競技かるたという少しマイナーな世界を自分の打ち込める世界として発見した主人公千早の青春を描く。2008年から連載され、現在は単行本が第4巻までが発売されている。マンガ大賞がこだわるいまこの瞬間に相応しい作品である。
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しかし、残念ながら授賞式には、末次由紀さんは来場しなかった。これについて触れられると、担当編集者である坪田絵美さんから、これは過去にあった事件の経緯から自分はまだこうした場に出て行ける人間ではないと末次由紀さんが考えているためだと説明された。
それだけに末次由紀さんにとっても喜びはひとしおだったに違いない。会場に届けられたコメントには、いま現在マンガが描ける喜びと、その読者、今回作品を評価してくれた多くの人に深く感謝する気持ちが溢れていた。
『ちはやふる』の作品の誕生は、編集の坪田絵美さんが競技かるたの選手であったことだという。このアイディアを末次さんに持ちかけたところ、「それはすごく楽しそう」といい、『ちはやふる』が実現した。
その後、末次さんは一週間で百人一首を覚え始め、さらに直ちに多くの大会に取材に出かけるなど、作品に意欲的に取り組んでいる様子が坪田さんより紹介された。
プレゼンターには昨年の大賞受賞者である『岳』の石塚真一さんが登場。代理として坪田さんが、手作りのトロフィーを受け取った。
石塚真一さんによれば、昨年のマンガ大賞の受賞をきっかけに『岳』を手に取る人が増えたという。それは、単行本のセールスにもつながったようだ。マンガ大賞の目的は人にお薦めしたいマンガを選ぶことだから、大賞受賞がそうした役割を十分果たしたようだ。
今回もマンガ大賞2009の場を通じて、『ちはやふる』はより多くの人に読まれることになりそうだ。また、受賞作品だけにとどまらず、今回ノミネートされた10作品も同様であろう。
また、マンガ大賞は最終選考のノミネート作品のポイントを公開している。これによれば、小山宙哉さんの『宇宙兄弟』が94ポイントで2位となり、『ちはやふる』の102ポイントと接戦だったことがわかる。さらに、羽海野チカさんの『3月のライオン』が65ポイントで3番目につけた。
昨年は山岳救助隊員を取り上げた『岳』、今年は競技かるたの『ちはやふる』と、偶然にも専門性の高い分野を取り上げた作品の受賞が続いた。逆にそうしたマンガを取り上げるところが、マンガ大賞の特長でもある。マンガ大賞は2010年も開催予定だという。来年はどういった作品が出てくるのか、今から楽しみな人が多いだろう。
マンガ大賞2009 公式サイト /http://www.mangataisho.com/