一番黒いのは俺です 『M3~ソノ黒キ鋼~』:佐藤順一監督インタビュー前編

インタビュー

2014年3月下旬、突然告知されたビッグプロジェクト。監督・佐藤順一×シリーズ構成・岡田麿里×メカデザイン・河森正治によるテレビシリーズ『M3 ~ソノ黒キ鋼~』だ。4月の放送開始から半年が経ち、いよいよ少年たちの物語もクライマックスを迎えようとしている。
その地域に足を踏み入れると精神を冒されてしまう『無明領域』や、その精神汚染からパイロットを護る『LIM』という存在などの、序盤で語られなかった秘密が続々と明らかになり、物語は急速に駆け上がっていく。
この度、最終話目前に、佐藤順一監督にインタビューを行った。本作手がけるようになったきっかけから、気になるあの質問まで、じっくりと語っていただいた。
[取材・構成:細川洋平]

『M3~ソノ黒キ鋼~』
/http://m3-project.com/

■ 最後まで岡田麿里の作った世界に右往左往した

―まずは企画の成り立ちをおうかがい出来ますか?

佐藤順一監督(以下、佐藤) 
出版社のマッグガーデンさんとサテライトで、マンガから原作を立ち上げてアニメをやろう、という企画があったんです。その時から、僕が原作のロボットモノというのは決まっていて、出したのが『Motal Metal 屍鋼(シバガネ)』(マッグガーデン刊)というマンガですね。そこがスタートラインです。
アニメまでは少し時間も経ってしまったし、委員会も新しく決まったので、じゃあもう一度一から作り直しましょう、ということになりました。

―シリーズ構成を岡田麿里さんに、というのはいつのタイミングで決まったのでしょうか。

佐藤
実はマンガの時から若干協力してもらっていたので自然な流れでした。それに、プロデューサーの方も「岡田と佐藤でガチンコでやってほしい!」ということだったので(笑)。
岡田さんには『ARIA』の時に各話ライターでやっていただきましたが、立ち上げから一緒に、というのはなかったので、やるなら彼女しかないとは思ってました。あとは、恐いもの見たさで(笑)。

―岡田さんに期待していたものはどういったものだったのでしょうか。

佐藤
『ARIA』の時はきっちりオーダーに応える方、という印象でした。ただ、本人の持ち味を出せる作品をやったらきっとおもしろいんじゃないかとは思っていたので、今回はガンガン出してもらおうと。僕も、岡田さんからでてきたものを咀嚼、解釈する作り方はおもしろいチャレンジだと思ったんです。

―以前、アニメ!アニメ!で岡田さんにインタビューをした時は、「結局サトジュンの手のひらで転がされている」というようなことをおっしゃっておりましたが。

佐藤 
読みました(笑)。いや、こっち目線では逆ですね。最後まで岡田麿里の作り上げた世界の中で右往左往した、という印象です。
僕も岡田さんもSF的な知識がほぼゼロなので、キャラクターを軸に話を転がそうとなったんです。僕からのオーダーは、キャラクターの見え方、このキャラ好きだなとか嫌いだなとか、そういうのがドンドン入れ替わって二転三転する話にして欲しいということ。それを受けて岡田さんがばらまいたパズルのピースを、僕が一生懸命探して組み立てていくような作業でした。
例えば、アカシがどうしてドS発言をするような性格になったのかは、1話からずっとわからないんですが、9話くらいで「そうか!」と思うような何かがみつかるんです。絶対くっつかないんじゃないの?っていうピースが、ずいぶん先の回で見つかってくっつくんですよ。おもしろい体験でした。どんどんハマっていくところが恐ろしくもあり、悔しくもあり。弄ばれた感が強いです(笑)。あまりないことです。

abesan■ 漠然とした周囲の不安と向き合う物語

―それは岡田さんの作り方がいつもの佐藤監督の作り方とは違った、ということでしょうか。

佐藤 
まだちゃんと正確には答えが出てはいないんですけど、岡田さんはいろんなことを最初に理屈でなく直感でやんわりとだけ決めてるんだと思うんです。その直感が正確なんでしょうね。
物語で重要なエリアとして出てくる「無明領域」も、最初の岡田さんの案では「無名領域」、つまり「『名』前が『無』い」だったんです。中に入ると名前を奪われる、と。
だけど絵的にどう描写したらいいのかわからなかったので、「明かりがないっていうのでいきたい」と言ったんですよ。闇の世界ということにもなるので。そうしたら、岡田さんが、「じゃあそれでいいです」って(笑)。最近それを思い出して、もしあの時に「名前をなくす」で進めていたら、今とは全く違った展開になったかも知れないって、ちょっと思いましたね。

―「名前が無い」だと急にファンタジックなイメージにもなりそうでしたが、『無明領域』というものは、番組スタート時に非常に話題になった「佐藤監督が黒いモノをやる」というイメージにもぴったりと合っていたのではないでしょうか。
そこで改めて伺いたいのですが、どうして今回「ダークなロボットモノ」に挑もうと考えられたのでしょうか。

佐藤 
これまでほんわかとした日常モノが多かったので、こういうことやってるよ、というのを見てもらいたかったのはひとつあります。もうひとつは、時代的な空気ですね。漠然とした周囲の不安といったものが、我々も含め、中学生、高校生の目の前にもずっと目障りな感じでぶら下がっている。そういうものと向き合う物語にしたかったというのはあります。
読島(ヨミジマ)事件含め無明領域事件は、大人達が作った社会の仕組みの中で大人達が勝手に引き起こした災害であり、関係のない子どもたちが巻き込まれ、あがいていくんです。現実にも子供達にとっては同じような状況で、不安に目を向けないように頑張っているような気がするんです。
《細川洋平》

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