「君の名は。」新海誠監督インタビュー  40代の仕事としてスタートラインにある映画になった | アニメ!アニメ!

「君の名は。」新海誠監督インタビュー  40代の仕事としてスタートラインにある映画になった

新海誠監督の最新作『君の名は。』が8月26日に全国で公開となる。新海監督はどのような想いで本作を作ったのか。映画公開に向けた意気込みや制作の裏側を聞いてみた。

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新海誠監督の最新作『君の名は。』が8月26日に全国で公開となる。『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』など、美しく緻密な色彩と描写、切なく情緒的な物語を生み出してきた新海監督。
最新作では、全くつながりのない少年と少女が眠りをきっかけに入れ替わり、それぞれの生活を送るうち衝撃的な真実にたどり着く物語を描いた。時にコミカルに、時に涙が、そして最後には胸に爽やかな風が吹くような『君の名は。』を、新海監督はどのような想いで作ったのか。
新海監督に映画公開に向けた意気込みや制作の裏側を聞いてみた。
[取材・構成:川俣綾加]

『君の名は。』
2016年8月26日(金)全国公開
http://www.kiminona.com/

■「万が一キャリアが途絶しても、まぁいいかなって(笑)」

──新海監督の過去作と比較すると『君の名は。』はエンタテイメント色が強い作品だと思います。制作においてこれまでとの大きな違いは何でしょうか?

新海誠監督(以下、新海)
脚本段階に関していえば、プロデューサーの川村元気の存在が大きかったですね。東宝から川村さんを紹介したいと言われたのがきっかけでご一緒することになったのですが、彼のようなタイプのプロデューサーは初めて。とても刺激的な経験でした。

──川村さんのどんなところが新海監督にとって新鮮でしたか?

新海
色々なサジェスチョンをくれるんですよ。脚本を書き進める中で、川村さんが「こことここのピークが離れているけれど重ねたほうがいいと思う」であるとか、「三葉と瀧の入れ替わりは開始15分に収めないと退屈なんじゃない?」とか、構造的な部分で色々なサジェスチョンがありました。これにとても助けられたのが、これまでの映画づくりと最も異なる点だと思います。

──それがこの映画の飛び込みやすさにつながっているんですね。作品全体の感想としても、正統派のエンターテインメント性と新海監督らしさのバランスが絶妙でした。

新海
『君の名は。』は僕の名前を知らない人に届けたかった。まずはそれが第一。僕のことを知っている方もいるけれど、そうじゃない人のほうが圧倒的に多いわけで。この映画を通して僕の名を知って欲しいのと、こんなに新鮮な表現があること、アニメーションでドキドキわくわくする気持ちを味わって欲しいと思っています。


──これまでの作品のベスト盤ともいえるような、ど真ん中のアニメーションを作りたい。新海監督がこのタイミングでそう感じたのは、何かきっかけが?

新海
「今ならできる」みたいな感覚があったんですよ。『言の葉の庭』やZ会のCMを作って、ダ・ヴィンチで連載小説も書いて、ひとつひとつが物語を紡ぐ経験になりました。それによって少し余裕が生まれたなって。どこまでも切実な物語ではなく笑える要素も付加できるような、物語を使う手つきが備わってきたと思います。それで「今ならできる」「やりたい」と。

──『君の名は。』が完成して、始める前のその感覚はどう変化しましたか?

新海
ここまでできたら、この先に万が一キャリアが途絶しても、まぁいいかなって(笑)。いや、もちろんこの先も作り続けたいけれど、それくらいの気持ち。公開前なのでまだ不安もありますが、ハッキリとそう思います。

──この作品は新海監督の大きなポイントとなりそうですね。

新海
やれるだけのサービスを詰め込んだ作品をもう1本、2本作れたら、次に進むべき道が見えてくるような気はしています。今作がスタートラインのような気さえしていますね。「誰でも一生に1本小説が書ける」という言葉があるように、スタートラインの1本は誰にでもできる。じゃあその次はどうするか。“その次”を証明しなければいけない気もしているし、そうすることで自分は何が得意なのか改めて見える気もしています。自分の40代の仕事はそういうことなのかもしれません。

──男女の入れ替わりはどのように発想を得たのでしょうか。

新海
エンターテインメントとしての面白さをキープしたかったので、思春期のドキドキをわかりやすくするために入れ替わりにしました。


──男女の入れ替わりモノといえば過去にもそうした映画があります。どう差別化を図ろうと考えましたか。

新海
昭和の名作で入れ替わりモノ、ありますよね。あの頃の男女入れ替わりモノだとテーマがジェンダーになるんですよ。女の子の中身が男の子になっちゃって「あれ、今日はなんだか妙に男っぽくない?」をコミカルに描く。そしてどうすれば元に戻るかがゴールになるんです。でも2016年の現在でそれは共感を得られないのではないか。ジェンダーが入れ替わったから何? って考えるのが今なのだと思うんです。しかも先の展開を読まれてしまうわけで。だからこの作品は、スタートは入れ替わりだけれども、後半に進むにつれ風景や人間関係を通して全然違うテーマに移り変わっていく展開にしています。

──後半はシリアスなトーンが強いですが、それでも登場人物がどこか楽しげ、というか。

新海
やっぱりやりたいのはお互いに向かって手を伸ばしあう思春期だ、と最初から決めていたので始終、笑いからは手を離さないようにしています。シリアスなシーンでも胸を触っちゃうとか(笑)、感動的なシーンでも「バカ!変態!」って三葉が怒ったりとか。深刻になりすぎる高校生の男女はあまり成り立たないんじゃないかなと感じたので。それもあってシリアスなはずの作戦会議もボリボリお菓子を食べるし、とにかく彼らは若くて元気で、そういう状態が常なんですよね。

(次のページへ続く)
《川俣綾加》
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