「アニメーションの基礎知識大百科」 アニメを知りたい全ての人のための本 | アニメ!アニメ!

「アニメーションの基礎知識大百科」 アニメを知りたい全ての人のための本

 今年9月に発売された『アニメーションの基礎知識大百科』(グラフィック社刊)は、ベテランのアニメーター、作画監督である神村幸子さんが新人アニメーターのために著した本である。前書きによれば、新人アニメーターが仕事で必須とされる用語と技法を説明したという

レビュー
 今年9月に発売された『アニメーションの基礎知識大百科』(グラフィック社刊)は、ベテランのアニメーター、作画監督である神村幸子さんが新人アニメーターのために著した本である。前書きによれば、新人アニメーターが仕事で必須とされる用語と技法を説明したという。
 本の構成はシンプルで、前半部を「第1章アニメーションはこうしてできる」、「第2章 アニメーションの企画」、「第3章 アニメーションの制作進行ドキュメント」としてアニメの制作過程を紹介する。後半部分はより実践的な用語集となる。

 長年、アニメーター新人教育に携わってきた神村幸子さんによるものだけに、『アニメーションの基礎知識大百科』は内容の充実、適切な用語解説と、アニメーター教育のテキストの決定版と言うべきものとなった。
 特に、本書が優れているのは、用語解説のために誰でも理解できる平易な言葉が慎重に選ばれていることだ。一方で専門的な言葉を避けながら、相当深い内容まで言及する。シンプルさと十分な知識の提供を両立させている。教科書ともなりうる本にとっては、最も重要なことを実現する。

 こうした言葉の簡潔さは、本書を新人アニメーター以外に対しても魅力的なものとしている。アニメーター以外のアニメに興味のある人にとっても、アニメ制作の現場を理解するテキストとなるからだ。
 実際にアニメの制作工程は、一般からはなかなか判り難い。数々のテキスト、企業紹介、調査報告書など、これまでにアニメの制作過程を説明した文章は、かなりたくさん読んできた。しかし、その多くは手順としてそれを説明するもので、知識として理解は出来ても、リアリティという点では物足らないものであった。

 しかし、本書では、制作の現場で何がどのように起こるのかを具体的に把握することが可能である。勿論、それが制作の現場で働くアニメーターに必要とされているからだ。
 他の多くの解説書と『アニメーションの基礎知識大百科』が異なるのは、こうした現場感への配慮である。それは単にアニメーターという現場が判る人物が説明を著したということでなく、教育の観点から細かな注意書きや補足で状況を掴む助けを行っているためでもある。 
 近年メディアからアニメーターを取り巻く環境が大きな注目を浴びる一方で、制作現場で大きな役割を果たしながら見落とされがちな仕事に制作進行がある。一般からは判り難い制作進行の仕事についても、本書ではかなり触れていることも理由のひとつだ。

 アニメーションの作画や技法については、これまでも幾つかの本が書かれている。しかし、アニメーターだけでなく、アニメ制作をこれから知ろうとする人ための本と目的を限定するならば、『アニメーションの基礎知識大百科』は現在手に入るベストの本である。
 価格は2800円(税別)とやや高額になっているが、フルカラーであることや内容の厚さを考えれば投資に十分見合う本と言って間違いない。
[数土直志]

《animeanime》
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