また新海監督自らが書いた小説版や、脚本協力として参加した加納新太氏による本編から削られた要素を再構成した外伝小説『君の名は。 Another Side: Earthbound』の存在も外すことは出来ない。新海監督の小説版は映画の内容をなぞったものであるものの、瀧と三葉の2人の視点からを描いた作品だ。彼らがお互いの身体から見て感じた東京と糸守などが事細かく書かれているので、映画と小説の両面からも楽しめる。
外伝小説『君の名は。 Another Side: Earthbound』では、三葉に入った瀧からの視点と、オカルト雑誌「ムー」の読者で土建屋の息子であるテッシーこと勅使河原克彦、三葉の妹である四葉、そして三葉の父であり町長の宮水俊樹の4人から見た糸守町とその周辺が書かれている。特に面白いのが、テッシーの話となる第2話の「スクラップ・アンド・ビルド」と、宮水俊樹の過去を描く第4話の「あなたが結んだもの」の2編。テッシーの話は、何故彼が三葉に対して協力的になった事を描いている他にも、彼自身の糸守町に対する思いや現状が書かれており、何故三葉が町の外へと出たがっていた理由も知れるからというのもある。宮水俊樹の話では、三葉の母となる二葉ととしきの出会いの他にも、何故彼が神官から町長へとなった経緯が書かれているため、本編を鑑賞済みの読者にも勧めたい1冊だ。もちろん各登場人物の背景を知ってからの映画本編を観るのも、より感情移入できるので味わい深い。