舞台「攻殻機動隊ARISE:GHOST is ALIVE」、3D映像に光学迷彩、リアル!?フィクション!? | アニメ!アニメ!

舞台「攻殻機動隊ARISE:GHOST is ALIVE」、3D映像に光学迷彩、リアル!?フィクション!?

高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 連載第150回 ■ 作品誕生から25年目に『攻殻機動隊』の歴史を刻む、全く新しい表現への挑戦

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高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義
連載第150回

■ 作品誕生から25年目に『攻殻機動隊』の歴史を刻む、全く新しい表現への挑戦

『攻殻機動隊』YEARである。作品誕生から25年、今年6月20日には劇場版が公開された。しかもハリウッドで実写化も発表になり、撮影は来年から。そして舞台化、しかも3D映像を使用、演劇では初の試みだ。演出は奥秀太郎、脚本は藤咲淳一という最強のコンビ。
ストーリーは『攻殻機動隊 ARISE』のborder1から4を舞台版に再編集したもの。アジアの一角に横たわる奇妙な企業集合体国、日本。 2028年、産業省の西ノ内オフィスビルで、爆弾テロが発生。同時刻、クザン共和国の水会社代表・サイードが所有する山の手ダムでも 爆発が起き、国外への武器密売組織を追っていた刑事が死亡する。草薙素子は、公安9課に新部隊を組織するべく、戦場で幾度となく顔を 合わせてきたバトー、イシカワ、ボーマ、サイトウ、パズとともに捜査を開始。そこへ、生身の刑事のトグサも合流。 後に『攻殻機動隊』として活躍する精鋭メンバーが結集した。素子は、彼女のゴーストが導く“真実”をつきとめられるか、といったものだ。

初日まで1ヶ月を切った10月某日、俳優の動きと3D映像を合わせる稽古の見学にいってみた。実は、あの光学迷彩も使用する、とのこと。光学迷彩はそもそも作品の中で語られていた技術。これが21世紀に入って実現化、SFだったものがSNF(サイエンスノンフィクション)化した。
これを『攻殻機動隊』の舞台版で使う。3Dメガネをかけてその様子を見学、すぐそこに迫ってくる迫力、異次元としか言いようのない感覚だ。実は舞台に上がっているキャストは3Dも何もわからない状態、キャスト全員が客席でオープニングの3D映像をメガネをかけて観る、「おお~」「うわ~」と歓声!13時~17時過ぎまでみっちりと稽古をしていた。それから運良く演出家と話をする時間が出来た。

舞台を手掛けることに関しては「千載一遇、っていう言い方は変かもしれませんが、このタイミングだったらこれしかないじゃないかって(笑)」と語る。”『攻殻機動隊』の歴史”にその名を刻む、ことになる。
「今までに前例がないことを試す、チャレンジ精神的なもの、もう『攻殻機動隊』やらせてもらえるなら、絶対に3Dだと(笑)」『攻殻機動隊』で描かれていること、21世紀に入ってからはネットワーク社会、そして今回使用するテクノロジー、光学迷彩も実現した。「ここで描かれていることの半分は現実になっている。逆に残りの半分、叶えられていないことを舞台で……夢を見ることが出来たら、未来につなげることが出来たらいいな~と。ネットワークなんて完全に”予言”されてましたね」その最先端テクノロジーとポップカルチャーが出会い、”融合”する。
「そうそう(笑)、最先端のテクノロジーをどんだけ、観客も含めて自分たちのおもちゃに出来るか(笑)。もちろん、ちゃんとした使い方もあるかもしれませんが、最大限使ってみんなで遊ぶ!3Dも他の映像もそうですが、様々な最新の技術を使って『攻殻機動隊』を再現する、お客さんと遊べたらいいですね。なんか、新しいものをお客さんに見せたいっていうのはありますね」と語る。舞台は”大掛かりなおもちゃ”。「今度は普通の映像では物足りなくなってしまいますね」と笑う。
さらに「今後、自分がやる演目は全て3Dにしていこうかな?3D時代に!」映像演出は、もはや珍しくない昨今。「3Dをスタンダードに!」と奥秀太郎らしい言葉で締めくくった。さて、一番難しいのは俳優の動きと映像の動きを合わせること、その成果はいかに……だ。

■ 前例がない表現に挑戦、その姿勢と作品がシンクロする

出だしの背景はプロジェクション・マッピング、バドー(八神 蓮)が1人で腹筋。ファンなら納得の”あるある”シーン。そこからプロローグ的なシーンに入るのだが、ここはスピード感を持って展開、それからタイトルロールとキャラクターの紹介だが、原作アニメそのまま、ではなく、さらなる立体感を持って舞台上に。
3D映像が眼前に迫る。立体だから3次元、という単純な感覚ではない。通常、ライブエンターテイメントと言っても観客はあくまでも”傍観者”、それも距離感を持って、である。ところが、これはそうではない。従来の”傍観者”からさらに踏み込んだ感覚だ。観客は『攻殻機動隊』の世界に一種のリアリティを感じて観ることが出来る。そこに存在して物語の目撃者になれる、という趣向である。この感覚は今までの演劇とは全く異なる。”テクノロジーも遂にここまで来たか”と思わせてくれる。その3D映像に光学迷彩で素子のキックやパンチが炸裂、舞台上の俳優とアクション、不思議な感覚だ。
俳優の演技は究極の”アナログ”だ。それに最新技術をかけ合わせる。まさにリアルなのかフィクションなのか、その狭間の感覚は全く新しい。原作発表から25年、その間に様々なものが変わった。こういったテクノロジーもそのひとつ。それを『攻殻機動隊』という作品で”実験”する、他の作品ではなく、だ。

しかし、ずっと徹頭徹尾、3D映像や光学迷彩で、ではない。究極のアナログ表現、舞台に何もない状態での俳優の演技、アクションのシーンもある。従来の表現、照明やスモークはもちろん、八百屋やセリ等の歌舞伎でもおなじみの舞台機構もフルに使う。最先端な表現と古来から続く俳優の、生身の身体を張った表現、そのコンビネーションで作品世界を構築する。
例えば、草薙素子(青野 楓)とホセ(南 圭介)が対峙するシーンは、俳優の力量だけが”勝負”だ。映像や3D等で”語る”ところ、俳優の力だけで”語る”ところ、メリハリをつけて全体を構成。また、通常の舞台では到底表現しきれないであろうシーン、カーチェイス、ヘリコプター、そこに生身の俳優、3D映像、効果音、出来る限りの方法を駆使し、『攻殻機動隊』の世界を舞台に創り上げる。
稽古場で俳優陣が映像を観て歓声を上げたが、そのテンションを維持して臨んでいる。まさにスタッフと俳優陣が”未知なる表現”に一丸となって挑戦している。俳優陣のキャラクター構築度もハイクオリティ、トグサの兼崎健太郎、イシカワの井阪達也、パズの井深 克彦、荒巻大輔の塾 一久、サイトーの松村龍之介ら、月並みな言い方かもしれないが、もうキャラクターそのものだ。

前例がない表現に挑戦するのはリスクも伴う。それでも挑む姿勢、ラスト近く、素子は「私の正義」と言う。素子は己の信じる”正義”に向かって突き進む。それと同じように、この舞台に関わっているスタッフ・キャストも”己の信じる最高の表現”を目指す。その姿勢と作品がシンクロ、続編も期待したい。

舞台『攻殻機動隊ARISE:GHOST is ALIVE』
東京芸術劇場プレイハウス
2015年11月5日(木)~11月15日(日)

『攻殻機動隊 ARISE:GHOST is ALIVE』
(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会
《高浩美》
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