「シネマの神は細部に宿る」は歴史的傑作からB級、C級と呼ばれる作品にいたるまで、押井監督の主観まみれで毒舌と愛をこめて語った偏愛映画本だ。
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会見で「映画の半分より1パーセント多いくらいは、本質はフェチ。それがなかったら同じ映画を二回も三回も誰も見ない」と述べた押井監督は、本書を通して「同じ映画を何度も見る理由はなんなんだ」という疑問を考えたかったと告白。
「アニメーターあがりとか絵描き系の監督さんは、本人が自覚しているかは別としてフェテッィシュがもろに出やすい」と続け、「サンプルにするのにもっと適当な監督は他にいっぱいいるんですけど、怒られたくないので、自分のフェチで(本を書いた)」という本音をこぼした。
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自身の作品におけるフェティッシュの話題では、押井監督は「自分の作品ははっきり言ってフェティッシュの塊」と断言。
「アニメーションは理想を形にしているので、好みになっちゃうんですよ。絵描きって基本自分の理想な女の人しか描けない。だから私が描かせたい顔とアニメーターが描きたい顔は一致しないので結構揉める」と前置いて、「(アニメーターと)最大に揉めたのは(攻殻機動隊の)草薙素子。(アニメーターが)こんな筋肉の塊みたいな女描きたくないよと」という裏話も飛び出した。
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最後に押井監督は、「(本書は)どっから読んでも同じなんですよ。色々並べたのは、どれかひとつくらいね、みんな(フェティッシュが)あるでしょってことなんですよ」と指摘。
「戦車だ鉄砲だ、全然興味ない人もいる。食べ物だったり、制服だったりとか、女優さんだったりとか、あるいは男優さんだったりとか、どれか引っかかるでしょ。そこから読んでもらって、共感があるのであれば他のところに目を通してもらうと、そうすると自分の思ってないところに実はフェチがある。発見があるんじゃないかと。自分の好きなところから読んでほしい」と、著書に込めた思いを打ち明けた。
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「シネマの神は細部に宿る」押井守/著
発売日:2018年8月8日(水)
定価:本体1,600円(税別)
仕様:四六判、ソフトカバー、256ページ