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とりわけ7月23日に行われた「Spotlight on Moto Hagio」では、コミコンインターナショナルよりインクポット賞(Inkpot Award)が萩尾望都さんの手に渡された。インクポット賞は1974年から設けられている歴史ある賞で、特別ゲストの中でも特に際立った業績を残した人物に贈られる。日本の少女マンガのパイオニアとしての業績が高く評価されたかたちだ。
トークパネルでは京都精華大学助教授のマット・ソーンさんをホストに萩尾望都さんの初期の作品から最新作に至るまで、作品のきっかけや背景を紹介するものとなった。取り上げられた作品は『ポーの一族』や『11人にいる』、『残酷な神が支配する』、『バルバラ異界』などである。
人気がなくて打ち切られそうになった『トーマの心臓』が、『ポーの一族』の単行本ヒットでつながった話などのエピソードも興味深いものだった。さらに講談社では人が死ぬ話は嫌がられたが小学館はあまり気にしなかったので、小学館ではこれまで出来なかった作品を描き、「楽しく人を殺しました」と笑いを誘った。
また、『イグアナの娘』に触れる際には、自身の母親との確執などにも踏み込んだ発言もあり、全般に深い内容となった。文学性が高いとされる萩尾作品の魅力が、現地のマンガファンに伝わったのでないだろうか。
近年米国で日本マンガへの関心が高まっていることはよく知られるようになって来た。しかし、現地の大手出版社が翻訳出版するのは、日本での最新作が中心となっている。国内では名作とされているマンガでも、米国で紹介されていない作品が大半となっている。
日本では巨匠とされる多くのマンガ家たちも、米国では一部のファンが知るだけである。今回はこのほど短編作品集を発売する米国出版社Fantagraphicsの招きにより渡米が実現した。萩尾望都さんの少女マンガのパイオニアとしての活動が、今後さらに評価されていくきっかけになりそうだ。
コミコンインターナショナル (Comic-Con International)
/http://www.comic-con.org/
Fantagraphics /http://www.fantagraphics.com/