りんたろう監督に聞く作品のみどころと最新作
『よなよなペンギン』りんたろう監督インタビュー
文: 氷川竜介(アニメ評論家)
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あの作品でもCGを使ってますが、フルCGには興味なかったんです。ところが絵本としてやる予定で『よなよなペンギン』を企画していたら、丸山正雄(マッドハウス・プロデューサー)が「これはフルCGでやろうよ」と目から鱗が落ちるようなことを突然言い出したわけです。僕も否定せずに、「待てよ、もし自分がフルCGをやったら、どういう新しい可能性があるのかな」と、その言葉を受け止めました。
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その試みは成功して、まったく新しいことができた、日本のフルCGに一石を投じられたと思ってますから、やってよかったと思います。
シーンによっては背景に120レイヤーぐらい重ね、かなり大変なこともやってます。アメリカならもっと合理的に作るはずです。彼らは常にキャラクター優先で、背景も記号化されてますよね。今回は背景にも情感を入れましたし、やはり日本じゃないとできない表現だと思います。日本のアニメは貧乏なところから始まり、そこで切磋琢磨してノウハウを溜めてきました。それは世界中見渡しても日本しかできないすごい表現の財産だと、僕は思ってるんですね。
コンピュータだと、キャラクターがどんなに面白く動いても、どこかに冷たさが漂ってる気がして、それが気になってました。絵でいえばクレバスで描いたような、温かみのある手塗りみたいなものが欲しかったんです。だから美術も大変になったし、洋服の質感にしても、本当にスタッフは大変だったと思います。
全体のねらいは、やはり「動く絵本」ですね。イメージはきちっと伝えながら、馬群(美保子)さんという美術監督の感性にお任せしました。馬篭さんの持ち味はディティールで、描き方は点描画に近いんです。絵筆をすこしずつ動かしながら色をいくつも重ねていく。その繊細な色合いをコンピュータで出すのも難しくて、その苦労は並大抵ではなかったはずです。僕はできるだけ知らんぷりしてましたけど(笑)。その大変な美術監督の質感をコンポジットもうまくやってくれましたね。
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その辺は本当にすべてがうまくかみ合ったなって想います。そうそうないですよね。こうしたがんばりは、はっきり画面に出てパワーになって出ています。無謀な試みでしたが、「ここまでできれば、怖いものなしだ」と、次がもっと楽しみになりました。
『よなよなペンギン』が子ども向けを意識したかどうか、自分の中ではよく分かりません。たとえ子ども向けに見えたとしても、どこかひそかに大人へ向けて作ってるところはあります。作品の中には、今の社会状況を反映したものがいっさい入ってませんし、時代のアクチュアリティーは、まったくありません。ただ、今の子どもたちにダブらせた部分はあります。子どもにとってのこの時代は世界中が息苦しくて、酸欠状態だと思うんです。そういう時代にも、子どもたちの中には心の可愛らしさみたいなものが本来あるはずだから、そこに触れればと。それを感じとってくれればなと思います。
画像: (c)2009 りんたろう・マッドハウス/「よなよなペンギン」フィルムパートナーズ・DFP
/■ 『幻魔大戦』りんたろう監督インタビュー
《りんたろう監督からのメッセージ》
『幻魔大戦』
今は日本のアニメーションは長編が主流になってきてますが、そのさきがけということを、どこか意識して観てほしいです。もちろん26年前の作品ですから、技術などいろんなところで古さはあると思いますが、「こういうスタイルにした」という当時の想いをどこかで意識して観てもらったら、僕としてはうれしいです。
『よなよなペンギン』
まったく誰も見たことない、日本ならではのフルCGという領域に挑戦し、一石を投じた作品です。余計なことはいっさい考えず、シンプルに観てもらうとうれしいですね。
(一部敬称略/2009年10月25日 秋葉原UDXシアターにて)
『よなよなペンギン』 /http://yonapen.jp/index.html
12/23(水・祝) 全国ロードショー
配給:松竹
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(c)2009 りんたろう・マッドハウス/「よなよなペンギン」フィルムパートナーズ・DFP