『刀語』第一話、立命館大学にて先行試写会‐2‐ | アニメ!アニメ!

『刀語』第一話、立命館大学にて先行試写会‐2‐

小説で示された世界観を忠実に守りつつ、アニメならではの良さを生かす

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小説で示された世界観を忠実に守りつつ、アニメならではの良さを生かす

katanaCAP006.JPG 更に、高橋氏は小説版で描かれていた竹氏によるキャラクターを忠実に再現した点や、大河小説と銘打って月に1冊、新刊が発行されていた方法をアニメ放映でもそのまま採用し、1話約1時間、月に1回放送というかたちで放送することを決定したことにもふれ、このような既存の枠組みではとらえられない方法で作品展開を進めることでアニメ『刀語』のあるべきカタチを示すことが出来たとした。この点について鳥羽プロデューサーは、本来、このような無理な形式には、対応しないはずの放送局がこのスケジュールに対応してくれたこと、関東圏はフジテレビで放送するにも関わらず、関西ではTBS系列の毎日放送が放送してくれたことなどなどを挙げ、放送局側も作り手側の趣旨に賛同してくれたと補足した。高橋氏はこの状況を「少年サンデーと少年マガジンに同じ漫画が連載されてる位レア」と形容し、観客の笑いを誘った。

 鳥羽プロデューサーによれば、竹氏のイラストを忠実にアニメ化するという点については最後まで悩んだのだという。ただ、周りの総意も含め、単純にアニメファンに対して作品を出すのであれば変えるべきだが、そうならないのが『刀語』だという決意を固めたとのこと。作り手の作品に対する並々ならない思いが垣間見えた一瞬だ。
 小説をアニメ化するうえで注意したこととして、高橋氏は「活字の並びとしてどうか」を強く意識して小説を書き進めていく西尾氏の執筆スタイルを指摘。「七花八裂」のような奥義も、この字を見て読者が「強そうなイメージ」と感じさえすれば、以降のイマジネーションは読者に委ねるといったスタンスを貫いてきたという。従って、技の設定画を見て「こんな技だったんですね。」と西尾氏が納得していたというエピソードを引き合いに出しながら、西尾小説は、活字ならではの面白さを追求するがゆえ作家自身にビジュアルイメージはないこの作品のアクションを如何に動画で表現するか真剣に考えたとのことだ。
 思い入れのあるキャラクターについて、鳥羽プロデューサーはとがめを即座に押して観客の笑いを誘った。一方、高橋氏は、主人公鑢七花をあげ、一刀の刀として育てられた七花が、作品の中での出会いと戦いを通して人として成長していく姿を見て欲しいと訴えた。また、敵役の魅力についても言及。第一話の真庭蝙蝠という「忍ばない忍者」からはじまる総計12人の刺客は「完全に芸人」と高橋氏。キャラの数としては西尾作品の中でも多いということもあり、今後、それぞれの敵役がどのような生きざまを示すのかに期待がかかる。

プロデュースのプロとしてアニメ産業に携わる意義

katanaCAP008.JPG 「それぞれの仕事を進めるうえで何にこだわったか」という質問に対し、鳥羽プロデューサーは、竹氏のテイストをどこまで再現できるか、動いたときに更にどこまで魅力的に見せるか、そして、西尾作品の特徴とも言えるセリフが音声となったときにどこまでその特徴を引き出せるか、という点が本作品における最大のこだわりであるとした。一方、宣伝担当として、高橋氏は、プロジェクトとしての期間の長さについて言及。通常1クール数カ月というところ、『刀語』は構想だけでも1年、仕込み期間も入れれば2年、3年というスパンでプロモーションを計画しなければならないという点で最初はとまどったという。ただ、幸運にも7章立ての小説を7部連作映画とした劇場アニメ『空の境界』の宣伝も担当したことから、今回のプロジェクトはテレビアニメよりも劇場アニメの広報展開に近いことを実感したとのこと。現在は、春夏秋冬を意識しながら3カ月ごとに分割し、4つ全く違う番組を宣伝するつもりで山をつくっていくとのこと。「現在はひとつ目の山をつくっているが、これからも定期的に面白い展開があるので楽しみにしていてください」と観客の期待感を高めた。また、ネットも重視していると高橋氏。電波とネット双方で盛り上げていきたいとした。気になる小説とのコラボレーションだが、出版元である講談社Boxは非常に好意的で、1か月1話、1時間という企画案そのものも、講談社Box側からの提案からはじまったとのことで、更なる展開が期待できることを高橋氏は匂わした。
 
katanaCAP002.jpg 最後は、学生目線の質問として、「アニメのプロデューサー、宣伝担当として常に何を心がけているか」という質問が挙げられた。それに対して「出来がいいけど買わないというものは企画としては成立しない。出来は悪くてもお客様が欲しいから買うという位のものを生み出さないとダメ。」と鳥羽プロデューサー。高橋氏も「自分の仕事は終始、お願いする、あやまる、感謝するということで充たされており、その中でも特にあやまることが7割」と指摘。更に「世の中に存在するエンターテインメントはすべて広報マンが裏でしかけている。しかし、企画の最初の段階では、白紙状態からはじまるという。予算を渡され、自由にPRしろ、という指示を与えられのが普通なのだ。全くの白紙の中で広報戦略のブループリントをつくりあげるのが広告マンであり、そのためにサービス業という意識と、自ら自主的に物事を解決していく積極性が重要であると説いた。アニメ産業におけるプロとして作品に関わっていくことの厳しさを改めて示した一場面だ。
 
 テレビアニメを1カ月も先行して、しかもシアター型の大画面で観賞が出来たこと、そしてプロデュース側の意図や思いをトークセッションで改めて確認出来たことから、イベントの参加者の多くが、イベント終了後も鳥羽プロデューサー、ならびに高橋氏につめよるなど、興奮を隠しきれない様子だった。『刀語』第一話は1月25日にフジテレビ、27日には、毎日放送、BSフジは30日から順次放送が予定されている。期待がかかる一作だ。
作品画像: ©西尾維新 / 講談社 ©西尾維新・講談社 / 「刀語」製作委員会

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katanakey1.jpg立命館大学 /http://www.ritsumei.jp/

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