ミュージカル「黒執事」-地に燃えるリコリス 2015-、原作を裏切らないエンタメ性のある演出 | アニメ!アニメ!

ミュージカル「黒執事」-地に燃えるリコリス 2015-、原作を裏切らないエンタメ性のある演出

連載・コラム

「ミュージカル「黒執事」-地に燃えるリコリス 2015-」(C)2015 枢やな/ミュージカル黒執事プロジェクト撮影:岸隆子(Studio Elenish)
  • 「ミュージカル「黒執事」-地に燃えるリコリス 2015-」(C)2015 枢やな/ミュージカル黒執事プロジェクト撮影:岸隆子(Studio Elenish)
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  • 「ミュージカル「黒執事」-地に燃えるリコリス 2015-」(C)2015 枢やな/ミュージカル黒執事プロジェクト撮影:岸隆子(Studio Elenish)
  • 「ミュージカル「黒執事」-地に燃えるリコリス 2015-」(C)2015 枢やな/ミュージカル黒執事プロジェクト撮影:岸隆子(Studio Elenish)
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高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義
連載第155回

■ セバスチャンは初役の古川雄大、実力派が集結

大ヒットミュージカル『黒執事』、原作 枢やな( 月刊「G ファンタジー」スクウェア・エニックス刊)、映画版もあり、もはや説明不要なくらいの作品だ。単行本も現在21巻まで刊行されている。
ミュージカル版は昨年、人気エピソードである切り裂きジャックをモチーフにしたストーリーであったが、今回もそこのところは変わらない。

主人公のセバスチャンを演じるは、今回から古川雄大に。ミュージカル『テニスの王子様』の4代目不二周助役で注目され、その後、着実にキャリアアップ、世界的な大作である『エリザベート』で皇太子・ルドルフ役を好演、今年もミュージカル『SAMURAI7』や『タイタニック』等の話題作に出演、2016年の春には『1789-バスティーユの恋人たち-』のロベスピエール役としてキャスティングされている。まさに旬の俳優だ。
セバスチャンの”ご主人様”は昨年に引き続き、福崎那由他。その他、植原卓也(グレル・サトクリフ)、 矢田悠祐(チャールズ・グレイ)、 広瀬友祐(チャールズ・フィップス)、 輝馬 (ウィリアム・T・スピアーズ)、 佐々木喜英(ドルイット子爵)、鷲尾昇(バルドロイ)、 河原田巧也(フィニアン)、 坂田しおり(メイリン)、 高木俊(フレッド・アーバーライン)、 寺山武志(シャープ・ハンクス)、 和泉宗兵(葬儀屋)、 荒木宏文(ラウ)、 AKANE LIV(マダム・レッド) と演技に芝居に安定の布陣。国内公演の後、年内に海外ツアー、中国の上海、北京、深センと回る予定だ。

■ 19世紀末、切り裂きジャックがロンドンを震撼、意外で哀しい顛末

19世紀末のイギリスを彷彿とさせるセットで、轟き音と共に幕開き。ポツンと中央に鉄格子。その中に1人の少年、シエルだ。孤独な少年は悪魔と契約を結ぶ。原作を知っているファンなら、よく知っている”物語の始まり”。
悪魔の力は絶大、だから契約する。「力が欲しい」と歌うシエルの心は何かを決心する。悪魔、この物語の中心、セバスチャン、主人に絶対服従、どんな無理でも叶えてくれる存在だ。不穏な空気感と何かが始まる予感を感じさせるオープニングだ。

そこから一転してシエルの屋敷。ここの使用人は人は良いが、かなり抜けてる3人組。料理が作れない料理人のバルトロイ、庭を台無しにする庭師のフィニアン、失敗ばかりの女中のメイリンだ。何故、解雇にならないのか?という野暮な疑問は脇に置いて、この物語では底抜けに明るい場面担当の3人。そのおバカぶりでセバスチャンのイライラはMAXに。セバスチャンのクールな毒舌と能天気な3人のコントラストが楽しい。楽曲も明るく、ともすれば暗くなりがちの物語をいい感じで抑えてくれる。メイリン演じる坂田しおりは今回初役であるが、コメディエンヌぶりはミュージカル『美少女戦士セーラームーン』で実証済。そこへチャールズ・グレイとチャールズ・フィップスが女王陛下のミッションを携えて屋敷にやってくる。「ロンドンを震撼させている殺人事件を解決せよ」との命令だった。

物語は昨年と同じではあるが、楽曲も新しくなり、全体的にわかりやすい構成になっている。今回初役のセバスチャン演じる古川雄大、歌、アクションに安定感がある。クールな”セバスチャン節”もかっこよくキマっており、ファンから観ても納得出来る出来映え。
対するシエル演じる福崎那由他、2度目の挑戦、難しい役どころ、子供ながらに重大任務を背負う運命、悪魔と契約する決意、ラスト近くの自分の運命を改めて受け入れ、納得するところはやや難易度の高い楽曲で表現、見事に歌いきった。

初演からグレル・サトクリフを演じている植原卓也、さらなる”怪演”に磨きがかかり、2幕は、もう大笑いだ。オカマ言葉を操り、もはや観客の視線を独り占め状態、ここはヤンヤの喝采の場面だ(拍手も要求されるので、ここは是非、ご協力を)。セバスチャンに「気持ち悪い」と言われて、ますますテンションが上がり、もはや”自由”だ。
チャールズ・グレイとチャールズ・フィップスの凸凹コンビ、美意識の塊のドルイット子爵、謎の中国人・ラウ等、脇のキャラクターもはっきりとした輪郭でわかりやすい。役に立たないロンドン警視庁コンビのフレッド・アーバーライン警部とシャープ・ハンクス刑事は、物語には基本的に絡まない。幕前での漫才のようなやり取りで観客を笑わせる。
最後の方でちょっとしか出演しないが、死神派遣協会のウィリアム・T・スピアーズのいかにも堅物な風貌と物腰、真面目にやればやる程可笑しみがこみ上げる。
マダム・レッド演じるAKANE LIVは昨年よりさらに歌唱に磨きがかかり、圧巻。2幕の自らの生い立ちとコンプレッックスを歌う楽曲はかなり難しいが、しっかりと歌い上げ、ここは感涙場面だ。マダム・レッドは自分の髪が赤いことにコンプレックスを感じ、姉に恋人を取られたり、結婚するも夫には死に別れ、自分の人生に対してネガティブな意識を持っている。その負の感情が死神を”呼び寄せる”。人間は弱いのだということ、当たり前ではあるが、ちょっと考えさせられる部分だ。

エンターテイメント性のある演出、担当は毛利亘宏、脚本は井関佳子。楽曲は全部で14あり、変化に富んだ丁寧な曲作り、ライトモチーフも効果的だ。ファンタジーではあるが、人間の弱さ、脆さ、それでも生きていく強さを感じる。アンサンブルもレベルが高く、作品世界を盛り上げる。

サブタイトルにあるリコリスは彼岸花のこと。花言葉は”悲しい思い出”等。マダム・レッドの寂しい思いが詰まった花言葉だ。一応の決着はあるが、物語はまだまだ続く。
ハッピーエンドには決してならないが、かっこいいとか綺麗だけでない、人間の業を垣間みるような、そういった物語もまた読者が惹かれる理由のひとつなのだろう。また、セバスチャンとシエルの関係も独特で、2人のやり取りはどこか優しく、舞台版でもそういった空気を感じる。人気シリーズ、末永く続いて欲しい。

「ミュージカル「黒執事」-地に燃えるリコリス 2015-」
大阪公演: 2015年11月7日(土)~10日(火) 梅田芸術劇場メインホール
宮城公演: 2015年11月14日(土)・15日(日) 名取市文化会館 大ホール
東京公演: 2015年11月21日(土)~29日(日) 赤坂ACTシアター
福岡公演: 2015年12月4日(金)~6日(日) キャナルシティ劇場

「ミュージカル「黒執事」-地に燃えるリコリス 2015-」
(C)2015 枢やな/ミュージカル黒執事プロジェクト
撮影:岸隆子(Studio Elenish)
《高浩美》
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