押井守監督の『イノセンス』が先週末9月18日に米国公開された。現地メディアの批評も出揃っ来ている。批評は概ね好意的で、押井守監督の深い思考と2Dと3Dを融合したCGアニメーション技術について高い評価がされている。また、映画『ブレンドーランナー』と比較して紹介する記事が目立ち、サイバーカルチャーへの言及も多く見られた。全米で100館以下の公開という規模に比べて関心は高く、大手メディアを含めた様々なメディアが『イノセンス』を取り上げている。そういったメディア批評の中から目についたものを幾つか拾ってみた。 まずは、米国メディア界の2巨頭というべきニューヨークタイムズ紙とワシントンポスト紙である。不思議なことに両者の批評の視点は、非常に似通っており米国のトップメディアの見方が判り面白い。 両紙が注目する共通の論点は3点である。まず、映画『ブレードランナー』との比較である。ニューヨークタイムズ紙はその冒頭を『ブレードランナー』の原作フィップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を引用し、アンドロイドは電気羊の夢は見ないが自殺の夢を見ると書き出している。そして、『イノセンス』の世界は、映画『ブレードランナー』からの影響があると述べている。ワシントンポスト紙はもっと簡潔に、『イノセンス』は『ブレードランナー』+『良質のディズニー』+『ヤクザ映画』だと説明した。しかし、これはイメージの話でオリジナリティの不足とは取られていない。例えば、アニメ業界誌アニメワールドニュースは、ブレードランナーとの類似は表面的なものに過ぎないとその類の批判を明確に退けている。 2点目は、技術的な問題である。両者ともそのCG技術の素晴らしさと美しさに賞賛を与えている。特に、2Dと3Dの融合に興味を示している。ニューヨークタイムズは、アメリカでなくなりつつある2Dアニメには、まだ技術としての可能性があると述べている。 最後が、人間と機械との境界線は何かと言うテーマについての言及である。このことは、現実と非現実とは何かというテーマと伴に多くの評者の関心を引いているようだ。 ワシントンポストは、上記に加えて大人向けのアニメとは何かについて記事の大きな部分を割いており、日本を除く世界ではいまだ大人のためのアニメは急進的な考え方だと説明している。全体の評価は、ニューヨークタイムズ紙は、美しく、シリアスでクールと好意的であるし、ワシントンポスト紙も前作には及ばないかもしれないが、それでも表現し難く生き生きとした忘れ難い映画だとしている。 ほかのもっとローカルな新聞では、熱狂的な支持かあるいは表面的な紹介にとどまるかのどちらかのようだ。シリコンバレーの情報に強みのあるサンノゼマーキュリーニュース紙は刺激的かつ知的な経験と評しており、ネットマガジンのワイヤードニュースは卓越した作品、エレガントで達成感があると絶賛している。シカゴトリビューン紙の関心は主に映像技術に向けられており、評価は4点満点の3点ながら古典になる可能性があるとしている。
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