押井守監督の『スカイクロラ』が、12月5日からロサンゼルス地区の映画館Los Feliz 3で先行公開されている。Los Feliz 3は、ハリウッドの東に位置する小規模な劇場である。 『スカイクロラ』の北米配給は、既にソニー・ピクチャーズが行うと発表している。公開時期や規模についてはこれまで明らかにらかにされていない。 事前の宣伝を全く行うことなく始まった今回の先行公開は、かなり異例である。というのも今回は、『スカイクロラ』がアカデミー賞の長編アニメーション部門のノミネート資格を得るための緊急公開とみられるからだ。 『スカイクロラ』は11月10日に、映画芸術科学アカデミーが発表したノミネート選考対象作品に、選ばれている。しかし、正式に選考対象作品となるためにはリストアップに加えて、2008年12月末までにロサンゼルス地区での商業的な劇場公開が必要となる。今回の先行公開は、その実績作りとみられる。 日本の劇場アニメがこうしたイレギュラーな公開をするのは先例がある。2006年にやはりアカデミー賞長編アニメーション部門の選考対象となった『パプリカ』も、実際の劇場公開は2007年5月に行われている。2006年12月に小規模な劇場公開をロサンゼルス地区で行ったためである。 公開前に映画賞の対象とするのは奇妙に映るが、現地で必ずしも高くない作品の知名度を賞レースをてこに上げる目的とみられる。パプリカの配給も『スカイクロラ』と同様ソニー・ピクチャーズであったことを考えれば、なおさらマーケティング戦略は重なる。 では『スカイクロラ』がアカデミー賞の選考対象となり、そこからノミネートされる可能性はどの位だろうか。実際には、かなりハードルは高いと見られる。 ノミネート作品の数は例年3作品か5作品かで騒がれることが多いが、今年は既に3作品に決まっている。これはハリウッドメジャーのフル3DCGアニメーションブームが沈静化し、大作アニメーションの製作本数が減った結果、ノミネート作品数を定める選考対象作品が減ったためである。 この3作品の中に、既にナショナル・ボード・オブ・レビューのアニメーション賞を受賞した『WALL・E/ウォーリー』が入ってくる可能性は極めて高い。先に発表されたアニー賞のノミネートでは、『カンフー・パンダ』が17部門ノミネートで圧勝の勢いとなっているが、北米のアニメーション関連のメディアではむしろ『ウォーリー』のほうが評価は高い。 あと2作品のひとつが『カンフー・パンダ』になる可能性も高いだろう。しかし、残り1作品については、圧倒的に有力な作品は見当たらない。 大作という点ではディズニーの『Bolt』やドリームワークスの『マダガスカル2』もあるが、両社にはそれぞれ『ウォ-リー』、『カンフー・パンダ』がある。3作品を全てハリウッド製の3Dアニメーションにするのも芸がない。 そこで作品の色合いが違い、監督押井守の知名度の高い『スカイクロラ』にも可能性が出てくる。しかし一方で、米国で『スカイクロラ』を観たことのある人の数が圧倒的に少ないのは明らかに不利となっている。作品を知らなければ評価しようがない。 むしろ、カンヌ国際映画祭をはじめ各国の映画祭で評価の高い『バシールとワルツを』のほうが有力かもしれない。ドキュメンタリーアニメーションというあまり知られない方法で、レバノンにおける戦争をテーマにしたこの映画がハリウッドの映画人の関心を掻き立てそうだからだ。1月22日に行われるアカデミー賞のノミネート作品発表で、こうした結果も明らかになる。米国アカデミー賞 公式サイ /http://www.oscar.com/
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