ディズニー&ピクサーのヒットタイトルに見られるストーリーの黄金律とは? 現役クリエイターがあかす方程式 | アニメ!アニメ!

ディズニー&ピクサーのヒットタイトルに見られるストーリーの黄金律とは? 現役クリエイターがあかす方程式

拡張を続けるゲーム業界。GDCはその知見が集約する場所であり、ゲーム業界の周辺領域からの講演も少なくありません。

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ディズニー&ピクサーのヒットタイトルの黄金律
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拡張を続けるゲーム業界。GDCはその知見が集約する場所であり、ゲーム業界の周辺領域からの講演も少なくありません。ディズニーのCG映画におけるシナリオ技法が共有された「The 5 Key Plot Points to Creating a Great Story」もその一つ。講演者のマシュー・ルーン氏はピクサー・アニメーション・スタジオのストーリー・アーティストです。

ルーン氏は1992年にCGアニメーターとして『トイ・ストーリー』の制作に係わり、以後現職として『トイ・ストーリー2』『3』『モンスターズインク』『カーズ』などの制作に携わりました。講演もルーン氏が係わった『ファインディング・ニモ』のプロットを分析し、そのエッセンスを紹介するという実践的なもので、多くの参加者が聴講しました。なお、構成上激しくネタバレ注意ですので、未見の人はご注意ください。

はじめにルーン氏は、ストーリーを一行でまとめたアイディアメモを作りなさいと切り出しました。「生命を持った玩具」(トイ・ストーリー)、「モンスターがクローゼットの中に隠れている」(モンスターズインク)、「父親が息子を海の中で探す」(ファインディング・ニモ)などです。そして、このアイディアを振り出しにしてキャラクターをからませていき、ストーリーを膨らませていくことがコツだと解説しました。

その後、ルーン氏は会場で簡単なワークショップを実施。「好きな映画を選んで、主要人物がどのようにストーリーのアイディアにからむか、2分間で考えてみてください」と投げかけました。例として「田舎の若者が偶然、銀河を巡る戦いに巻き込まれ、大活躍して英雄になる」(スター・ウォーズ)といった具合です。

続いてルーン氏はディズニーのCG映画におけるプロットを解説しました。ルーン氏によると『トイ・ストーリー』以降の作品は三幕構造をとっており、多くのヒット作品に共通して見られる展開だそうです。以下にルーン氏の講演内容にもとづき、『ファインディング・ニモ』のシナリオ構造を整理してみましょう(余談ながら本作の主人公はニモではなく、父親のマーリンだったことを、筆者は講演を聴いて改めて思い出しました。)

イントロダクション:基本設定が提示されます。舞台となる世界や、キャラクターの人間関係などです。そのうえで、思いがけない方向にストーリーが展開していく予兆を提示します。本作の場合はカクレクマノミのマリーンと妻が新しい家にいること。夫婦は子どもの誕生を待ち望んでいること。オニカマスに襲われて、妻が死亡してしまうこと。残された卵から赤ちゃんが生まれ、ニモを溺愛するようになること、などが相当します。

1stブレイク:導入部の状況が一転し、ストーリーのゴールが設定され、主人公の旅が始まります。主人公は安全で退屈な日常から、危険で刺激に満ちた世界へと移動します。本作ではニモがダイバーに捕獲され、マリーンが救出に出発します。

中間部:中間部では主人公が旅の途中でさまざまな困難に出逢い、乗り越えていきます。主人公のタスクは次第に困難さを増していき、クライマックスを迎えたところでタスクが最大となります。ここで重要なのは、旅の最初と最後で主人公が精神的な成長と遂げること。そのための仕掛けとして、途中で「必ず」主人公が旅の目的を一時的に忘れてしまい、目的が変化することです。

本作では旅の途中でマリーンは相棒のドーリーと泳ぎの速さ比べに夢中になってしまい、ドリーを危険に陥れてしまいます。その結果、マリーンの目的はニモを探すことではなく、一時的にドーリーを助けることに変わります。こうしたエピソードを通して、マリーンは他者を信頼することを覚えていきます。

2ndブレイク:中間部の状況がさらに一転し、主人公は外的にも内的にも大きな変化を経験して、精神的な成長を遂げていきます。本作ではマリーンとドーリーは鯨に食べられてしまいます。その結果、マリーンはニモに会えないかもしれないと覚悟します。こうした試練を経てマリーンは精神的にさらなる成長を遂げていきます。

クライマックス:主人公の精神的な成長が、主人公を取り巻く外的・内的な変化を上回り、すべてを好転させます。これによって主人公は世界が大きく変化する様を目の当たりにします。本作では鯨の潮で吹き上げられたマリーンとドーリーがペリカンのナイジェルに会い、彼の助けを経てニモを救出することに成功します。

なお、本作のプロットは最後にもう一ひねりが加えられています。マリーンは他者を信頼することを覚えて、精神的な成長をはたしました。しかしドーリーが他の魚たちと共に、漁師の網に捉えられてしまいます。

ここでニモはみんなで協力すれば脱出できると提案しますが、過保護のマーリンは危険すぎると却下します。しかしニモはマリーンならできると主張し、ドーリーはニモを信頼するように説得し・・・というもの。マリーンが仲間を信頼すると共に、過保護だった自分を反省したとき、網が破れて大団円となります。

最後にルーン氏は「親の過干渉や過保護に対する戒め」という映画のテーマを示して、セッションを締めくくりました。ともすれば説教くさくなるテーマを一流のエンタテインメントに昇華するための秘訣が、このプロットだったというわけです。ルーン氏が紹介したプロットの方程式を使って、他のディズニー&ピクサー映画を分析すると、また新しい発見が見られるに違いありません。

【GDC 2013】ディズニー&ピクサーのヒットタイトルに見られるストーリーの黄金律とは? 現役クリエイターがあかす方程式

《小野憲史》
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