“海の民話”アニメを上映!「民話×地域づくり」の可能性語る「海ノ民話アニメーション上映会」開催レポ | アニメ!アニメ!

“海の民話”アニメを上映!「民話×地域づくり」の可能性語る「海ノ民話アニメーション上映会」開催レポ

日本各地の海の民話アニメ42作品を上映し、「民話×地域づくり」の可能性を語り合うイベント「海ノ民話アニメーション上映会 2022」が、2023年1月22日に開催された。

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「海ノ民話アニメーション上映会」2022
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日本各地の海の民話アニメ42作品を上映し、「民話×地域づくり」の可能性を語り合うイベント「海ノ民話アニメーション上映会 2022」が、2023年1月22日に開催された。次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環として行われたもので、作品上映とあわせて女優・作家・歌手の中江有里やアニメ監督、声優ら多彩なゲストが民話活用の可能性を語った。

イベントは二部構成で実施され、第一部では「海ノ民話のまちプロジェクト」の軌跡、15本のアニメ上映とゲストトークを展開。第二部では2018年から2022年までに制作された、日本各地の「海ノ民話」アニメ27作品を一挙に上映した。

まず登場したのは日本財団の海野光行常務理事と、女優・作家・歌手として活躍する中江有里だ。このプロジェクト実施の理由や、民話をアニメーションにした背景などが紹介された。

『海ノ民話のまちプロジェクト』の軌跡

日本財団 笹川陽平会長

日本財団の笹川陽平会長より、「海の民話には『海への感謝や教訓、警鐘』が含まれている。例えば魚や貝などの海の資源を取り過ぎないように、感謝しながら海と共に生きていく心構えがあった昔の人たちの海への想いが、海の民話を通して語り継がれてきた。海ノ民話のまちプロジェクトでは、海の民話をアニメーション化して、未来の子どもたちへ『海への想い』を引き継いで行きたいと思っている。本日の上映会ではゲストによる民話アニメについて面白い話があります。どうぞ皆さんで楽しんでください」とのビデオメッセージも寄せられた。

日本財団 海野光行 常務理事

海野常務は、「多くの民話には感謝や教訓、警鐘や心がまえなど、先人たちが込めた『想い』が詰まっています」と語る。民衆のなかから生まれ、語り継がれてきた民話は、少子高齢化や市町村合併などの影響により消失の危機にある。プロジェクトの背景について、海野常務は「海にまつわる民話を記録保存し『海と人とのつながり』や『地域の誇り』、海心を子どもたちに伝え、継承していく必要があると考えプロジェクトをスタートさせました。アニメという手法を選んだのは世代を超えて、とりわけ子どもたちに伝えていくため。柔らかいタッチと親しみやすい画、語りかけるような優しさのある声の作品にしたいと切望していたところ、『まんが日本昔ばなし』のチームにいた皆さんに出会うことができ、アニメ制作が可能になりました」とも述べた。

女優・作家・歌手の中江有里

中江は、子どもの頃から『まんが日本昔ばなし』をテレビでよく観ていたと話す。「今思えば、テレビで昔ばなしを見ていたことで、昔があって今があることを子どもながらになんとなく知ることができていた。昔ばなしに触れることはとても貴重なのだと思います」とも語り、『海ノ民話』をYouTubeで観ることができることの魅力や、1話が子どもでも飽きない短さであることにも着目していた。

“民話が教えてくれること”をアニメで制作


続いてステージには、一般社団法人日本昔ばなし協会の代表理事で『海ノ民話のまちプロジェクト』の監督を務める沼田心之介と、今治市産業部交流振興局文化振興課課長の波頭健が登壇した。
沼田監督は「海ノ民話のアニメ作品は、実際に現地を訪ねて地域ごとに実行委員会を作り、地元のさまざまな方々と意見交換をして丁寧に作っている。船で民話の現地に赴くこともあり、地元の人が大切にしてきたことや文化を取り入れて作品を作っています。とりわけ海の民話が教えてくれることを分かりやすく表現したいと思い、試行錯誤しました」とコメントする。

『海ノ民話』の教育活用事例を紹介


続いて、『海ノ民話』を活用した事例として、神奈川県藤沢市の創業1902年の老舗・中村屋羊羹店によるものと、愛媛県今治市でのものの二つが紹介された。その効果について、波頭は「今治市で伝承されてきた『海ノ民話・クジラのお礼まいり』から得られる学びが一層深まり、地域への愛郷心を高まるきっかけになったと教育現場から評価の声が届いています」と述べる。引き続き教育現場で『海ノ民話』を活用し、海から得る教訓や学びを子どもたちに伝えていくと語った。

これを受け、中江は「民話もその土地特有の宝ではないかと改めて思いました。『海ノ民話』をアニメにすることで、地元の方がその宝を改めて自覚する、まちを誇りに思うきっかけになるようにも思います。『海ノ民話』をきっかけにコラボ商品が生まれ、地域の活性化につながるという良い流れに感心しました」と述べた。

ゲストトークを交えつつ、3つのテーマで作品を上映


この後は、現在までに制作された42作品のなかから15作品を3つのテーマに分けて上映。テーマに関連したゲストトークが繰り広げられた。1つ目は「語り継がれる民話のチカラ」、2つ目は「地域を豊かにする海文化」がテーマで、3つ目の「アニメ芸術としての民話」では制作過程で特に技術的にこだわった作品が上映された。この「アニメ芸術としての民話」では、『おかあさんといっしょ』ファンターネ!マーキー役の四宮豪、『おかあさんといっしょ』ガラピコぷ~ ムームー役の冨田泰代ら2名の声優と、アニメーション監督でありアニメーション演出家、アニメーター、マンガ家でもある樋口雅一が登壇した。

アニメーション監督、アニメーション演出家、アニメーター、漫画家の樋口雅一

樋口は、アニメ界での昔ばなしの魅力や価値について語る。今のアニメは完全分業制だが、昔ばなしは1作品が5分から10分のため、ストーリーからアニメーションの動き、どんな演出にするかなどを作家一人で完結することができる、と紹介した。また「昔ばなしは、クリエイター自身の個性や思いをつぎ込んでつくることができる、とてもやりがいのある、貴重で楽しくありがたい仕事なんです」と、クリエイターにとっての魅力も熱く述べた。

(左)声優・四宮豪 (右)声優・冨田泰代

冨田は、『海ノ民話』について「『まんが日本昔ばなし』を観ていたので親近感があり、懐かしく感じました。漁師さんの服装はこんなだったんだと、日本文化も垣間見ることができますね」と話す。「絵柄も含めて絵本に近いイメージがありますね。アニメーションなのにページを1枚1枚めくっている感じがあって、親しみやすく取り組みやすいと感じました」と述べたのは四宮。その時代の流行りや土地の風習など、細かいところまでしっかり描かれているのが面白いですね」とも語った。

そして、四宮と冨田は、「竜王の子の約束」という『海ノ民話』の一場面のアフレコを会場で披露。一人で何役も声を変えて演じる様子には、来場者が感激し盛り上がりを見せた。

「海ノ民話のまちプロジェクト」に対する期待として、冨田は「郷土愛や自分のまちへの誇りも育む『海ノ民話』。遠くの学校同士をオンラインでつなぎ、自分のまちの『海ノ民話』を見せ合ってまちを紹介する。子どもたちがそんな語り部になって、『海ノ民話』が拡がっていけばいいなと思います」とコメント。四宮は「このプロジェクトがいろんなかたちで拡がってつながっていって欲しいですね。今は標準語で収録していますが、例えば、愛媛のみなさんが愛媛の言葉で声を入れるなど、現地バージョンができると面白いなと思っていて、僕たちも参加したいという夢を持っています」と語る。樋口は「ものをつくる立場として、昔ばなしをアニメにする機会があるのは本当に嬉しいことです。これからもどんどん作品をつくって欲しいと期待しています」と述べた。

イベントの最後には、海野常務からプログラムの総評と2023年度の展望が3つ紹介された。
「『海ノ民話のまち』ネットワークの構築」、「有識者ネットワークの構築」、「漁師の方々、作家の先生など異業種異分野との繋がり」を掲げた海野常務は、「ARやVRで子どもたちが民話の世界へ没頭して楽しめるような環境づくりも行っていきたい」とも述べた。これらをもって第一部は閉幕。第二部では、初公開の新作アニメを含め、これまでに制作された『海ノ民話』27作品が一挙に上映され、アニメファンや子ども連れの来場者が楽しんだ。

「海ノ民話アニメーション上映会」2022

日時 2023年1月22日(日)
会場 WITH HARAJUKU HALL
主催 一般社団法人 日本昔ばなし協会
共催 日本財団 海と日本プロジェクト

プログラム
【第1部】<オープニング>
・『海ノ民話のまちプロジェクト』始動の背景、海ノ民話を活かした取り組み事例、「語り継がれる民話のチカラ」、「地域を豊かにする海文化」「アニメ芸術としての民話」という3つテーマで作品を上映し多彩なゲストとともに民話やアニメ化、今後の展望などについて深堀りトークを展開。

【第2部】
<北海道から沖縄まで「海ノ民話」アニメ作品を一挙上映>
・2018年から2022年までに制作した全国各地の「海ノ民話」のアニメ作品27作品 を上映。


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