「宇宙ショーへようこそ」計算し尽された最高のエンタテイメント | アニメ!アニメ!

「宇宙ショーへようこそ」計算し尽された最高のエンタテイメント

「宇宙ショーへようこそ」計算し尽された最高のエンタテイメント 舛成孝二監督に聞く

レビュー そのほか
「宇宙ショーへようこそ」計算し尽された最高のエンタテイメント
舛成孝二監督に聞く


 6月26日、長編アニメーション映画『宇宙ショーへようこそ』が公開する。『おおきく振りかぶって』シリーズや『黒執事』などの数々の人気テレビシリーズを世に送り出して来たA-1 Pictures制作による初の長編劇場映画である。
 この記念すべき作品の制作スタッフは、第9回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞した『かみちゅ!』の制作チーム、舛成孝二監督、脚本の倉田英之さん、キャラクターデザイン石浜真史さん、音楽池頼広さんらだ。SFアクションの『R.O.D』シリーズから現代のお伽噺ともいえる『かみちゅ!』を経て、彼らが次に選んだのは、普通の小学生たちが宇宙旅行に出てしまい大事件に巻き込まれるSFファンタジーである。
 実力派のメンバーが集結した本作は、綿密な企画を経て製作期間は丸4年をかけた。じっくりと練られたストーリーは、子供のためのエンタテインメントであると同時に、大人が観るとまた別の楽しみ方も出来る多重構造。映画の壮大な仕掛けを企んだ張本人舛成孝二監督にお話を伺った。2010年夏の話題のアニメ映画はいかに生まれたのだろうか。

■ キャラクターを丁寧に描く地球パート

 『宇宙ショーへようこそ』でまず印象深いのは、全編136分という長さだ。映画はプロローグになる地球パート、それに続く月での話、急展開となる惑星プラネット・ワンのパート、そして怒涛のクライマックスと4部に分かれている。監督も意識して構成した4部構成だ。
 今回『宇宙ショーへようこそ』では、作品のプロローグ22分をテレビ放送やネットなどで先行公開している。この先行公開の部分は冒頭の地球パートが中心だ、そしてこれを見ると作画や背景は勿論、キャラクターそれぞれが非常に丁寧に描写されていることが判るだろう。

 これについて舛成監督は、「オリジナルの作品なので、キャラクターを理解して貰う必要がある。丁寧に描かなければいけなかった」と語る。作品は『ポケットモンスター』や『ドラえもん』のように既に世界が完成しているわけでない、だからこの地球パートではキャラクターを描く必要があるのだと。
 一見スロースタートに見える冒頭も、監督にとっては計算済み、そして映画を観終わった後には、そんな日常的な描写のひとつひとつが意味を持って伝わってくる。
 また同時に、こうした日常の芝居に対する監督の思い入れもあるのかもしれない。「最初は、宇宙の出て来ない普通の話の映画も考えていた」という監督だけに、日常の自然な演出は映画の見所のひとつになっている。

■ 明らかにされていない設定は山のようにある

 実はこうした細かな計算は、映画の至るところに張り巡らされている。監督に主人公が男の子でなく女の子の夏紀であることについて訊ねると「女の子が好きだから」とはっきりとした答えが返ってきた。勿論それは、監督の本音に違いない。しかし、さらに質問を重ねると、キャラクターづくりにも監督による周到な物語の設計が窺える。
 都会から引っ越してきた夏紀は異質存在である。そのことが物語にメリハリを与えるのだ。さらに今回の子どもたちの数が5人であることについて、「当初キャラクターは1年生から6年生までひとりずつ6人を考えていました。でも、それだとまとまらなかった」と話す。物語を進めるうえでベストな数として5人のキャラクターが設定されたわけだ。『宇宙ショーへようこそ』がより完成された作品であるために何が必要かが、十分に練りこまれた様子だ。決定稿まで13稿を重ねたというシナリオも納得だ。

 こうした物語の構築の一方で、実際には映画で描かれていない設定も多い。「(映画の中で出てくる重要な星)ペットスターについては、いろいろと細かな設定があります」と監督は、遥か昔に栄えたペットスターとその記録を書いた文字の関係などについて楽しそうに語ってくれる。そして、こうした設定は子どもたちには分らないかもしれないが、大人になってあらためて見直したら分ってくれるかもしれないと説明する。 
 また、物語の複雑さは敵役となっているキャラクターのあり方にも表れている。最初は悪者にしか見えないキャラクターだが、「ネタばれになってしまうので、あまり詳しくは言えませんが、彼らは信念に基づいて行動している。それぞれ彼らなりのきちんとした信念がある」と、決して単なる敵役キャラクターでないことを強調する。そして、こうした設定の重みがあるからこそ『宇宙ショーへようこそ』は、子どもにも大人にも面白い映画に仕上がったのだろう。 

■ 子どもが全員最後まで映画に没入したベルリン映画祭

 それでも、136分という上映時間の長さは、実際には監督にとっても心配だったようだ。必要な長さではあるが、「(映画を観る)子供たちの集中が続くか心配だった」と本音を漏らす。
 ところがこうした懸念は、今年2月のベルリン国際映画祭で見事に打ち消された。『宇宙ショーへようこそ』は、世界三大映画祭として知られるベルリン国際映画祭に今年2月に公式出品されている。映画が出品されたのはジェネレーション部門、子どもたちのための映画を紹介する部門だ。
 そして観客の大半は子供たちだ。『宇宙ショーへようこそ』のワールドプレミアは、大勢の子供たちが観る作品に相応しいものとなった。このプレミア上映会で、なんと来場者した子どもたちは、全員が最後まで席を立つこともなく映画に見入っていたのだ。

 「最後までみんな見てくれた。いや、一人だけ途中で席を立った子がいてね。そうしたら、しばらくして慌てて戻って来た。トイレに行っていたんじゃないかな(笑)」。
 上映終了後は拍手が鳴り止まないほどの大盛況、「あれはとてもうれしかった」と、子どもたちに認めらたことを監督は喜ぶ。そして映画はやすやすと国境を越えた。

 映画はいよいよ日本の子どもたちにも送り届けられる。アニメファンも待ちにまった作品として姿を見せる。きっとベルリンと同様に、大人から子どもまで多くの人の心を捉える作品になるに違いない。そうした観客の様子を見ながら舛成監督は、「実はまだ語られていない話が・・・」とまた語りだすかもしれない。
画像(c) A-1 Pictures/「宇宙ショーへようこそ」製作委員会

『宇宙ショーへようこそ』
/http://www.uchushow.net/
6月26日(土) 新宿バルト9、シネ・リーブル池袋、渋谷シネクイント、立川シネマシティほか 全国ロードショー

監督: 舛成孝二
脚本: 倉田英之
キャラクターデザイン・作画監督: 石浜真史
音楽: 池 頼広
主題歌: スーザン・ボイル「フー・アイ・ワズ・ボーン・トゥー・ビー」(Who I Was Born To Be)
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)
制作: A-1 Pictures
製作: 「宇宙ショーへようこそ」製作委員会
配給: アニプレックス
《animeanime》
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