しているのは、「コラボのために都合よく設定を変えない」ということです。
――なるほど。とはいえ、設定にこだわり過ぎてもがんじがらめになり、面白い企画を立てにくい気もします。
大場:はい。ですのでサンライズさんとも協議しながら「ここまではやってもいいだろう」と都度模索しています。
須佐:丸亀製麺さんとのコラボでは、ガンダムが箸を持ってましたね。
大場:丸亀製麺さんの要素であるうどんも盛り込みつつ、キティちゃんとの対比でカッコよく見せて「ここまでは大丈夫だろう」と。
――サンライズさんにもしっかりご協力いただいていることは、アニメファンにとって安心感につながりますね。
大場:そうですね。今回のコラボのガンダムのイラストも、すべてサンライズさんに描き起こしていただいています。
――須佐さんの方で特に気を付けていたことはどんなことでしょうか?
須佐:プロジェクト担当の視点でお話ししますと、巨大IP同士のコラボ企画なので、双方、関係企業や関係者が非常に多いんです。このプロジェクトに関わった創通さん・サンリオの社内だけでも100人以上いて、それぞれ目指すゴールを持っています。
それらがバラバラになってしまわないために、双方の担当者がしっかり連携してIPを守ること、そしてコラボのコンセプトを崩さないこと。それが非常に重要だったと感じます。
――コラボのコンセプトを守るというのは、例えばどんなことですか?
須佐:様々な企業さんとコラボ企画をご一緒するなかで、「対決じゃない方がやりやすい」「対決しなくてもいいですか?」と、そもそもの前提を変更したいという要望もあったんです。
――たしかに、「ガンダムやキティの絵を使ったりグッズを出したりできればそれでいい」「わざわざ対決させるのは億劫」という考えもあり得そうですね。
須佐:ですが、それを認めてしまうと対決というプロジェクトの全体像が揺らいでしまい、ファンの皆様が熱量をもって競い合っていることに水を差してしまいかねません。
ですから「たとえばSNS上で競い合うなどいかがですか?」といったようにこちらからもアイデアを出すなどして、対決のコンセプトは絶対に守っていただくように厳守しています。
サンリオ・須佐氏
――それを徹底するには、まずは担当者同士おふたりの信頼関係が大事そうですね。
大場:このふたりで相談したことをお互い会社に持ち帰ってそれぞれ説得してきて、またそれをここで報告し合って、という感じですね。
須佐:「ここが砦となってコンセプトを守るぞ!」という結束がありました。
■企画者イチオシのアニメPVの見どころとは?
――特別アニメPVについては、コラボ企画の当初から予定されていたのでしょうか?
第1話「ハローガンダム」
大場:はい。せっかくのコラボですから、「やっぱりアニメ映像はつくりたい」「サンライズさんに本気のガンダム、本気のハローキティを描いてもらいたい」と当初から予定していました。サンライズさんもその旨快く受け入れて下さり、三社一丸となって制作しました。
――もともとプロットの候補は2つあったとうかがいました。
大場:私がつくりました。
――あ、制作スタッフの方ではなく、自らつくられたんですね! ちなみに、採用されなかった案はどういった内容だったのでしょう?
大場:キティちゃんとアムロが入れ替わってしまう『君の名は。』的なものでした。
須佐:確か、アムロとキティちゃんがそれぞれパソコンで自分のことをエゴサしてるんですよね(笑)。あと渋谷のスクランブル交差点で出会う、みたいなシーンがあったり、「ふたりが現代の世界にいたらどうなる?」というコンセプトでしたね。
創通・大場氏、サンリオ・須佐氏
――それはそれで見てみたいですね!
大場:各々の世界観をどの程度残すかということで差別化した2案だったのですが、最終的にキャラクターや世界観は変えずそのままのアムロとキティに登場してもらう案の方を採用しました。
また、イム・ガヒ監督から「こっちの案の方が膨らませやすい」という意見もありましたね。
須佐:第2話のプロットに「会話の噛み合わないアムロとキティ」とあったんですが、それをイム監督が見事に表現してくれていて、すごいなと思いました。
――アムロ側の知識に照らして考えれば、突然現れたキティちゃんのことをこう勘違いしてもおかしくはない、という絶妙な噛み合わなさでしたね。
大場:セリフは完全にイム監督によるもので、私は自分でプロットに書いておきながら「噛み合わない会話ってどんな会話になるんだろう?」と思っていました(笑)。素晴らしい脚本だと思います。
――ちなみに公開されている第2話までで、おふたりのお気に入りのシーンはどこですか?
須佐:私は第1話でキティが宇宙に登場するシーンです。ちょっとモビルスーツっぽくもありつつ、キティのかわいさも残しつつ。でもガンダムの世界であんな「デーン」とか「ボヨーン」みたいな効果音は鳴りませんよね(笑)。「そもそもどうやって宇宙に来たの?」と思わずツッコミたくなるところも、キティちゃんらしくていいなと思ってます。
キティ宇宙に立つ!!
大場:私は実は第3話に一番好きなシーンがあるのですが、第2話までですと、第2話ラストでアムロがキティちゃんのことを思わず「キティ!」と呼び捨てにするところです。
アムロ、キティと叫ぶ
須佐:そういえばアムロって普段はみんなのことをブライトさん、マチルダさん、セイラさんと「さん」付けで呼びますよね。
大場:キティちゃんのピンチでとっさに名前で呼んじゃったんですよ(笑)。それだけキティちゃんのことを案じたんでしょうね。ふたりの距離が縮まった瞬間だと思います!
■ガンダムvsハローキティプロジェクトはまだまだ続く!?
――それでは最後に今後の展開について教えて下さい。このプロジェクト、まだ続くのでしょうか?
大場:2020年1月に特別アニメPVの完結編になる第3話がいよいよ公開されます。また対決コラボもまだ続いていますので、ガンダムファンの方もキティちゃんのファンの方も、ぜひプロジェクトに参加して両者を応援していただけたらと思います。
須佐:対決は2019年内で終わりますが、2020年にもガンダムとキティの対決の勝敗を含め大きな発表を予定しています。ファンの皆様に喜んでいただけるものにしたいと思いますので、引き続きツイッターなどで今後の動向もチェックしていただけると嬉しいです!
――まだまだ展開がありそうですね。ありがとうございました!
(C)創通・サンライズ (C)’76, ‘19 SANRIO 著作(株)サンリオ
[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]