アジア市場に挑む台湾アニメとその舞台裏:レポート | アニメ!アニメ!

アジア市場に挑む台湾アニメとその舞台裏:レポート

 4月4日にデジタルハリウッド東京校で、アジアITビジネス研究会とデジタルハリウッドの共同企画「アジア市場に挑む台湾アニメとその舞台裏」と題するイベントが行なわれた。 
 イベントは韓国、中国、台湾のアニメビジネスの実状を説明する第1部と、台湾アニメーショ

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 4月4日にデジタルハリウッド東京校で、アジアITビジネス研究会とデジタルハリウッドの共同企画「アジア市場に挑む台湾アニメとその舞台裏」と題するイベントが行なわれた。 
 イベントは韓国、中国、台湾のアニメビジネスの実状を説明する第1部と、台湾アニメーションの代表作の上映会から構成されたビジネス事情も興味深い話はあるが、ここでは上映会についてレポートする。

 今回の上映が貴重なのは、中国や韓国に較べてまとまって紹介されることが少ない台湾アニメーションをまとめて紹介している点である。
 たとえば今回紹介された台湾の代表的な劇場大作アニメーション『ファイヤーボール』でさえ、日本では2年前の東京国際アニメフェアで紹介されたのが唯一の上映である。
 また、上映会プログラムが4種類のカテゴリー、デジタルコンテンツ学院の卒業作品、劇場アニメーション、テレビのシリーズアニメ、Flash短編アニメーションに分かれていることで、台湾アニメーションの多様性を理解する参考になった。日本と同様に台湾には多様なアニメーションが存在し、ひとつの枠では括れないことがよくわかる。

 このため今回の台湾アニメーションに対する感想も、分裂したものになる。ひとつはCGアニメーション技術のレベルの高さ、もうひとつは日米の模倣に対する失望、最後は台湾のオリジナルなアイディアに対する興奮である。

CGアニメーション技術は万国共通
 CGアニメーションの技術は、デジタルコンテンツ学院の卒業制作作品についてである。しかし、これらは技術的には素晴らしいが印象は薄い。これは台湾だからでなく、CGアニメーションの卒業制作にありがちな非エンタテインメント性のためである。 
 米国の南カリフォルニア大学卒業生の作品を観た時や日本のCGアニメーション専門学校の卒業作品を観た時に感じたそれと一緒である。

 こうした卒業作品はもともと商業化する意図がないためクリエイターの個人的な思いに傾斜しがちである。また就職活動を行なう際のポートフォリオとなるため、自己の技術の誇示が目立つ。結果として、出来はいいけれどひどく受け入れ難いものになる。
 逆に言えばそう感じさせる部分で日米と全く同じである。学生の技術の部分で3国の違いを見つけ出すことは難しく、様々な意味で日米と同じだと思わせる。

劇場アニメとテレビアニメ 日米の模倣が目立つ
 技術的に差異が少なければ、商業作品として重要なのはキャラクター造形や物語性である。しかし、劇場映画『ファイヤーボール』もテレビアニメ『チェスマスター』もひどくつまらないものに感じた。
 つまり、『ファイヤーボール』はディズニーの模倣に見えるし、『チェスマスター』は日本アニメの模倣にしか見えない。それなりに面白そうだが、よくてオリジナルと同等レベルそれ以上ではなく平凡なものに映る。

 たとえば日本アニメの成功は、欧米のフルアニメーションの模倣でなく、極端に切り詰められたリミテッドアニメーションにあった。日本アニメが欧米と異なる戦略を取ったことにある。つまり同じことをするならば、市場を熟知した先行者に追いつくことは難しい。
 もし、台湾がアニメーションの世界でグローバルな成功を収めようとすれば、ディズニー的な世界でも、日本式のリミテッドアニメでもない独自の様式を作ることが必要となる。

台湾らしさを感じさせるFlashアニメーション
 台湾にそうした可能性があるとすれば、今回紹介されたなかではFlash短編アニメーションである。4つのセクションのなかでは最も面白かったし、明らかに日米とは異なるアイディアや表現方法が生まれつつある。
 特にわずかな時間のなかで物語をまとめ人の心を捕らえる力は、日本の多くのアニメに欠けているものである。つまり、日本のアニメの多くは大河ドラマであることが求められ簡潔に表現する力が弱い。ネットや携帯をベースに発展しつつある台湾のFlashアニメーションは、短い時間で多くを語る術に非常に長けている。こうしたオリジナリティは、今後の台湾アニメーション発展の可能性を感じさせるものである。



アジア市場に挑む台湾アニメとその舞台裏
4月4日
主催: NPO法人アジアITビジネス研究会/デジタルハリウッド株式会社
講師:
吉村章(アジアITビジネス研究会 理事)
田所陽一(アジアITビジネス研究会 理事)
磯崎太一 (韓国文化コンテンツ振興院日本事務所マーケティングマネージャー)

【プログラム】

 第一部:アジアのアニメビジネス事情の紹介(韓国・中国・台湾)
 第二部:台湾アニメ上映会
 1. デジタルコンテンツ学院・第二期動画班の卒業作品
 2. 劇場アニメ『ファイヤーボール』原題:『紅孩児 決戦火焔山』  ワンフィルム社 
 3.  Flash短編アニメ
    『アークエ(阿貴)』/ 『30資深美少女』/『礼物』  スプリングハウス社 
 4. TVアニメ『チェスマスター』原題:『象棋王』 ホンイン社 
《animeanime》
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