映画評 『劇場版TRIGUN(トライガン)』 | アニメ!アニメ!

映画評 『劇場版TRIGUN(トライガン)』

映画評 『劇場版TRIGUN(トライガン)』 文; 氷川竜介(アニメ評論家)

レビュー 実写
文; 氷川竜介(アニメ評論家)

 荒涼たる砂の大地に、百戦錬磨の不敵な面構え。腕に自慢のガンマン同士が対峙し、生命をかけた火線が交わる。酒瓶が割れ、木造のカベは吹き飛び、穴だらけになる。そんな西部劇の魅力をSF仕立てに置き換えた数々の作品の中でも、この『劇場版TRIGUN(トライガン)』は異彩を放っている。それは深紅のコートに身を包んだ主人公のヴァッシュ・ザ・スタンピード、彼の示す不思議な存在感によるものだ。
 街がまるごと壊滅するなど、あり得ない大災厄を招くため「人間台風(ヒューマノイド・タイフーン)」と異名をとるヴァッシュ。どこの街にもツンツンと尖った特徴的な金髪が目だつ人相書きが掲示され、賞金は600億$$(ダブドル)にものぼる。その大金を目当てに惑星中から荒くれ者の賞金稼ぎが集まり、ヴァッシュを追う。
 しかし、ヴァッシュ自身は噂と違い、強いのか弱いのか分からない男だ。ひょうひょうとした態度にユーモラスな軽口をきくだけ。むしろ賞金稼ぎや周囲の人間たちの思惑の交錯で騒ぎと被害が大きくなっていく。今回の映画でも、まさに「バッドランド ランブル」という副題のとおり、開巻すぐに「すれ違い」が拡大していく面白さが提示されている。ヴァッシュ自身は元凶ではなく、「台風の目」という構造が非常に面白い。ストーリーは原作者・内藤泰弘と西村聡監督の原案を小林靖子が脚本にまとめたもの。伝説の大強盗ガスバックという強烈なキャラを中心に、原作を知らない観客もトライガン世界に存分に味わえる映画に仕上がっている。

 ポイントとなるキーワードは、「世の中、つまるところは奪い合い!」というガスウッドの言葉の示すとおり、「因果」だと思った。すべてのことには原因があり、結果がある。そこには果てしのない連鎖があり、時間を超えて続いていく。英語で収支のことを「バランス」と呼ぶように、実はその奪い合いの因果が均衡のもとになっている。奪い、ため込むだけではダメなのだ。今回の物語でも、ヴァッシュとガスバックの20年前のある関わりが原因となって、ある重大な結果が生まれた、それはラスト近くまで明かされない。ヴァッシュの「ラブ&ピース」に基づく不殺のポリシー、そして手にした大金を次の強盗計画へすべてつぎ込むガスバックの美学が、せめぎ合うようにしながら、ひとつの「バランス」にたどりつく構造に快感を覚えた。
 しかし、そんな辛気くさいことはあまり気にしなくていい。今回の劇場アニメ化は1998年のTVアニメ版がヒットしたアメリカ市場からの熱いリクエストによるもの。パーティームービー的なお祭り騒ぎ感覚が満載で、次から次へと事件の起きる快感にこそ、まず身をひたすべきだろう。関西弁を使う巡回牧師ウルフウッド、保険調査員のメリルとミリィの凸凹コンビなど、楽しい面々がヴァッシュに絡む中、銃撃や破壊の緊張やカタルシスが存分に楽しめる。そして手描きの渋くうねるような描線で、しっかりと表現された日本でしか作れないアニメであることが、何より嬉しく、誇らしいと感じた。
 ヴァッシュが示す「本当の強さ」が気になったら、原作を読んでみるのも一興だろう。原作漫画は、そんなヴァッシュという男の不思議な出自と、そこに秘められた移民惑星にまつわる巨大なスケール感のサーガを見せつけるSF大作なのだから……。そうした楽しみ方もまた、果てしない因果の連鎖を生むものに違いない。

劇場版 『TRIGUN Badlands Rumble』公式サイト 
/http://www.trigun-movie.com/
《animeanime》
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