映画評 『劇場版マクロスF ~サヨナラノツバサ~』 | アニメ!アニメ!

映画評 『劇場版マクロスF ~サヨナラノツバサ~』

レビュー 実写

文;氷川竜介(アニメ評論家)

 シリーズ25周年記念作品として「マクロス全部入り」が大きな課題だった『マクロスF(フロンティア)』。今回の劇場版「恋離飛翼~サヨナラノツバサ~」は、その「完結編」にふさわしい圧巻の仕上がりである。河森正治総監督に、ひときわ大きなピリオドを打たれた気分になる映画だと言える。

 もともとTVシリーズ全25話として2008年に物語はいったん完結を迎えていたが、TVからかなりのシークエンスと映像を流用した前編「虚空歌姫~イツワリノウタヒメ~」に比べ、今回はごく一部のBANK的なカットを除いてほぼ完全な新作となった。その新鮮さが、まず大きな魅力だ。
 キービジュアルに相当するランカ・リーのハジけた魔法少女スタイルを含め、驚きのライブと歌とが用意されていて、もちろん期待どおりのサービスはきちんと入っている。次から次へと光と音が劇場の空気を満たし、新曲に加えて新たな情報と展開が眼前に出現し、ドラマとストーリーに絡んだ芳醇な刺激が脳内へとたたきこまれる。全身を包む波動が気持よく感情を昂ぶらせるという点で、やはりこれは劇場の大きな空間でないと得がたい体験だと言えよう。
 もともと「歌と戦闘のグルーブ感が恋愛の三角関係に絡みついて感動へと昇華する」というのがマクロスシリーズで四半世紀にわたって受け継がれてきた作法だった。この完結編は、その決定版なのである。おそらく感情が上がったり下がったり、急ハンドルを切られてビックリしている間に2時間弱があっと間に過ぎるだろう。テレビを知っている人もマクロス自体をよく知らない人も、この急流のような波乗り感覚は満喫できるはずだ。

 物語的には、銀河の妖精シェリル・ノームがマクロス・ギャラクシーから送りこまれたスパイ疑惑という前編での新設定を絡め、大きな変化が描かれている。メカ戦闘についても、アルトが乗る機体はバルキリーの実験機YF-29と新型が用意され、フォールドクォーツを満載した仕掛けもそなえている。宇宙空間以外にも大地と重力のある大気圏内の戦闘にチャレンジし、マクロスクォーターさえもが新しい驚きのワザを繰り出す。
 こうした「あの手この手」の新しさと楽しさが有機的に結びつき、大きな「うねり」となってクライマックスに到達し、未踏のエンディグへと導いていく。それでは、これまでと完全に違うものになったかと言えば、そうでもないところが『マクロスF』らしく、嬉しい点だった。「フロンティア」は「未開」ではあるが、完全に新しい地点のことではなく、あくまでも「これまで到達できた地点ありきで、もう一歩先へと限界に踏み出した最前線」なのだから。

 映画を観終えた後は、あらためてこれまで体験してきた『マクロスF』のすべてが愛おしく思えてきた。もう一度、TVシリーズの最初から映像や楽曲を追体験したいとさえ感じたのである。つまり、過去を刷新や更新して「なきもの」にした作品ではない。
 その意味において、まさに「フロンティア」な作品であり、正しく「マクロス全部入り」としてのピリオドを打った完結編なのだ。これをスプリングボードとした、次なる飛翔がますます楽しみになるではないか。

『劇場版マクロスF ~サヨナラノツバサ~』
/http://www.macrossf.com/movie2/
《animeanime》
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