11月15日、米国の映画芸術科学アカデミーは、第83回アカデミー賞長編アニメーション部門の選考対象作品を発表した。作品は全部で15本、『トイ・ストーリー3』や『ヒックとドラゴン』、『シュレック フォーエバー』といった大ヒット作から『Idiots and Angels』、『My Dog Tulip』といったアート志向の強い作品まで幅広い作品が揃った。 リストの中には日本の細田守監督の『サマーウォーズ』も含まれている。選考対象として必要条件である米国・ロサンゼルスでの商業公開をまだしていないが、12月から米国主要都市での順次公開を予定しており、条件をクリアーするとみられる。
昨年よりリストが短くなる一方で、選考に挙がった作品は例年になくレベルが高い。ノミネート入りさえもかなり厳しい競争となる。それでも作品クオリティーの高値安定とも言えるディズニー/ピクサーによる『トイ・ストーリー3』は、かなり有力であろう。ドリームワークス・アニメーションの最高傑作と評されることも多い『ヒックとドラゴン』がノミネートに残って驚く人いないだろう。 『イリュージョニスト』は『ベルヴィル・ランデブー』にて世界中でアニーション賞を獲得したフランスのシルヴァン・ショメ監督の最新作、『Idiots and Angels』は2009年のフランス・アヌシー国際アニメーションフェスティバルの特別賞に輝いた。 さらに『怪盗グルーの月泥棒』、『ガフ-ルの伝説』、今後公開予定の『塔の上のラプンツェル』と評価の高い大作映画が並ぶ。どの作品がノミネートに残っても不思議はない。
では、日本のアニメ映画『サマーウォ-ズ』はどうだろうか。作品は今年一年間、米国の多くの映画祭で上映し、アナハイム映画祭ではアニメーション賞を受賞している。しかし、劇場公開前ということもあり、他の多くの作品に較べると知名度不足は否めない。ノミネートが5本でなく3本ということもありかなり厳しい戦いを強いられそうだ。 しかし、悪い材料ばかりでない。昨年の長編アニメーション部門の選考が、従来とかなり異なった特徴があったことだ。それまではCG満載のハリウッド大作が多かったかが、より個性的な作品を選ぶ傾向が強まった。泣けると評判になった『カールじいさんと空飛ぶ家』のほかは、『コララインとボタンの魔女』、『Fantastic Mr. Fox』 、『プリンセスと魔法のキス』、『The Secret of Kells』といった具合だ。特に知名度が低く、公開規模も小さかった『The Secret of Kells』のノミネートは驚きを与えた。 『The Secret of Kells』の劇場配給を手がけたGKidsは、海外のアート系のアニメーションを得意とする。このGKidsが今回、『サマーウォーズ』の米国映画配給も行う。エンタテイメントであると同時に、映画芸術としても優れた作品という評価を得られれば、大きな結果も期待出来る。 ノミネート作品の発表は2011年1月25日、そして受賞作品の発表と授賞式は2月27日、その結果は世界中のアニメ関係者からも注目を集めそうだ。
『Alpha and Omega』 (米国/インド) 『キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争』 『怪盗グルーの月泥棒』 『The Dreams of Jinsha』 (中国) 『ヒックとドラゴン』 『Idiots and Angels』 『イリュージョニスト』 (フランス/英国) 『ガフ-ルの伝説』 『メガマインド』 『My Dog Tulip』 『シュレック フォーエバー』 『サマーウォーズ』 (日本) 『塔の上のラプンツェル』 『Tinker Bell and the Great Fairy Rescue』 『トイ・ストーリー3』