細田守がTIFF2016に登壇 「デジモン」「おジャ魔女」を解き明かす 「東映にかけられた呪いが今も解けない」 | アニメ!アニメ!

細田守がTIFF2016に登壇 「デジモン」「おジャ魔女」を解き明かす 「東映にかけられた呪いが今も解けない」

10月27日、第29回東京国際映画祭のアニメーション特集「映画監督 細田守の世界」のプログラム「作家性の萌芽 1999-2003」が開催された。トークショーには細田守監督とアニメ・特撮研究家の氷川竜介が登壇し、初期作品を振り返った。

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東京国際映画祭「映画監督 細田守の世界」
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10月27日、第29回東京国際映画祭のアニメーション特集「映画監督 細田守の世界」のプログラム「作家性の萌芽 1999-2003」が開催された。会場のTOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン8では、劇場デビュー作の『劇場版デジモンアドベンチャー』をはじめ、東映アニメーション時代の短編・中編やテレビアニメが上映された。トークショーには細田守監督とアニメ・特撮研究家の氷川竜介が登壇し、初期作品を振り返った。

細田監督は今回のラインナップについて「思い出深い作品が並んでいて、懐かしい気持ちでいっぱいです」とコメント。満席の客席に向けて「劇場公開時に作品を観ていた人はいますか?」と問いかけると複数のファンから手が挙がった。これに細田は「むかし会った人と久々に再会した感じで嬉しいです。同窓会みたいですね」と笑顔を見せた。
まず『劇場版デジモンアドベンチャー』について、テレビシリーズが放送されるか分からないまま取りかかったと状況を説明した。制作末期にテレビアニメ化も決定したため、テレビに繋がるシーンをつけ加えたところ、映画誌に前日譚と紹介されてショックだったと話す。それほど「一本の独立した作品にしたい」「映画を作りたい」という想いが強かったのだ。

テレビアニメである『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』40話「どれみと魔女をやめた魔女」でもその信念は変わらなかった。自分の進路に悩むどれみが元魔女の未来と出会うエピソードについて、細田は「どれみが未来さんとヴェネツィアへ行ってもよいのではないか?」と思いながら描いていたそうだ。ゆえに最後のどれみのセリフは「未来さん、あたしも」と、一緒についていくようなニュアンスにするはずだったと打ち明ける。
しかしそれでは小学生の家出を匂わせる話になるため、結局「“も”は止めてほしい」と一文字削られてしまった。細田は「人生の一線を飛び越えるようなチャンスが来たときに飛び移れるのかどうかが、その人の人間性だと思っている」と持論を述べ、セリフを削られた当時は納得できなかったと吐露した。だが実際に子を持つ親になった今から考えれば「(“も”を削るのは)あたりまえですよ」と発言を一変。会場の笑いを誘った。

氷川は本作がきっかけで新たなプロデューサーと出逢い、映画『時をかける少女』につながったことに触れて、「まるで監督自身の話をしているかのようですね」と漏らした。それに対して細田は「むしろ僕は飛び移り損ねたんですよ」と口にする。
「どれみと魔女をやめた魔女」は『ハウルの動く城』を降板した直後に手がけたため、映画を作れなくなってしまったという意識が強く反映されている。「大きな可能性が目の前を通り過ぎてしまったもの悲しさ。そういったものが作品から漂っているのではないか」と自作を解き明かした。

映画に対するこだわりは、師匠である角田紘一からの影響が強いと語る。東映を長年支え続けてきたベテランスタッフは、東映長編を作っていた時期が本当の東映であるという意識があり、「東映長編をもう一度作らなければ、この仕事をやってる意味がない」と言われるほどだった。そして細田も薫陶を受けて、自然と映画を志向するようになった。
細田は「これは呪いですよ。東映にかけられた呪いが東映を辞めた今でも解けないんです」と話し、初期の作品について「映画を作りたいという気持ちの原点が詰まっている」と評した。最後は観客に対して「そういった時期から皆さんが作品を観てくださっていたと思うと本当に嬉しい。一緒に時間を歩んできたような気がします。ありがとうございます」と感謝のメッセージを伝えた。
[高橋克則]

「映画監督 細田守の世界」作家性の萌芽 1999-2003
上映プログラム
『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』
『おジャ魔女どれみドッカ~ン!(40話「どれみと魔女をやめた魔女」)』
『明日のナージャ(OP、ED)』
『村上隆作品 SUPERFLAT MONOGRAM』
『村上隆作品 The Creatures From Planet 66 ~Roppongi Hills Story~』

第29回東京国際映画祭
開催期間: 2016年10月25日(火)~11月3日(木)
会場: TOHOシネマズ六本木ヒルズ ほか
《高橋克則》
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