広井王子インタビュー「タップ・ジゴロ」レビューが、芝居が大好き! 高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 第4回 | アニメ!アニメ!

広井王子インタビュー「タップ・ジゴロ」レビューが、芝居が大好き! 高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 第4回

連載・コラム 高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義

高浩美の
アニメ×ステージ&ミュージカル談義 
第4回


広井王子インタビュー
ミュージカル
「タップ・ジゴロ」は戦後の日本が舞台
〜実は「サクラ大戦」以前から描きたかった時代なんです〜


[取材・構成: 高浩美]

ゲームファン、アニメファンにはおなじみの「サクラ大戦」。1996年に売り出されたセガサターンソフト用のドラマティックアドベンチャーゲーム、生みの親は広井王子。1998年にはミュージカル化、その後アニメ化しているが、最近は大好きな舞台をメインに活動をしている。
2010年には、北野武監督の「座頭市」の下駄タップシーンの振付でブレイクしたタップダンサーHIDEBOH主演のミュージカル「タップ・ジゴロ」の脚本を執筆、好評を博して今年再演。「劇場が、演劇が、レビューが大好き!」という広井王子にいろんな想いを語ってもらった。

■ 戦後の進駐軍がいて、それからいなくなる瞬間の時代が面白い

広井王子は東京・向島の出身。「タップ・ジゴロ」は博品館の社長の依頼で書いた作品だが、そもそも戦後の混乱期の時代に興味はあった、と言う。
「実は「サクラ大戦」をやる前からこの時代のことはやってみたかったんですね。博品館さんから依頼される以前に新国立劇場でやった「リンゴの木の下で」で戦後の話を書いたんです。向島の話で、母から当時のことを聞いていまして“面白いな”と。旧陸軍が白金とかアルミニウムを埋めてて、ジャズバンドの物語とクロスさせて、まあドタバタですけど、ね(笑)」

今回の公演「タップ・ジゴロ」の時代設定も戦後、進駐軍がまだ日本にいた時代から始まる。
「進駐軍がいて、彼らがいなくなる瞬間の時代が面白いんじゃないかな、と。ショー自体、米軍がいたからあったっていう・・・で、彼らがいなくなって、がらりと変わるところが、ね。でも、そこから日本のショービジネスが出来上がるんです。ナベプロとか・・・みんな進駐軍のジャズメンですからね、そういう意味でも、芸能をやる上でも。この時代ってすごく大事なところだと思いますね。いいテーマがあると3つぐらい話、書きたくなっちゃうんです(笑)」

■ 劇場にいるとホッとする

また、無類の“劇場好き”な広井王子、叔母がSKDの戦後の第1期生だったそう。
「もう、これは“ベース”ですね。楽屋には何度も出入りしてましたし、お袋は新派好きで。いろんな劇場に連れていかれました。若い叔母さん達は映画館によく行ってました。劇場にいるとホッとするんですね。SKDはとにかくラインダンスが凄かったですね。楽屋はおしろいの匂いがしてたのはよく憶えています。舞台がはねると叔母は家に夜食を食べに来て、まだおしろいの匂いが残っていて、時々、カタコトの英語をしゃべって、これが、もう違う人みたいでドキドキしましたよ」

■ とにかく“レビュー”

「タップ・ジゴロ」、「サクラ大戦」のどちらの舞台もレビューシーンは満載。HIDEBOHのタップはとにかく圧巻、タップの音色で心や時代の陰影を表現出来るのは彼しかいないだろう。
「とにかくずっとレビューがやりたかったんです。この作品には本物のタップダンサーHIDEBOHさんがいますから、タップ、いっぱい見せない訳にはいかんでしょう(笑)彼のタップは本当に複雑に鳴ってますね。なんでそういうこと、出来るの?みたいな、そういうのを聞いて、見てもらいたいですね。「サクラ大戦」の時も“羽根!”って(笑)高いんだから勘弁してって言われて。でも、そこんところがレビューの醍醐味ですから」

■ デジタル化したら、その対極は“生(なま)”

「僕は「サクラ大戦」の時から、もっとデジタル化したら対極に生(なま)があるってずっと言い続けています。携帯もここまで行き着いたから“絶対に生(なま)”です。AKB48もね、握手があるじゃないですか。僕は学びましたね。大衆演劇っていうのは昔からお客さんとふれ合ってきましたし。そこのところをAKB48は泥臭くおやりになっている。お客さんと接する、そういうところを大事にしなきゃいけなかったんじゃないかな、と。僕自身、反省があります。そう言えば昨日「タップ・ジゴロ」の地方公演を見に行ったんですが、横山さん演じる鞠子が歌手になるところで客席から「よかったねえ〜」なんて聞こえてきて(笑)なんか親戚のおばさんみたいでね。昔はああいう掛け声がとんでたんですよ。僕はこういうものを創りたい、お客様と一体になっているものを創りたくてしょうがない。だから秋元さんに“やられた”って思いました、専用劇場ですからね。本来は「サクラ大戦」でやるものだったと思います」

■ 芸達者がいっぱいな「タップ・ジゴロ」

この公演、主演のHIDEBOHを始めとして芸達者ぞろい。「サクラ大戦」ではおなじみの横山智佐、声優として代表作・役の枚挙にいとまがない井上和彦、それこそ“羽根”を背負っていた元宝塚トップ娘役の星奈優里、大鳥れい等とにかくきっちりと仕事をこなせる俳優が陰影のある物語世界を構築する。
「横山さんは「サクラ大戦」」からのお付き合いですから、長いですね。最初の頃は“やだやだ”って、“イベントとして1回だけ”とか言ってて、それがいつのまにやら・・・すごく嬉しいです。ナンシー梅木さん(注)をモデルにした役ですけど、話すと訛りはひどいが歌は訛らない、英語は達者だったっていうことだそうで・・・ここを面白く膨らませて。初演は堅さがあったんですが、再演では“もう中川鞠子にしか見えない!”っていうくらい(笑)。井上さんも長くお付き合いさせていただいてますが、肩の力が抜けたオトナの魅力で、あの声が、ね、いい感じです」

■ この流れでもっと書きたい
 
創作意欲満々の広井王子、書きたいことは山ほどあるようだが。
「今の流れでもう1本か2本は書きたいですね。僕は希望と哀しみが背中合わせみたいなのが好きなんです。昭和30年代は地方から“金の卵”と呼ばれる中卒の子供達が来ますよね。希望がありながら、でもメッキ工場とかで働いて、チマチマと田舎に仕送りしてる。朝鮮戦争でいわゆる“特需”もありましたし、日本は高度経済成長していきますが、その原動力が“金の卵”、ここに、日本がどう“加担”したかが書きたい。この時代って実は“宝庫”なんですよね、舞台作品には書かれていない。この「タップ・ジゴロ」の先の時代を連作で書きたいし、書いておいた方がいい気がします。舞台ですからどっちかというと笑いたい、そのどこかにちょっこと哀しみを、ね。笑いながら、その中で観客が何かを持って帰ってくれたらと思います。書きたいことはいっぱいありますが、少しずつ、ね(笑)」


{物語解説}
戦後。銀座のキャバレーに一人の天才タップダンサーがいた。彼の名前はジョニー佐々木、客も女も魅了し続ける彼は金と女に不自由しない毎日を送っていた。そんな日々がずっと続くと思い、ステージでタップを踏み続けていた。そこに歌手を夢みる田舎娘・中川鞠子が現れる。訛りはひどいが、歌だけは訛らない、しかもその歌声は類いまれなる才能に輝いていた。鞠子の歌にやや圧倒されるジョニー。彼はタップチームを作り、ステージに立つ。キャバレーは鞠子の歌とジョニー達のタップで大繁盛。しかし、時代は過ぎ、サンフランシスコ講和条約が終結され、日本の主権が回復されてアメリカ軍は撤退していった・・・。

(注)ナンシー梅木(1929年〜2007年)北海道小樽市出身。ジャズシンガー、女優。進駐軍のキャンプでジャズを歌うようになり、1950年代にはジャズシンガーの草分けとしてナイトクラブやキャバレーで活躍し、その後渡米。1957年にマーロン・ブランド主演映画「サヨナラ」でスクリーンデビュー。この映画で東洋人では初めてアカデミー助演女優賞を受賞。その翌年にはブロードウェイミュージカル「フラワー・ドラム・ソング」に出演し、トニー賞のミュージカル部門最優秀女優賞にノミネートされ、61年の映画化でも同じ役を演じた。ゴールデン・グローブ賞には3回ノミネートされた。


「タップ・ジゴロ」
10月3日〜14日
博品館劇場
/http://theater.hakuhinkan.co.jp/

[高 浩美 (こう・ひろみ)]
東京都文京区出身。
生活情報誌「レタスクラブ」にてエンターテインメント欄を担当後、演劇雑誌「ソワレ」編集、総合女性誌副編集長等を経験。テレビ情報誌「ステラ」にて宝塚や歌舞伎、能等の特集を手掛け、また書評も担当。また、東京アニメセンター広報業務にも携わり、主に外国メディアを担当した。
「MUSICAL WALKER」(角川書店)「タカラヅカ新世紀」(NHKサービスセンター)「ミュージカル新世紀☆スター名鑑」(グラフィック社・著書)「華麗なるミュージカルガイド」(キネマ旬報社)なども手掛けた。
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