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対戦ゲームと言えば、『ストリートファイター』シリーズのような対戦格闘を連想する方もいますし、昨今ではバトルロイヤル形式のシューターが大きなブームとなっています。
対戦して遊ぶゲームの歴史を辿っていくと、特に多いジャンルはやはりアクション。協力プレイのはずが、いつの間にか対戦するツールとして盛り上がってしまう『マリオブラザーズ』や『バルーンファイト』、『アイスクライマー』なども、対戦アクションの要素が含まれていると言えるでしょう。
1985年に発売された『ボンバーマン』は、対戦要素のない一人専用のアクションゲームでしたが、後の作品で対戦モードを用意。そしてPCエンジン向けにリリースされた際、マルチタップを用いた最大5人対戦が可能となり、対戦アクションとして大きな注目を集めた結果、一躍人気シリーズへと成長しました。
そして1999年には、対戦アクションの代表格とも言える『スマブラ』シリーズの一作目『ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ』が、ニンテンドウ64向けに登場。いずれも人気作品の主要的なキャラクターたちが作品の枠を超えて結集し、まさに大乱闘なアクションを繰り広げます。
『ボンバーマン』は当時、毎年のようにリリースされており、1999年にはニンテンドウ64ソフト『爆ボンバーマン2』をはじめ、計3作品を展開。そして『ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ』がリリースされるなど、1999年は対戦アクションの大きな節目を迎える年となりました。
ですが、1999年に登場した対戦アクションは、『スマブラ』や『ボンバーマン』だけではありません。知名度やその後の展開については一歩譲るものの、独自のゲーム性や印象深いビジュアルなど、他に類を見ない個性を持った対戦アクションゲーム『ラクガキショータイム』が、1999年7月29日に発売されました。
ユニークさでは他にひけを取らない『ラクガキショータイム』が、本日でちょうど20周年を迎えたので、今回は本作の魅力を振り返ると共に、開発を担当したトレジャーの多人数アクションについても迫りたいと思います。
◆移動も攻撃もホーミング! 最大17キャラが使用できる、時代を先駆けたハチャメチャ乱闘アクション
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対戦アクションと一口にいっても、切り口やゲーム性は多種多彩。『ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ』(以下、スマブラ64)は、横画面でバトルを繰り広げますし、『ボンバーマン』は見下ろし型のフィールドで雌雄を決します。
この『ラクガキショータイム』は、『ボンバーマン』に近い見下ろし型フィールドですが、3D空間となっており、立体的な移動や攻防を展開。3D描写を得意とするプレイステーションの特性を活かしたゲーム性となっています。
しかし、3Dフィールドでのバトルは自分の操作キャラを見失いがち。また、想像した操作と実際の立体的な移動が食い違い、思うように動かせないといったケースもあります。ですが『ラクガキショータイム』は、タイトルにもある“ラクガキ”をビジュアル的な特徴としており、切り抜いたラクガキのようなキャラクターたちによるハチャメチャなアクションを展開。白く縁取られたキャラクターたちは、フィールドに埋もれることなく、はっきりと存在感を主張してくれます。
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また移動に関しても、方向キーや通常のジャンプだけでなく、本作の特徴のひとつとも言える「ホーミングジャンプ」のおかげで、立体的な空間でも位置取りと把握を容易なものにしてくれます。この「ホーミングジャンプ」は、フィールド上にいくつかあるマーカーを着地地点として移動する方法で、イメージとしては『スプラトゥーン』のスーパージャンプに近いかもしえません。マーカーを目印に、フィールドをところ狭しと飛び回る爽快感は、対戦アクションに新たな可能性を感じさせてくれました。
しかもホーミングは、移動だけではなく、攻撃にも盛り込まれています。本作の攻撃手段は、アイテムを投げて相手にダメージを与えるというもの。このアイテムを投げる時、投げたい方向(相手や物)に方向キーを入れることで、その対象に向かう矢印が出ます。その状態で投げると、相手に向かって飛んでいく「ホーミング投げ」となります。
「ホーミング投げ」は、□ボタンのみで投げると相手を追尾しますが、方向キーの入力を合わせることで投げ方や効果が変化。例えば、方向キーの後ろを入力しながら投げると軌道が山なりとなり、着弾すると爆発。周囲を巻き込むダメージを与えられます。
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対戦アクションは、腕前の差があると相手にダメージを与えるのすら困難になる場合も少なくありません。しかし本作は、「ホーミング投げ」さえしっかり使えれば、アクション上級者も決して油断できない攻撃が飛んできます。多少の腕前の差もひっくり返せる乱闘アクションは、先が読めない展開も含め、刺激に溢れるものとなりました。
プレイ感覚や奥深い点など、『スマブラ64』とは様々な点で異なりますが、同時期に出た対戦アクションという共通点で見ると、『ラクガキショータイム』が侮れないポイントがいくつか見えてきます。最も分かりやすい点で言えば、プレイアブルキャラクターの数もそのひとつ。
『スマブラ64』でプレイヤーが操作できるキャラクターは、基本8キャラ+隠しキャラの4体、計12体となります。ですが『ラクガキショータイム』は、最大17名ものキャラクターが使用可能。1999年時点の対戦アクションで、これだけ多くのプレイアブルキャラクターを用意した作品は、かなり稀有と言えるでしょう。
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ただし、各キャラクターの強さにはバラツキも見られるので、注意が必要です。“友達同士がノリで使う”みたいなキャラもおり、顔見知り故のレギュレーションで遊ぶのが前提といった面もありました。元々、対戦はローカルプレイのみなので、当時らしい遊び心と言えるかもしれません。
操作感もゲーム性もユニークでハチャメチャ、しかし対戦アクションとしての面白さもしっかりと盛り込まれていた『ラクガキショータイム』。残念ながら大ヒットとはならず、直接的な続編が作られることはありませんでした。しかし、本作を開発したトレジャーは、この他にも多人数プレイのゲームをいくつもリリースしています。
◆トレジャーが生み出した、多人数プレイの歩み─最大12人対戦のアクションも!?
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『ラクガキショータイム』の発売元はエニックス(現 スクウェア・エニックス)ですが、開発を担当したのはトレジャー。メガドライブソフト『ガンスターヒーローズ』で一躍注目を集め、当時のゲームファンの心を鷲掴みにしたメーカーです。
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シングルプレイや2人同時プレイも可能なアクションゲームなどを数多く手がけましたが、『ラクガキショータイム』のような多人数が楽しめる作品をいくつも生み出しています。まず代表的なのが、対戦型格闘ゲームながらも4人での乱闘を実現した『幽☆遊☆白書 魔強統一戦』(1994年)。今年の9月に発売される「メガドライブ ミニ」への収録が決まった際には、多くのユーザーが歓喜の声を上げた名作です。
また、トレジャーの多人数アクションといえば、『ガーディアンヒーローズ』(1996年)も外せません。マルチシナリオ・マルチエンディングのストーリーモードもボリューム満点ですが、多人数プレイという面で見ると、真骨頂はVSモード。周辺機器を使うことで、最大6人による大乱闘が可能に。当時6人で遊べる対戦アクションは、かなり画期的でした。
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しかも『ガーディアンヒーローズ』は、2011年にXbox 360向けダウンロードソフトとして配信。こちらでは、オンライン時のバーサスモードのみですが、最大12人で同時プレイが可能。混戦に次ぐ混戦で、想像を超える展開と刺激を味わうことができます。『幽☆遊☆白書 魔強統一戦』や『ガーディアンヒーローズ』といった作品があったからこそ、『ラクガキショータイム』という個性豊かな対戦アクションが生まれたのかもしれません。
ちなみにトレジャーの多人数プレイ作品は、その後『BLEACH DS 蒼天に駆ける運命』や『BLEACH DS 2nd 黒衣ひらめく鎮魂歌』(いずでも最大4人で戦う対戦アクション)などがリリースされました。しかし近年は、トレジャーに限らず全体的に見ても、多人数プレイのゲームは比較的限られており、『スマブラ』や『ボンバーマン』といった名シリーズや、冒頭で述べたバトルロイヤル形式のシューターなどが主流に。時代に合わせて盛り上がるゲームは変わっていきますが、『ラクガキショータイム』のようなゲームにもまた出会いたいものです。
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