ーー亀田さんはどこを描いたのでしょうか。
立川
冒頭のネオンのようなビルからの長尺カットです。動画まで全部やっていて、実際動画まで見たらそのすごさが伝わると思います。
依田
本当にすごいですよ……見た時は本当に感動しました。
亀田
筆ペンと青ペン、赤ペン、緑ペンを使って描きましたね。
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ーーどういうことでしょうか。
立川
描いた原画、動画をPCに取りこんで色を塗る際に2値化という処理をするのですが、アニメの特性上、紙には4色までしか使えないんですよ。
亀田
赤・青・緑・黒の4色で色分けしないと、色を塗る「仕上げ」という工程の時に塗れなくなってしまいますから。
立川
その4色の色分けを意識しながら背動(※背景動画)しないといけない。これはものすごく技術と根気が要されるんです。ずーっとやってましたね。
依田
どういうとっかかりで描き始めるのか、全く想像できないです。
亀田
今回はラストの絵から描き始めました。OPの最後、製作委員会の表示が出るビル群の一枚から始めて、徐々にビルを動かしました。
立川
エンピツではなくてマジックで描いてるから修正が効かなくて、直しは修正液でね。
ーー下書きはないんですか?
立川
レイアウトではエンピツで下書きをしてました。
亀田
イメージを固めて描き進めた訳ではないので、最後まで描けたときは自分でも「よく描けたな」と思いました(笑)。
ーー映画『クロニクル』に出てくるような空を飛んでいるイメージだったのでしょうか。
亀田
自分の中ではスパイダーマンがビルの中を飛んでいるような雰囲気が一番近いかなと。画造りはMIYAVIというアーティストのPVに実写をアニメーションにおとこしんだものがあって、それを参考にしました。
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ーーOPは最初と終わりが完全に同じ絵でループするように作られています。それに気づいた時もまた驚きました。
立川
ループのアイデアは亀田君からもらったんです。特に製作委員会表示を最後に消す、というアイデアは僕では絶対に思いつかない!
亀田
ちゃんと消してループさせないとつながらないですもんね(笑)。
立川
亀田君が「いいよ、消して」って(笑)。僕は消してはいけないものだと思っていたんですよ。
亀田
絵コンテではスタートと「近い雰囲気」になってたので、それならいっそのことと思いまして。
立川
まさか全く同じものにするなんて。でも製作委員会のみなさんも「いいよ」と言ってくださったので実現しました。
亀田
エンディングでも製作委員会はテロップされるし、OPは気にしなくていいよ、って。ありがたいですね。
ーー画期的なエピソードですね。依田さんにとってOP映像で印象的なところはどこでしょうか。
依田
やっぱりビルのカットが来た時に「これで行ける!」と思いましたね。コラージュ部分は僕らの中では感覚で進めてしまうんです。だから最後に繋げるまで不安は残ったりするんですけど、ビルがあることで安心したというか、成立させる説得力がすごくありました。
亀田
うれしいですね……。
依田
立川さんが提示するイメージには根本ですごく昭和感がありますよね。カウントで数字が表示されるニキシー管はそれに近いイメージなので採用しました。他にもモブを模した迷路とか、すごくいいなと思ったんですよ。
立川
迷路は自分の子どもがやり出しているんですよ。キャラクターが迷路になってるものを。改めて見るとキャラクターの顔をデザイン的に迷路に組み込むってすごくいいアイデアだと思って。
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依田
そういった日常的な超能力と、ビルを爆破するような大きな超能力が共存しているのが面白いですね。
亀田
超能力っていうと『幻魔大戦』が頭に浮かんできますが、結局それも昭和ですね(笑)。
立川
ONEさんの感覚もそれに近い所があるんじゃないかと思っています。原作の2巻の表紙はミステリーサークルの中にモブが体育座りしていたり、行動と場所がミスマッチしていて、それが逆にいい。すごくセンスがいいですよね。
■バトルシーンを入れない決断
ーーOP映像を振り返っての感想はいかがでしょうか。
亀田
自分でも初めて依田さんから上がってきたOPのチェックムービーを見た時には今期ナンバーワン! と思ったほどです。依田さんありがとうございます。自分たちが描いたというよりは、お客さんとして興奮しました。この感覚がお客さんにも伝わっていると思うので、それは本当によかったと思います。
依田
立川監督の決めてくださった敷地の中を存分に遊び回らせてもらいました。亀田さんも立川さんも本気で遊んでいるんですよね。その中で一緒に遊ばせてくれているというのがやっていて一番幸せなんです。いろいろなものから自由ですごくうれしかったです。
立川
OPで一番悩んだのがバトルシーンを入れるかどうか。王道アニメのOPなら入ると思うんですけど、思い切ってバトルを落として歌のサビにメタモルフォーゼのカットを持ってきています。「引くなら何を引くか」という中でこの決断をしたことも結果としてよかったんじゃないかと思っています。
今回は絵コンテで真っ白な部分を作って、依田さんに委ねる部分が多かった。OPでこういうやり方をしたのは初めてでしたが、これは癖になるなと思いました。真っ白にして、イメージを伝えて素材を渡せば、自分の中から出ないアイデアが足されるわけですから。これはいい! と思いましたね。
亀田
依田さん、これからも大変ですよ(笑)。
一同
はははは(笑)。
――本日はありがとうございました!