劇的3時間SHOW 石川光久プロデューサーが語る | アニメ!アニメ!

劇的3時間SHOW 石川光久プロデューサーが語る

 アニメプロデューサー石川光久氏は、アニメ業界のなかでもとりわけ個性的な人物である。設立から20年でアニメ制作会社の有数の存在になったプロダクション I.Gの社長であり、一方で押井守監督に代表される大作アニメのプロデュースを自ら行う。
 また石川氏とプロダ

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 アニメプロデューサー石川光久氏は、アニメ業界のなかでもとりわけ個性的な人物である。設立から20年でアニメ制作会社の有数の存在になったプロダクション I.Gの社長であり、一方で押井守監督に代表される大作アニメのプロデュースを自ら行う。
 また石川氏とプロダクション I.Gからは、国内だけではなく国境を越えたビッグディールが、しばしば生まれる。映画『イノセンス』でのドリームワークスとの提携、テレビアニメ『IGPX』でのカートゥーンネットワークとの共同製作、日本の大手メディアグループでもなかなか難しいビジネスを次々にやり遂げる。

 急成長企業の社長、やり手のプロデューサーというと、何だかとても貪欲な人物を想像しがちだ。しかし、メディアに現れる石川氏はいったって素直な発言で、ざっくばらんな印象を与える。
 こうした印象をそのまま信じていいのか、それともやはりビッグビジネスにつきものの巧みな駆け引きを使いこなすのか、成功するアニメプロデューサーを考える時に、石川氏は常に興味深い存在だ。

 その石川光久氏が、3時間にわたり自分自身をプロデュースするイベントが、10月14日東京青山のスパイラルホールで行われた。このイベントはJAPAN国際コンテンツフェスティバルのオリジナル企画「劇的3時間SHOW」である。
 10人のプロフェッショナルが若者に自らを語るもので、この一人として登場である。イベントの目的は若い世代に成功体験を語ることで、同じ道を目指す若者のエキサイティングな場を提供することだ。アニメプロデューサーの登場は、昨年の鈴木敏夫氏に次いで2人目となる。

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 イベントは3時間の途中に15分の休憩を挟んだ2部構成となった。第1部は石川氏のみがステージに立ち、様々な話を語るもの。そして、第2部は現在『ケータイ捜査官7』で共に仕事をしている映画監督三池崇史氏を招いたトークショーである。
 第1部と第2部でイメージは大きく変わったが、一貫して石川氏の個性が貫ぬかれていた。プロダクション I.Gの最新映像などの紹介などはあるが、派手な演出はなく、まさにじっくり話すものとなっていた。

 第1部の始まりで、石川氏がアニメ監督になりたい人、プロデューサーになりたい人に手をあげさせた。そして、次に阪神ファンに手をあげさせると、その中の一人をステージに引き上げ自己紹介をさせる。
 監督やプロデューサーになりたい人でなく、阪神ファンを指名したのは、石川氏のメッセージが含まれている。アニメ監督もアニメプロデューサーも、実はなりたい人の思いが必ずしも実現につながるのではない、むしろ、偶然なる人が多いのではと言うわけである。これは石川氏自身がしばしば述べる「自分はアニメ業界に迷い込んだ人」という発言とも重なる。

 さらに、その後も予告なしに会場の来場者を次々にステージに上げる。これも人には突然チャンスが訪れる、チャンスが巡って来た時にどういった行動を取れるのか?といった石川氏の考えを反映しているようだ。
 そして石川氏は、自分はアニメプロデューサーにも、起業家にもなりたいと思ったことは一回もなかった、周りの人に喜んでもらいたいと思っていたことが今につながっていると語る。目標は他の人から与えられているものだという。小さなことの積み重ねが、現在の成功につながっているというわけだ。

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 第2部には、三池崇史氏が登場。冒頭で『ケータイ捜査官7』のパイロット版という貴重な映像が放映された。現在放映中のヤングアダルトに向けられたクールな話でなく、もっと子供っぽい映像が楽しい。
 この映像をきっかけに、話は三池氏の創作の秘密や制作現場での様子に移る。結局、自分自身を語るはずの石川氏が、三池崇史氏を専ら紹介するかたちとなった。三池氏からは、「このイベントってそいうものでしたっけ?」と声が上がるほどだ。

 しかし、実際は、自分を語る場所で敢えて三池氏に語らせるその姿自体が、石川氏自身を語っているように感じた。
 アニメ・映像に限らず、何かの作品を作り上げることは、結局クリエイターの存在なしにありえない。 時には華やかな存在に見え、そしてクリエイターに厳しい決断を迫ることがあるプロデューサーも、一面では才能のあるクリエイターをサポートする存在にしか過ぎない。

 だから第2部の石川氏と三池氏の関係は、石川氏の考えるプロデューサーとクリエイターの関係が垣間見える。表現を生み出すクリエイターと表現のための場を作り出し、それをクリエイターに提供するプロデューサーという関係である。そして、その表現の場での最終的な運営や決断は、プロデューサーが常に持っている。
 こうした演出を石川氏が必ずしも意図的にやっていたとは思えない。むしろ、自然体に行動することで、常に正しい方向に動いていく、これこそが石川氏の成功の原点なのかもしれない。

劇的3時間SHOW 公式サイト /http://www.geki3.jp/02ishikawa.html
《animeanime》
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