高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第2回 3DCG/2D手描きアニメにおけるビジュアルを巡る冒険 3ページ目 | アニメ!アニメ!

高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第2回 3DCG/2D手描きアニメにおけるビジュアルを巡る冒険

高瀬司さんの新連載。様々なアニメを取り上げて、バッサバッサ論評します。毎月第3金曜日連載予定。

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■ 2015年秋クールアニメ第1話レビュー

最後に今期(2015年秋クール)新作アニメを、ビジュアルという面から概観しよう。
全放映作品を網羅できていないため範囲は限定的だが、『ルパン三世』の新シリーズや『おそ松さん』など、名作の現代風リバイバル作品では線のタッチを活かす試みが際立っている。
それと同時に、シャフト出身の大沼心監督によるライトノベル原作アニメ『落第騎士の英雄譚』からは、主線の色合いもそうだが、上睫毛の目尻と目頭にグラデーションで色が乗るというイラストレーションの表現を導入していたりと、黒ストッキングの質感へのフェティッシュなこだわりも含め、最近の作品で言えば亀井幹太監督の『冴えない彼女の育てかた』を彷彿とさせるヴィジュアルの模索を見出だせるだろう。
続編ものを観れば、第1期、劇場版につづく第2期『K RETURN OF KINGS』では大胆なフィルタワークや、新房昭之(総)監督作『終物語』では、これまで圧倒的な物量(作品数・発表ペース)による刷り込みでアニメファンに周知させてきた、一般的なアニメからは大きく逸脱した新房=シャフト的ビジュアルのバリエーションが確認できる。また後者の血脈は、シャフト作品を多数手がけてきた川畑喬監督作『緋弾のアリアAA』にも色濃く受け継がれているだろう。

■ 2015年夏クール『のんのんびより りぴーと』補論

最後の最後に、前回の記事に関するおまけを。連載第1回では、アニメのショットをめぐる諸問題の洗い出しを試みた。個々の議題は順に何らかのかたちで論じていくつもりだが、ここでは補論として、執筆時には未放映であった『のんのんびより りぴーと』最終話についてだけ一言触れておきたい。
この第12話「一年がたった」は、第1期がそうであったように、第1話・第4話につづく川面真也監督コンテ回であり、EDが1分30秒より長くとってあったとはいえ、わずか約190ショットで構成された完全オリジナルエピソードであった。
第1期第12話の「また春が来た」と対になるように、各話および第1期のモチーフをたどり直しつつ、やはり目につくのは、縦の構図と横の構図、および右奥・正面・左手間の3箇所から鳴る音響が交錯する、約3分50秒(!)ものあいだ持続するフィックスショットの長回しだろうが、同時にアバンタイトルにおける縦の構図と横の構図の切り替え、宮内家でのひかげとれんげ・一穂との会話シーンにおける音響の重なりなどが、あの驚異的なショットの予備運動になっている点も見逃せないだろう。本作には、まったりとした自然な空気感を味わわせるための、技巧と作為が凝縮されている。
《高瀬司》
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