高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第1回 「のんのんびより」と「シンデレラガールズ」を数える | アニメ!アニメ!

高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第1回 「のんのんびより」と「シンデレラガールズ」を数える

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■ 高瀬司(たかせ・つかさ)
サブカルチャー批評ZINE『Merca』主宰。商業媒体では『ユリイカ』(青土社)や各種アニメ・マンガ媒体への寄稿、「Drawing with Wacom」(Wacom)などイラストレーター、デジタルアーティストによるLive Painting企画でのインタビュー・動画ディレクションなど。
Merca公式ブログ:http://animerca.blog117.fc2.com/

商業マンガにおいては通常、ストーリーやキャラクターに没入してもらうために、描線やコマ割りは透明な(=意識されない)ものになるよう抑制されるが、他方でそれらをあえて前景化させる、いわゆる作家性が強いと言われるタイプのマンガ家/作品も少なからず存在する。

映像において描線やコマ割りに相当するものといえば、カメラワークやカッティングになるだろう。商業アニメにおいては通常、ストーリーやキャラクターに没入してもらうために、カメラワークやカッティング、あるいは描線は透明なものになるよう制御される。しかしマンガ同様に、それらをことさら意識させる、いわゆる作家性が強いと言われるタイプの演出家/作品も少なからず存在する。

もちろん、映画をはじめ集団制作における作家性の定義をめぐっては、歴史的に喧々諤々たる議論が交わされてきた。とはいえこの時評というジャーナリズムに徹することが宣言された場において、その核心にまで踏み込んでいく必要はないだろう。
いま確認しておくべきは、TVアニメにおいてカメラワークやカッティングの設計図となる画コンテ、こと監督が手がけるそれからは、実写映画において認められるものと同程度には、作家性が読み込めることになる、というところまでで十分である。事実、監督が第1話の画コンテ(および演出)を手がけるのは、その後の各話のコンテ・演出に示す具体的な指標としての意味合いがあるのだから、そこには少なくとも、監督のディレクションが反映された、シリーズを貫く演出コンセプトが表れ出ていることは否定しがたい。

現在放映中のTVアニメのなかでそれを強く感じさせる作品といえば、まず第一に『アイドルマスター シンデレラガールズ』(以下『デレマス』)の名が挙げられるだろう。京都アニメーション出身の監督・高雄統子は、後輩に当たる山田尚子らとともに当時から気鋭の女性演出家として注目を集めていたが、単独でコンテを務めた第1話(島村卯月と渋谷凛をプロジェクトへと誘うエピソード)、およびその対となる第7話(アイドル引退宣言をした本田未央が立ち直るエピソード)はやはり、その映像に強い志向を感じさせるものであった。

のちのエピソードでも繰り返し強調される時計や靴や階段といったシンデレラモチーフ、雨や犬や花に託される心情、シリアスを避けない物語構成(シリーズ構成も兼任)、あるいはこの2話に強く見られる、省力化とスタイルを両立させた真正面・真横のシンプルなアングルやフィックスの多用とそことの緩急、原作ソーシャルゲームの演出やプレイ感を想起させる同ポや描写の反復――などといった、映像から抽出できる特徴を問題にしたいわけではない。

ではなぜ「まず第一に『デレマス』の名が挙げられる」などと言えるのか。根拠はより具体的で厳密なものである。というのも、1エピソードあたりのショット数(慣例にならえばカット数)に大きな差異が認められるからだ。
それにどんな意味があるのか問う以前にとりあえず、客観的な事実として、高雄統子コンテ回である第1話のショット数は、他の話数と比較して有意に少ない。仮にライブシーンなどショット数を積みやすいエピソードを除外しても、第1話の約260ショット【※注1】という数は、たとえば第2話を構成する約320ショットの8割以下である。

映像作品のなかでもTVアニメはとくに、各作品の尺がおおよそ一定なため、定量的な比較分析を行いやすいメディアと言える。とはいえもちろん、作中で「シンデレラPR動画」を制作する第4話(キャラたちがビデオカメラで撮影した長回し映像が頻出することでショット数が極端に少なくなっている)のような特殊演出回を思い出すまでもなく、一般に予算やシリーズ内における緩急のバランスなどの要因によってもエピソードごとにバラつきが生まれるものであるし、そもそもショット数の多寡が視聴者にどのような効果を与えうるものなのかすらいまだ明確にはなっていない。
《高瀬司》
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