米国のコミックス業界で最も注目される賞であるアイズナー賞(Will Eisner Comic Industry Awards)のノミネート作品、作家が発表された。 この中で日本のマンガ家浦沢直樹さんが、『20世紀少年』と『PLUTO』の2作品で合計5つ、クリエイター別のノミネート数でトップとなった。浦沢直樹さんの米国での評価の高まりを感じさせるものだ。また、日本マンガ作品では辰巳ヨシヒロさんの『劇画漂流』が3部門でノミネートされ注目されている。
浦沢さんの作品では、まずVIZメディアから発売された『20世紀少年』がシリーズ刊行中の最も優れた作品に与えられるBest Continuing Seriesの候補に挙がっている。アイズナー賞は米国で発売された作品が評価の対象となりため、日本では完結した『20世紀少年』も未完シリーズとの扱いになっている。 また、短いシリーズ作品を対象とするBest Limited Series or Story Arcには、手塚治虫さんを原作とする『Pluto』が候補として挙げられた。さらに両作品の作者としてBest Writer/Artistの5人の候補にも選ばれた。いずれもアイズナー賞の中でも主要部門と見做され賞だ。
また、この2作品はいずれ海外作品の米国版(アジア部門)(Best U.S. Edition of International Material-Asia)にもノミネートされている。同部門はもともと2007年に海外作品部門から日本部門として独立したものが、今年からそれがアジア部門に再編された。これまでは特定の国の作品を扱う特異な賞であったが、今回からより普遍性の持ったものとなる。 ただし、候補作は6作品のうち5作品が日本のマンガである。浦沢作品以外は『劇画漂流』(辰巳ヨシヒロ著)、『美味しんぼ アラカルト』(雁屋哲原作、花咲アキラ作画)、『遥かな町へ』(谷口ジロー著)となっている。 これ以外に日本マンガ関連の興味深いのは、エリック・P・ナッシュ(Eric P. Nash)さんの研究書『Manga Kamishibai: The Art of Japanese Paper Theater』である。本書は1930年代の日本の紙芝居が日本のマンガ文化につながるとして、その歴史を追ったものとなっている。