主題歌は『ゲド戦記』で「テルーの歌」を歌った手嶌葵さんが再び起用され、1976年当時森山良子さんが歌った「さよならの夏」をカバーする。タイトルは「さよならの夏~コクリコ坂から~」となり、時代を越えて甦える。会見では手嶌葵さんによりその場で曲がライブで披露され、その情緒深いメロディと歌詞、柔らかな声が会場を惹きつけた。宮崎駿さんが、「なぜこの歌好きなのか説明する必要はない。聞いて貰えれば分かる」と語るとおりだ。

会見には作詞の万里村ゆき子さん、作曲の坂田晃一さん、そして編曲と映画全体の音楽も担当した武部聡志さんも出席した。
万里村ゆき子さんは、「脚本をいただいてびっくりしました。昔から(映画の舞台となる)横浜が好きで、いつも外国から来た船を見に行っていました。横浜を舞台にした映画で予告編を見て胸が一杯になりました」と、自身の曲が新たなかたちで人々に届けられることに驚き、また喜ぶ。
「昔の曲が、新たに映画に、しかも大きな映画に取り上げられてうれしい。この曲は切なさとうれしさを行き交う曲です。こうした時代にこそ受け入れて貰える歌だと思ってます」と坂田晃一さんも、自身の曲がいままた脚光を浴びることの意味を語った。
アニメ映画は初めてという武部聡志さんは、「(曲が作られた)34年前は子供の頃ですがよく覚えています。映画の力、音楽の力で少しでも優しい気持ちになれればと思います」と不安が多い時代に、映画の持つ力を発揮させたいとする。

そして、「不安がある時代に、一体何を作ればいいのか問われている」、「文明論を軽々しく語る時期ではないが、映画が多くの人の何か支えになってくれれば」と映画制作の意義について問いかけた。
そのうえで『コクリコ坂から』を映画に選んだことについては、震災が起きたいまも間違っていなかったと確信する。時代の変化に映画耐えられるかを考え、ファンタジーを作る時期でないとして、30年前から暖めて来た『コクリコ坂』でいまの時代に応えるために頑張ったという。
それでも自身の手掛けた脚本は難産だった。「シナリオが遅れスタッフ全体に迷惑をかけた、2ヵ月早く出来るはずだった」と、かなり考え抜いたことを明らかにする。

そして、主題歌については、「人を思う気持ちには、いまも昔もない」とする。映画、主題歌とも時代を越えた普遍性のあるテーマを持つと考えているようだ。
映画公開までおよそ3ヵ月あまり。世の中を取り巻く状況は、まだ暫く続くと見られる。その中で、敢えて40年以上前の日本を描く『コクリコ坂から』は、人々にどういったメッセージを届けるのだろうか。
『コクリコ坂から』
/http://kokurikozaka.jp/
7月16日(土)より、全国東宝系ロードショー
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