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ご存知の人は多いと思いますが、エリカは初代『ポケットモンスター赤・緑』(1996年2月27日発売)に登場したトレーナーです。『ポケカ』は基本的に『ポケモン』最新作に登場するトレーナーやポケモンのカードの収録を優先することから見ても、エリカの人気の高さが伺えます。
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『ポケモン』は魅力的なポケモンを戦わせることだけでなく、トレーナーの熱いドラマが見られるのも醍醐味。シリーズ屈指の人気を誇りながら、ゲーム中ではあまり詳しく言及されておらず謎も多いのがエリカです。そこで、『ポケカ』を通してエリカ人気の理由を考察してみました。
■エリカの変遷
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「エリカのおもてなし」は、カードドロー系の効果カードが多くある『ポケカ』においても、大量にカードをドローするチャンスがある優れたカードです。このカードだけでも、エリカが多くのプレイヤーの中でプラスイメージの存在として定着しているでしょう。
『ポケモン』初登場時のエリカは、黒髪と着物姿にお嬢様のような話し方が特徴。おしとやかで落ち着きのある女性としての印象が強かったですが、年月を重ねるごとに、髪の毛も短くなり、愛嬌や若々しさを感じさせるイラストにモデルチェンジされています。
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エリカのルーツを探ることで新たな魅力が見えてくるのではないかと思い、21年前に発売された「ポケモンジム タマムシシティジム エリカ スターター」(1998年7月15日発売)を購入しました。
■エリカとタマムシシティ
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カントー地方・タマムシシティは様々な商品を揃えるタマムシデパート、タマムシマンション、ゲームコーナーなどがある大きな街。タマムシシティのジムリーダーであるエリカは着物姿ですが、アニメではバトル時にワンピースの洋服に着替えていました。
タマムシジムの看板に、「しぜんをあいするおじょうさま!」と書かれてある通り、ナゾノクサ、マダツボミ、モンジャラなどの草タイプのポケモンをメインに使用します。
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しかし、一見可愛らしい手持ちの草ポケモンなのですが、進化系である「ラフレシア」や「ウツボット」に代表されるように、凶暴や不気味さを感じさせます。それらを愛でるエリカのギャップも魅力なのですが、不穏な気配も感じずにはいられません。
■エリカはお嬢様?
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初登場からお嬢様のイメージが定着しているエリカですが、『ポケカ』においても、「お上品攻撃」「エリカのお付き」があり、大きな屋敷とメイドのイラストからも両親はお金持ちで英才教育を受けた?ことを連想させます。「エリカのおもてなし」も、裕福だからこそ周りに与える義務があるという考えの「ノブレス・オブリージュ」から来ているのかもしれません。
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また、「エリカの香水」も、これだけだと思い入れがあるブランドなのかな?くらいにしか判断できませんが、アニメに登場した際は香水店のオーナーも兼ねていました。
品行方正で才色兼備な日の打ちどころのないイメージがあるエリカは、多くのプレイヤーが抱く「お嬢様」のテンプレートのようです。しかし、「礼儀作法」のイラストは全体的に陰鬱な色で、エリカも顔に影が差していて穏やかな表情ではありません。ウツボットを文字通り生花にしているのも怖いです。この一枚がエリカの内面を暗示しているのでしょうか。ただ可愛いお嬢様ではない、凄みを感じさせる所が確かにあるのです。
■改めて気付くエリカの魅力
エリカが初めて登場したのは『ポケモン赤・緑』。キャラクターデザイン決定の背景には、魅力的な女性像のひとつである黒髪・和服が似合う「大和撫子」と「お嬢様」があったのは想像できます。そして、21年が経っても、『ポケカ』でエリカの関連グッズや新イラストが求められるのは、それらの要素が普遍的な魅力を持っているのに他ならないからでしょう。
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加えて、エリカのどこか危うさを感じさせる描写も、料理で例えるならスパイスとなっています。そこはおよそ20年以上前と比べても女性キャラクターが多様化した現代にマッチしており、より熟成されて深みを感じさせます。エリカは年月が経つほどにおいしくなる熟成ワインのような存在ですね。ますます手が届かない高嶺の花みたい。ちなみに、大和撫子は植物「カワラナデシコ」の別名でもあり、花言葉は「大胆」、「才能」、「純愛」です。