『攻殻機動隊S.A.C』、『精霊の守り人』と神山健治監督の送り出すアニメ作品に覚える好感度の所在——それが最近の監督の取材記事を読んで、ようやく腑におちた。「決してあきらめないこと」なのだ。神山監督自身、演出家になるため、またオリジナルのアニメ作品を世に送り出すため、断じてあきらめようとはしなかった。その成果としてTVシリーズ全11話と、その続編として公開される劇場版(全2部作)がある。当然、劇場パート1「The King of Eden」もまた、「あきらめない人たち」の物語なのである。 とある理由でセレソン(=救世主)として抽出された12人の男女に、百億円がチャージされた「ノブレス携帯」が与えられる。その大金で日本を正しい方向へ導けるか否か。最初に達成できたと判定されたセレソンが「アガリ」になり、2位以下は抹消される。チャージを使いきってもダメ、私用もダメ。試されるのは知恵、求められるのは行動だ。支えるのはマネーパワー、手助けをするのは万能システム“ジュイス”だ。そしてセレソンのすべてを律するのは「ノブレス・オブリージュ=もてる者の義務」である……。 このTVシリーズの基本設定に即し、最終回で主人公の滝沢朗はミサイル攻撃から日本を救って「この国の王様にしてくれ」とジュイスに願い、記憶を消して行方不明となった。劇場版は、そうやって不在になった主人公を探し求めるところから始まる。