「アニメ師・杉井ギサブロー」トークイベント 杉井監督が手塚治虫、大川博、宮崎駿を語る | アニメ!アニメ!

「アニメ師・杉井ギサブロー」トークイベント 杉井監督が手塚治虫、大川博、宮崎駿を語る

石岡正人監督と、映画の被写体となった杉井ギサブロー監督が8月5日、銀座シネパトスでトークイベントを行った。ふたりでの出演は、関東圏では初だ。まずトークは石岡監督の映画を撮るきっかけについてからスタートした。

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7月28日から銀座シネパトス、京都みなみ会館で公開が始まった『アニメ師・杉井ギサブロー』が話題を呼んでいる。石岡正人監督は、杉井ギサブローさんを通すことにより、アニメーションや映画とは何かを探る。映画には、杉井ギサブローさんのほか数多くアニメ関係者が出演、それぞれの言葉がアニメ、とりわけ商業アニメとは何かを考えさせる。

本作の監督である石岡正人監督と、映画の被写体となった杉井ギサブロー監督が8月5日、銀座シネパトスでトークイベントを行った。ふたりでの出演は、関東圏では初だ。
まずトークは石岡監督の映画を撮るきっかけについてからスタートした。しかし、トークはむしろ映画と同様に、石岡監督が杉井監督から話を引き出すかたちとなった。それはあたかも映画の延長のような興味深いものだった。

映画を踏まえたトークであると同時に、映画では出てこなかった話題も多かった。決して長い時間ではなかったが、映画鑑賞後のサービスとは一線を画す充実の内容だ。
なかでも印象的だったのは、杉井監督のリミテッドアニメについての指摘だ。それは東映動画を辞め、虫プロで『鉄腕アトム』を作った時のエピソードとして語られた。手塚治虫のリミテッドアニメを見て、アニメーションは絵を動かさなくていいと発見したと話し、動くアニメーションにこだわらないほうが楽しく出来るという。日本のアニメがリミテッドの表現により支えられたことが近年はよく指摘されるが、杉井監督はすでに50年前にそれを発見し、日本のアニメの歴史を築いてきたのだ。

また、監督としてだけでなく、プロデューサーの視点も数々披露され、それが興味深いものだった。作品の世界観を作るのは1/5の程度、残りの4/5はプロデュースしていると話す。言葉の端々に、商業アニメを作る厳しさと同時に可能性が含まれていた。
そして、アニメ業界を変えた人として東映社長で東映動画を設立した大川博の名前を挙げる。手塚治虫についてもアニメを一般化した、時代を動かしたと評する。ひとりの作家の作家性は全体から見れば重要でないとし、アニメの世界を俯瞰的に見ているのが印象的だった。

杉井監督らしい答えを見せたのが、石岡監督がスタジオジブリの宮崎駿監督について訊ねた時だ。杉井監督は、宮崎駿監督の作家性について語るのではなく、アニメ製作の歴史のなかで果たした役割の大きさを語った。
1000万円以下で1話30分のテレビアニメを作っていた時代、劇場アニメの予算は3000万円や5000万円となっても不思議はなかった。しかし、宮崎駿監督が劇場映画を作ったあとは3億円の製作費を提示しても投資家は驚かなくなった。アニメ映画には巨額の投資が出来るという実績を作ったのが宮崎駿監督の大きな功績と語る。
杉井監督は、そのキャリアの長さ、作品の多彩さで、アニメ業界でも特異な存在だ。しかし、『アニメ師・杉井ギサブロー』を観れば、その言葉、その思想からなぜ時代を超えて作品が受け入れられているのかが理解出来るだろう。

映画『アニメ師・杉井ギサブロー』
7月28日(土)より、銀座シネパトス、京都みなみ会館にて
/http://www.animeshi-movie.com/

「アニメ師・杉井ギサブロー検定」
/http://kentei.am/15520/
《animeanime》
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