7月3日から6日までパリで開催されたアニメ・マンガイベントのジャパンエキスポで、マンガ家平野耕太氏がヨーロッパのファンの前で自らの創作や作品について語った。 平野氏は『HELLSING』などの人気作品で知られているが、同氏の作品は海外、特に欧米地域で人気が高い。それだけに、イベント3日目(7月5日)の午後に行われた講演会では、会場が超満員になるほど多数の地元ファンが集まり、同氏の人気の高さをみせつけた。『HELLSING』創作の秘密 講演会の多くは平野氏に対する現地のファンからの質問と平野氏の作画のデモストレーションにより構成されていた。ファンからの質問はやはり『HELLSING』に集中し、特にキャラクターの設定や造型についてが多かった。 最初に出た質問は、『HELLSING』のタイトルの由来である。平野氏は主人公が、ヴァン・ヘルシングの末裔と考えており、地獄のHellともかけていると説明した。 また、キャラクターがカリスマ性を持っているのはなぜという質問に対しては、最初考えた時は普通のキャラクターだった、ストーリーが進む中でキャラクターが動き出し、そのなかでカリスマ性が育っていったという。 作画については、好きなキャラクターはアンデルセン神父、描くのが好きなキャラクターはウォルター、描き難いキャラクターは少佐であると、自身のお気に入りにキャラクターにふれる場面もあった。 作品創作の方法についての質問もあった。そこでは、マンガの創作に一番必要なのは編集者と語った。マンガは他の雑誌とはまるで違う作り方をするので、マンガ編集者の存在は不可欠なのだという。平野氏が語る次回作の構想 今後の活動予定については、平野氏の『HELLSING』については、10巻で完結する予定だという。一方、現在原作に沿って製作が続けられているアニメ版『HELLSING』は、全てお任せとして考えているので原作者として何かするということはないとのことである。 そして気になる次回作は、『HELLSING』とは異なったスタイルで吸血鬼とも戦争とも関係ない、どちらかと言えばファンタジーに近い作品になる。また新たなかたちの平野ワールドが近い将来展開することになる。 質問は数え切れないほどあり、時には自ら『HELLSING』の本を持参して説明する質問者もいる程だった。そのひとつひとつに平野氏は丁寧に答えを返していく。ヨーロッパでの人気は予想外 これ程までにヨーロッパ地域で人気があるのだが、平野氏によれば『HELLSING』は日本のマンガであり、当初は日本の読者にしか受けない作品だと考えていた。それが海外に流通して人気を得るなど想像もしていなかった、フランスで人気があることに大変驚いていると明かした。 そのため「日本ではタブーになっていないことをマンガで描いている。しかし、海外の人が読んだら気分を悪くする表現もあるかなと、今になって失敗したと考えている部分もある」ということだった。 作品が海外で出版される際にはそうした部分が、修正されるのは仕方ないことであるという。予想外の海外展開で作者のなかに戸惑いもあるようだった。 しかし、作品の印象とは対照的な穏やかで丁寧な語り口の平野氏は、現地のファンから暖かく受け入れられ、平野氏が語りたかった物語の本質が十分伝わっていることを感じさせた。 最後に、フランスのイベントで恒例になっている作画のデモストレーションが行われた。そして、会場から最も要望の高いキャラクターを描くことになった。キャラクターはやはり『HELLSING』の主人公アーカードであった。 短時間でしかし何度も見直し、手を加えながら次第に完成していくアーカードに、会場全体が魅入っていた。そして絵が完成すると記念写真を撮る人が殺到した。講演の内容も深く、現地のファンには満足度の高いイベントだったに違いない。ジャパンエキスポ(パリ)公式サイト /http://www.japan-expo.com/ 日本語情報 /http://www.eurojapancomic.com/fr/japanexpo.shtml
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