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数あるRPGの中でも人気や知名度が特に高く、重ねてきた作品も多い『ファイナルファンタジー』は、このジャンルを代表するシリーズのひとつとして知られています。
1作目がファミコン向けに登場し、意欲的なゲームシステムや時代の最先端を行くグラフィックなど、様々な魅力でユーザーを虜に。以後のシリーズ展開でも各要素は受け継がれ、日本を代表するRPG作品となって世界に羽ばたきました。
その中でもナンバリング作品は常に高い注目を集めており、発売されるたびに大きな話題となります。原点の『ファイナルファンタジー』から、オープンワールドを採用した『ファイナルファンタジーXV』まで、主軸となるナンバリングは15作品登場しています。
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各作品にはそれぞれ特徴がありますが、多くの関連作でたびたび登場する「ジョブチェンジシステム」を最初に確立した『ファイナルファンタジーIII』(以下、FFIII)も、シリーズを語る上で外せない作品のひとつ。1990年に発売された本作は、この4月27日でちょうど30周年を迎えました。
様々な新機軸を打ち立て、ファミコンにおける『FF』シリーズの締めくくりを飾った『FFIII』。本作の30周年を記念し、今回は『FFIII』がきっかけとなったシリーズ定番の要素を振り返りたいと思います。
◆「ジョブチェンジ」や召喚魔法は『FFIII』から始まった!
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『FF』シリーズと言えば卓越したグラフィック表現が有名ですが、新要素を取り入れたり新機軸を打ち立てるなど、新たなゲーム体験への挑戦も常に行ってきました。1作目では、パーティメンバーのジョブを任意で選択する編成が楽しめ、上位ジョブへのクラスチェンジも搭載。そして『FFII』では、レベルアップ制を廃し、実行したアクションに応じた成長を導入したほか、ドラマ性を強化したストーリーを展開し、人気を博しました。
そして3作目となる『FFIII』は、『FFII』の路線から大きく舵を切り、レベルアップ制が復活。前作の主人公たちには、設定上で付けられた名前がありましたが、『FFIII』ではデフォルト名などはなく、全てのプレイヤーが「光の戦士」の名前を自分たちで命名します。主人公らに決まったイメージがなくなり、ストーリー展開においても悲劇的な事態が多かった『FFII』とは一線を画します。
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シリーズ作の中には、前作の要素をあまり取り入れない作品もありますが、これほど大きく方向性を切り替えたケースは割と少なめ。その一方で、クリスタルにまつわる物語や、今では定番となった用語(「ケアル」や「しろまどうし」など)は受け継ぐなど、シリーズ全体の世界観は継承しています。
ゲーム性は1作目に近い方向を見せますが、各要素は大きな進化を見せました。一方通行だったクラスチェンジは、取得済みのジョブにいつでも変更できる双方向の「ジョブチェンジシステム」となり、手強い敵を攻略する重要な要になります。
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最初期のジョブは、全員「たまねぎけんし」。全体的にステータスが低く、装備できる武具も少なめ。そのため、新たなジョブを獲得したら即座に切り替えられてしまう切ないジョブでした。
しかし「たまねぎけんし」の見た目はかなり愛らしいため、こだわって使い続けたユーザーもいたほど。また、専用の装備を調えてレベルを高めると予想外の強さを誇るため、やり込み派にとっても魅力的な存在です。余談ですが、この「たまねぎけんし」も『FFIII』が初登場でした。
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そんな「たまねぎけんし」で始まった冒険は、風のクリスタルから力を得ることで、「せんし」「モンク」「しろまどうし」「くろまどうし」「あかまどうし」へのクラスチェンジが可能に。ここから、パーティの自由度が一気に膨らみます。
バランスよくジョブチェンジして安定を目指すもよし、魔法系に偏らせるもよしと、プレイヤーの好みに応じた編成ができます。この自由度の高さは、『FFIII』が持つ特徴的なポイントのひとつです。ジョブチェンジはいつでも出来るため、偏った編成にしてもやり直しが可能。戦闘で得られる「キャパシティ」こそ消費しますが、ジョブチェンジのトライ&エラーがやりやすいのも、嬉しいポイントのひとつでした。
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ジョブはもちろんこの他にも数多くあり、「ナイト」や「りゅうきし」、「にんじゃ」など、豊富なラインナップを用意。また、バハムートやオーディンを呼び出す召喚魔法が使える「げんじゅつし」や「まかいげんし」といったジョブもあり、これが召喚獣の原型となりました。
ジョブチェンジは、『FFV』や『FFX-2』、またオンラインゲームの『FFXI』と『FFXIV』にも採用され、時代を超えて多くのユーザーを楽しませます。また召喚獣は、最新作の『FFVII リメイク』にも登場するほど、すっかり定番の存在となりました。その発端である『FFIII』の存在は、シリーズファンにとってかけがえのない作品として語り継がれています。
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また、『FFIII』の思い出と言えば、ラストダンジョンである「クリスタルタワー」の長さ。プレイスタイルにもよりますが、ざっと2~3時間はかかる上、道中にセーブポイントはありません。中断セーブといったシステムもないので、攻略にはまとまった時間が必要ですし、道中の緊張感から心が折れそうになることも。
当時は自室にTVがあるケースが少なかったので、親の目を気にしながらのプレイ、という状況も珍しくありませんでした。母親に「今日はもう、ゲームはやめなさい」と言われたら、またダンジョン攻略がやり直しに・・・そんな恐怖も、あの時ならではの感覚です。
当時は手強いハードルだった「クリスタルタワー」ですが、手こずった記憶は思い出にもなりやすいもの。『FFIII』を遊んだユーザー同士だと、この「クリスタルタワー」の話で盛り上がるこもしばしば。また『FFXIV』では、アライアンスのコンテンツに「クリスタルタワー」が登場。思い出深い舞台での戦いに、懐かしさと喜びを感じた方も少なくないでしょう。
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今回は、『FFIII』がシリーズ全体に及ぼした大きな要素である「ジョブチェンジ」や編成の自由度について振り返りましたが、もちろん本作の魅力はこれだけではありません。ジョブごとに用意されたキャラクターグラフィックや、テンポと演出が強化されたバトル、耳に残るBGMの数々など、枚挙には暇がないほど。そんな『FFIII』は、今も色褪せない輝きを放つ名作RPGです。
◆『FFIII』を今遊ぶなら、選択肢の多いリメイク版もお勧め─オリジナル版はバーチャルコンソールかミニ ファミコンを視野に
『FFIII』を遊びたいと思った場合、どのような選択肢があるのか、こちらで軽く紹介させていただきます。オリジナル版は、ファミコンなどの対応ハードも手に入れなければならないので、未所持の方にとってはハードルが高いことでしょう。
本作をベースとしたリメイク版があり、まずは2006年にニンテンドーDS向けにリリース。以降、iOSにAndroid、Windowsなど、様々なプラットフォームにも登場しており、選択の幅はかなり広がっています。手軽さで言えば、多くの方が所持しているiOSかAndroidでのプレイが最適でしょう。なお、PSP向けのダウンロード版ならば、PS Vitaで遊ぶこともできます。
オリジナル版の体験にこだわりたい方は、WiiUもしくは3DS向けとなるバーチャルコンソール版がお勧め。また、「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」に『FFIII』も収録されているので、そちらでプレイするのも一興です。
新たに生まれ変わったリメイク版、まさしく原点が味わえるバーチャルコンソール版、他のファミコンソフトもプレイできるミニ ファミコン。いずれも魅力的な選択肢なので、お好みの環境でぜひプレイしてみてください!
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