高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第2回 3DCG/2D手描きアニメにおけるビジュアルを巡る冒険 | アニメ!アニメ!

高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第2回 3DCG/2D手描きアニメにおけるビジュアルを巡る冒険

連載・コラム

第2回 3DCG/2D手描きアニメにおけるビジュアルを巡る冒険
――「GOD EATER」「終物語」「落第騎士の英雄譚」「緋弾のアリアAA」

■ 高瀬司(たかせ・つかさ)
サブカルチャー批評ZINE『Merca』主宰。商業媒体では『ユリイカ』(青土社)や各種アニメ・マンガ媒体への寄稿、「Drawing with Wacom」(Wacom)などイラストレーター、デジタルアーティストによるLive Painting企画でのインタビュー・動画ディレクションなど。
Merca公式ブログ:http://animerca.blog117.fc2.com/

マンガ研究者の夏目房之介は、マンガ家の描線の「模写」を通じて、その作者の意識、ひいてはそう描かざるをえなかった作家の思想を読み取るという、独自のスタイルの批評を展開した。作家の身体的運動を追体験することで、その線を描いていたときの意識の運動までトレースしようとしたわけだ。

この手法はアニメの制作工程とも通じるところがある。実際、ここ『アニメ!アニメ!』に掲載された、吉田健一と脇顯太朗へのロングインタビュー「『ガンダム Gのレコンギスタ』における「線」を巡る冒険」(http://animeanime.jp/article/2015/09/14/24899.html)で強調されるのは、前工程の絵を読むこと――たとえば原画担当者が線に込めた狙いを、それをトレースする動画担当者が解釈すること――の大切さであった。

状況をおさらいしよう。現代においてアニメの線は、ミリペンで描いたような均一で細い線がスタンダードなものになっている。それがシステム上、合理的だからだ。主な理由に、動画は海外への大規模な外注が前提とされるためタッチのクオリティコントロールがむずかしいこと、仕上げ(デジタルペイント)において塗りつぶしのために閉じた均一な線へと変換(『RETAS STUDIO』などによる二値化)されることが挙げられるだろう。
つまりここでは、描線の個性という贅沢を味わうよりも、「塗り絵の枠」という役割、マスプロダクションにおける効率性が優先されている。

それに対して、富野由悠季監督作『ガンダム Gのレコンギスタ』の秀でたところは、合理性を大きく損なうことのないまま、線のタッチを残す制作スタイルの可能性を切り開いた点にある。これまでも『ホーホケキョ となりの山田くん 』に端を発する小西賢一作画監督作(『ドラえもん のび太の恐竜2006』『鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星』『かぐや姫の物語』)をひとつの極北に、程度の差こそあれ、描線の味で見せるアニメ作品は定期的に生み出されつづけてきた。
そのなかでも『G-レコ』の可能性の中心は、作品ごとに特殊な制作スタイルを組むことなく=従来のフローに原則従いながらも、コンポジット(撮影)のフェイズにおける関与によって、動画のあがりをタッチのある線へと変換している点に見出されるだろう。これはまさに「線をめぐる冒険」と呼ぶにふさわしい挑戦である。

しかし、この記事タイトルからは、こぼれ落ちてしまっている情報がある。というのも、インタビューのなかで言及されているうちに限っても、コンポジットによって試みられている冒険は、線だけはなく、テクスチャの油彩処理という色彩(質感)への効果にも及んでいるからだ。
《高瀬司》
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