その後、このメビウスの輪から抜け出す試みに挑戦したのは、水島精二監督の『劇場版 機動戦士ガンダム00 Awakening of the Trailblazer』だ。2009年にファーストシーズンがテレビに登場した際は、いかにもガンダム的な世界が繰り広げた。「近未来」、「人型兵器」、「複雑に絡み合う軍事勢力」、「悩める主人公」・・・。そして第2シーズンは、やはり依然続く紛争だ。 ところが劇場版で、作品は全く別の様相をみせる。平和が訪れた地球は、軍事的な緊張を抑え込むのに成功する。そして、新たに主人公たちに襲いかかる敵は、なんと太陽圏外から来た異生体である。『ガンダム00』は、地球以外の生命を物理的に登場させた初のガンダムシリーズになった。これまでのガンダムシリーズの枠を完全に打ち破ったのだ。 水島精二監督は『劇場版 機動戦士ガンダム00』で、ファーストシーズン、セカンドシーズンに続いて、また新たな地球人同士の戦い、3ループ目を描いても良かったはずだ。いや、むしろそれが望まれていたはずだ。しかし、そこに敢えて、太陽圏外からの生体を物語に持ち込んだのは、ガンダムシリーズの持つメビウスの輪的構造の弱点を意識していたのでないだろうか。そして『00』は、メビウスの輪を打ち破ることで傑作と成りえた。