「デジモンアドベンチャー 02 THE BEGINNING」田口智久監督を動かした光り輝くアイデア【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

「デジモンアドベンチャー 02 THE BEGINNING」田口智久監督を動かした光り輝くアイデア【インタビュー】

『デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING』より、田口智久監督のインタビューをお届け。『ラスエボ』公開後、「もう自分が『デジモン』に関わることはないだろう」と思っていた田口監督が、なぜ本作を世に送り出すことになったのか。制作の舞台裏をうかがった。

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「デジモンアドベンチャー 02 THE BEGINNING」田口智久監督
  • 「デジモンアドベンチャー 02 THE BEGINNING」田口智久監督
  • (C)本郷あきよし・東映アニメーション・東映
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10月27日より公開となる『デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING』。シリーズではまだ描かれてこなかった、世界で最初にデジモンとパートナー関係を結んだ“選ばれし子ども”を軸に、新たな物語が紡がれる。

本作の制作を担ったのは、『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』(以下、ラスエボ)でも監督を務めた田口智久監督。

『ラスエボ』公開後、「もう自分が『デジモン』に関わることはないだろう」と思っていた田口監督が、なぜ本作を世に送り出すことになったのか。制作の舞台裏をうかがった。

※本稿には映画のラストシーンに触れる内容が含まれているため、まだ見ていない方はご注意ください。

[取材:江崎大 文:ハシビロコ 撮影:吉野庫之介]



心を動かした「光り輝くアイデア」


――本作の企画はいつ始動しましたか?

企画自体は2020年の秋頃から始まっていました。『ラスエボ』が公開されて「やったー! 終わったー!」とひと安心していたら、数ヶ月後に本作のプロデューサーの木下(陽介)さんに居酒屋に呼ばれて(笑)。「光り輝くアイデアを思いついたので、新しい『デジモン』を作ろうと思う」という話をされました。『ラスエボ』で話がきれいに終わった実感があって、「これでデジモンシリーズも完結だろう」と思っていたので驚きましたね。

――その「光り輝くアイデア」とは?

デジモンをパートナーにした“最初の子ども”です。きっと木下さんにとっては、まだ輪郭も見えていない強い光のような存在だったのだと思います。



――そもそも『ラスエボ』の時点では、本作の制作は決まっていなかったのですね。

まったく決まっていなかったと思います。「やれたらいいね」くらいの話はあったかもしれませんが、自分の中では「これ以上描くことがあるのだろうか」という気持ちが強くて。何を作っても『ラスエボ』の焼き直しにしかならないのではないか、と思っていました。

――ファンの間では「いつか『02』の最終回につながる話が見たい」という要望も見られました。

そうした期待があることは、『ラスエボ』公開後のみなさんの感想から知りました。でも、そこを作ってもおもしろくない気はします。「すでに決まっている未来」につじつまを合わせるような作品になりますし、たぶん『ラスエボ』とは相反することをしなければいけない。だから少なくとも自分が『デジモン』に携わるのは『ラスエボ』までだと思っていました。続きはほかの誰かが作ればいい、という気持ちがあったんです。

――本作の監督を引き受けようと決心した理由を教えてください。

木下さんが出してくださったアイデアが、『ラスエボ』の明確な続きではなかったからです。それに『デジモン』の力量は毎シリーズでリセットされている感じがあるので、そうした点も含めてこれまでのシリーズの続きだと強く意識しなくてもいいのではないか、という話もうかがいました。

あくまでも自由に描いていい。そういう考え方でいいのなら何かやりようがあるかもしれないと思いましたし、『デジモンアドベンチャー02』(以下、02)のわちゃわちゃした楽しい雰囲気で作るのもいいかな、と感じて監督を引き受けました。

――木下さんと意気投合できたことが決め手のひとつだったのですね。

そういえば制作中、勝手に「木下さんとわかり合えた!」と感じた出来事があって。本作のロゴの「0」の中には数学記号の「ルート」のようなアクセントが入っています。私はそれが本作の冒頭でも示唆している「ルート02」(『02』の物語)と同じ意味合いだと感じて、「木下さん、僕の気持ちをよくわかってるな!通じ合っている!」と感動しました。でもそれを木下さんに言ったら「いや、これは単なるデザインです」と言われて(笑)。

――わかり合っていると思っていたら、そうではなかった(笑)。

デザイン上のアクセントで、単なる偶然でした。

『デジモン』の歴史を改編しない話に




――本作のシナリオはどう決めていきましたか。

実はシナリオは一旦仕切り直しをしていて、最初に考えていたものよりもシンプルな話になりました。

当初はタイムスリップサスペンスを作ろうとしていて、何らかの原因で大輔たちが過去に戻り、最初の“選ばれし子ども”に出会う物語だったんです。でもタイムパラドックスなどを利用したSFとしての作品にしようとすると、整合性を持たせるのが難しくて。『デジモン』にはこれまで描いてきた年史がきちんと存在するので、押さえなければいけない情報が山ほどあります。矛盾がないように考えているうちに身動きが取れなくなり、物語をおもしろくすることに注力できなくなってしまいました。だからそのアイデアは一度白紙に戻し、仕切り直しをしたんです。

そのとき意識したのが、できるだけシンプルな話にすること。子どものルイくんは見せないといけないのでタイムスリップ的な描き方はするにしろ、不思議な力で過去に何があったのかを知る程度にしました。しかも見た景色が過去なのかどうなのかもわからない、あえてあやふやな演出にして。さらにルイというひとりの青年の物語をサポートする役目として、大輔たちを据えました。

――本作の内容を決めるうえで、大切にしたことを教えてください。

今まで『デジモン』で見せてきた歴史を改編しないことです。あるポイントに干渉して「真実はこうでした」と、過去のシリーズを否定するようなことはしない。今まであったことはきちんと組み込んで、まだ描かれていない部分に注力しました。

ルイは最初にデジモンとパートナー関係を結んだ子ども、といういちばん大きなファクターでありながら、これまで誰も触れなかった存在です。しかもその後のデジモン史のどこにも影響していないので、設定を作っていくときの自由度も高いと思いました。本当に「光り輝くアイデア」だったと実感しています。

――新キャラクターという意味では、『ラスエボ』のメノアの設定を作ったときとの共通点もありそうです。

『ラスエボ』のメノアとエオスモンと、本作のルイとウッコモンは、芯の部分で共通点があると感じています。みんな悪意はなくて、自分が思った正義を貫いた結果として事件が起きました。ボタンをかけちがえてしまった結果でしかないんです。

TVシリーズを思わせる、こだわりの進化バンク




――本作では進化バンクへの反響も大きくなりそうです。なぜTVシリーズ当時の進化バンクを入れることにこだわったのでしょうか。

進化バンクは本作を制作し始めたときから明確に思っていた、やりたいことのひとつです。

実は『ラスエボ』でも進化バンクはやりたいと思っていて、コンテには描いていたんです。画面分割してアグモンとガブモンが進化するシーンなどを省かずにやろうとしていましたが、尺の都合上カットするしかなくて……。結局冒頭でのアグモンの進化しかできませんでした。

でも進化シーンはやっぱり特別で。自分も子どもの頃に感じていたように、進化バンクがあると「デジモンを見ている実感」が高まると思うんです。本作では進化シーンを存分に見せられるだけの尺があったので、できるだけ進化バンクを入れようとこだわりました。

――映像はきれいになりましたが、TVシリーズを思わせる演出になっています。できるだけ当時に合わせようと思ったのでしょうか。

合わせました。逆にあれ以外見たくない(笑)。別の進化バンクだと「なんか違うな」と思ってしまいそうです。

未来へのバトンをつなぐ




――本作のあとのストーリーが描かれる可能性はあるのでしょうか。

個人的には「これ以上描いてもおもしろくないのでは」と思っているので、先のことは明言できません。答えがある未来に向かっての話を作っても映画にならない気がして。

未来への道筋が不透明で、でも「いつか『02』の最終回に至るんだろうな」という予感だけがある状態が、ファンにとってはいちばんおいしいと思います。そんなファンを納得させるストーリーを作るには、並大抵ではない力が必要です。だってデジモンがいちばん幸せだった状態は、TVシリーズで終わっているじゃないですか。だから未来までの間を埋めるような話を作るべきではないのでは、と真剣に考えていました。

――想像の余地がある終わり方だっただけに、ファンの考えた未来が正解や間違いだったと明確に示したくはない、と思っていたのですね。

そうです。間で起きた紆余曲折はどう作っても、ファン全員の想像とはシンクロできないと思います。それでも「これだったら楽しんでもらえそうだな」、と思ったポイントを『ラスエボ』と本作で抽出しました。だから今後の物語を描くのは、少なくとも自分には難しいです。もしやるとすれば、ほかの人がうまくやってくれると思います(笑)。

――想像をみなさんに返して、次のクリエイターへのバトンをつないだような感じですね。

そんなイメージです。これからの『デジモン』シリーズの足かせを外すという意味でも、本作ではデジヴァイスが消えるというラストを提示しました。実際にTVシリーズ『02』の最終回でもみんなはデジヴァイスを持っていないので、つじつまを合わせる意図もあります。

――最後に本作を応援しているファンへのメッセージをお願いします。

前作から大変お待たせしました。今回の作品が3年ぶりの『デジモン』新作です。スタッフの力を結集しているので細かいディテールにもぜひ注目してみてください。

デジモンはどんな存在なのか、という問いにも大きく踏み込んで描いたつもりです。昔をなつかしみつつもまた新しいデジモン像に触れてほしいと思っているので、ぜひその内容を劇場で確かめてみてください。鑑賞後はキービジュアルの「オレたちの、未来へ!」という言葉にちなんで、この作品が提示している未来を考察してもらえると嬉しいです。

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『デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING』
10月27日(金)公開

【ストーリー】
お台場とデジタルワールドを行き来した冒険の日々から10年が過ぎた2012年。
それぞれの道を歩き出しつつも、本宮大輔ら選ばれし子どもたちとパートナーデジモンは変わらぬ絆で結ばれていた。そんなある日、突如巨大なデジタマが東京タワー上空に出現し、世界中へメッセージが発信される。「みんなにともだちを。世界中すべてのひとにデジモンを」世界がその動向を注目する中、大輔たちの前に「世界ではじめてデジモンとパートナー関係を結んだ人間だ」と話す謎に包まれた青年・大和田ルイが現れる。選ばれし子ども誕生の裏側には、幼いルイのたった一つの願いが隠されていた…
過去そして現在、全てが繋がった時、デジモン史上最大の危機が訪れる。果たして大輔たち02チームが選んだ道とは?
今再び、大人になった選ばれし子どもたちが出動する!

【キャスト】
片山福十郎(本宮大輔役) 野田順子(ブイモン役)
ランズベリー・アーサー(一乗寺賢役) 高橋直純(ワームモン役)
朝井彩加(井ノ上京役) 遠近孝一(ホークモン役)
山谷祥生(火田伊織役) 浦和めぐみ(アルマジモン役)
榎木淳弥(高石タケル役) 松本美和(パタモン役)
M・A・O(八神ヒカリ役) 徳光由禾(テイルモン役)
緒方恵美(大和田ルイ役) 釘宮理恵(ウッコモン役)

【スタッフ】
原案:本郷あきよし
監督:田口智久
脚本:大和屋 暁 
キャラクターデザイン:中鶴勝祥
デジモンキャラクターデザイン:渡辺けんじ
アニメーションキャラクターデザイン:立川聖治
音楽:富貴晴美
スーパーバイザー:関 弘美
アニメーション制作:ゆめ太カンパニー  
製作:東映アニメーション・東映

(C)本郷あきよし・東映アニメーション・東映
《ハシビロコ》
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