『きみと、波にのれたら』で湯浅監督が描いたのは、魔法のような水と火の表現で一世を風靡した『夜明け告げるルーのうた』や、バイオレンスな世界観を巧みな映像で表現した『DEVILMAN crybaby』から一転して、海辺の街で繰り広げられるラブストーリーだ。
メインキャラクターの消防士・雛罌粟港と、サーフィンが大好きな大学生・向水ひな子は、とある運命的な出来事から出会い、普通にデートをして普通に恋をする仲へと進展。しかし幸せばかりは続かず、突然の別れを味わうことになってしまう。
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湯浅監督は「したたかに生きなければという世の中で、純粋な主人公を波にのせてあげたいと思った」と語っているが、港とひな子にはどんな運命が待ち受けているのだろうか。
このたび公開された制作時のアートボードは、そんな湯浅監督の構想時のタッチが垣間見えるもので、独特の手法から生まれる魔法のような表現の秘密に迫る計2枚だ。
1枚目は、女の子が水中にできた箱のようなものに浮遊しているイラストで、洋服にはふわりと水が入り、無重力のような状態に見える。イラストの下には「水になって帰ってきた」という手書きの文字もあり、その意味するところも気になるポイントといえるだろう。
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そして2枚目は、「ひな子の部屋3つめ」というメモが入ったイラストだ。キッチンやトイレなどの間取りが描かれていることとともに、「このくらいのヨコ長のつくりで」というメモも読み取れる。どことなく魚のようなフォルムに見えるが、はたして本編でも登場するのだろうか。
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湯浅監督ならではの、魔法のような水と火の表現は本作でも健在。圧倒的に美しい世界観の中で、港とひな子のラブストーリーが丁寧に描かれている『きみと、波にのれたら』は、頑張っている人の背中をそっと押してくれるような名作となっているようだ。
気になる本編は、ぜひ劇場で見届けたい。
映画『きみと、波にのれたら』
6月21日(金)全国ロードショー
(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会