種崎敦美&市ノ瀬加那が「葬送のフリーレン」から教わったこと「人生には終わりがある。だから日々を大切に生きていきたい」 | アニメ!アニメ!

種崎敦美&市ノ瀬加那が「葬送のフリーレン」から教わったこと「人生には終わりがある。だから日々を大切に生きていきたい」

TVアニメ『葬送のフリーレン』より、フリーレン役・種崎敦美(崎は立つ崎が正式表記)と、フェルン役・市ノ瀬加那の対談インタビューをお届け。

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  • 『葬送のフリーレン』最新キービジュアル(C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
2023年9月29日より日本テレビ系「金曜ロードショー」にて、ついに初回スペシャルが放送となるTVアニメ『葬送のフリーレン』。

勇者一行が10年に及ぶ冒険の末に魔王を倒した“その後”の平和な世界が舞台となる本作。勇者一行のひとりだった千年以上の時を生きる魔法使い・フリーレンと、彼女が新たに出会う人々の旅路が描かれていく。

主人公・フリーレンを演じるのは、声優の種崎敦美(崎は立つ崎が正式表記)。そして、フリーレンの新たな旅の仲間であり弟子である魔法使いのフェルンを演じるのは、声優の市ノ瀬加那。2人は本作をどのように捉え、キャラクターに何を感じ、芝居へ繋げていったのか。また、フリーレンにとっての勇者一行との旅路のように、2人に大きな影響を与えた出来事とは。

多くを語り合うことはないものの、心が通じ合っているフリーレンとフェルン。そんな2人の関係性を彷彿とさせる穏やかな空気の中、本インタビューは進んでいった。

[取材・文:阿部裕華 撮影:吉野庫之介]



限られた時間の尊さが苦しくも温かい


――「仲間」「成長」「生と死」など本作は様々なテーマを内包していますが、お芝居を通じてどんなテーマ性に惹かれましたか?

市ノ瀬加那(以下、市ノ瀬):私は「人生」が強く印象に残っています。フリーレンとフェルンは、エルフと人間なので時間の捉え方が全く異なります。この2人を見ていると時間は有限で、人生には終わりがあるものだと感じるんです。そこから日々を大切に生きていきたいと思わされますし、くだらない日々があってもいいじゃんと思えるようになりました。この作品を見ていると、すごく胸が苦しくなるけれど、同時にどこか温かい気持ちにもなれる。そんな言葉にできない感情がいっぱい散りばめられている作品だと感じます。

種崎敦美(以下、種崎):私が感じたのは、今(市ノ瀬が)お話ししていた「人生」の括りにある「時間の価値」ですね。原作を読んでいるとすごく哀愁のようなものを感じて泣きそうになってしまうのですが、それはきっと「時間」によるものなのではないかなと。

フェルンの成長からも「時間の価値」を感じるのですが、なぜならフェルンってすぐに成長するんですよ! あんなに小さかったのに、フリーレンと身長が同じになって、ついには超している!?って(笑)。

市ノ瀬:(笑)。

種崎:人間にとっては長い時間をかけて成長しているのかもしれないけれど、千年生きているエルフのフリーレンからするとあっという間。そこにグッときます。

収録が先まで進んでいるので、最近の収録に登場するフェルンはフリーレンの身長を越しているんですね。だから、初回スペシャルの完成品を見せていただいた時、フェルンがまだ小さくて、思わず号泣しちゃいました。時間の捉え方、価値の違いを感じる連続で、だからこそ『フリーレン』という作品にグッときてしまいます。





アニメのフリーレンは、原作より“体温高め”


――フリーレンの声のアプローチについて。外見的にかわいらしい印象も受けるため、高めの声などいかようにもアプローチができたかと思います。そんな中、少し低めの声のアウトプットをされていますが、種崎さんはどのようにフリーレンを捉え、役づくりを進めたのでしょうか。

種崎:私は原作を読んでいる時に、フリーレンの印象として「かわいらしい」はでてこなかったんですね。もちろんかわいいところは言い尽くせないくらいたくさんありますけど、「声」に関しては…長く生きているが故にか元々の性質か、体にあまり力が入っている感じがしなくて。私がフリーレンを演じるのであれば、自分も一番力が入っていない状態で声を出したいと思いました。なので、ディレクションがあれば変わっていたかもしれませんが、このアプローチ以外は考えていませんでした。実際、オーディションの段階でも何も言われなかったので、そこは制作側の皆様とも「このフリーレンだ」と解釈が一致したから選んでいただけたのかな…?と…思っています。

――アフレコ中も、監督や音響監督からディレクションを受けることは特になく?

種崎:アフレコでは「もっと体温を高くして大丈夫です」とディレクションをいただきました。アニメを観ていただくと分かるかもしれませんが、原作のフリーレンよりも表情が豊かというか。私は原作のフリーレンにはもう少しローテンションな印象を抱いていたので、そこに合わせてお芝居をしていたのですが、「冒険の終わりだし、気の知れた仲間たちと一緒にいるのだから」と、もう少し体温高めのお芝居で、とディレクションをいただき、今の雰囲気になりました。完成するまで不安もありましたがそのシーンを聞き返してみると、みんなといる時間が楽しいんだな大好きなんだな、これまでもきっとキラキラした尊い時間だったんだな、とより思えるものに仕上がっていて「ああ、これがいい!」と思いました。



――それでは、市ノ瀬さんのフェルンへのアプローチについてもお聞かせください。フェルンは幼少期から青年期まで描かれる上、フリーレンとの旅で様々な出会いを重ねていく中で様々な表情を見せるようになる、物理的にも精神的にも変化していくキャラクターです。フェルンの変化をどのように捉え、お芝居に繋げていきましたか?

市ノ瀬:ハイター(CV:東地宏樹)さんと一緒にいる時のフェルンは、「ハイターさんに恩を返すため、安心させるためにも早く一人前にならなくては」という気持ちでいっぱいだったと思います。その気持ちに重点を置いていたから、幼少期のフェルンはしっかり者と捉えていました。

フリーレンは、そんなフェルンの様々な表情を引き出してくれている感覚があります。フリーレンの師匠としてのカッコよさを見ていると「まだまだ一人前の魔法使いではない」と感じている一方、フリーレンの日常のだらけている姿を見ていると「自分がしっかりしなくては!」と歩み寄ろうとしている印象も受けます。フリーレンとの旅の中で、だんだんと感情の幅が広がっていったのを感じるので、そこをお芝居に繋げています。

――フリーレンのいろんな面を見ることで、フェルンの新しい一面が引き出されるということですね。

市ノ瀬:そうですね。ハイターさんはフェルンのためにちゃんとした大人を見せてくれていたと思うのですが、フリーレンはちゃんとしていない部分も見せてくれるので(笑)。いろいろ言いやすいところもあったと思います。



フリーレンはわざとミミックに噛まれている?


――本作は、シリアスなシーンもあれば、コミカルなシーンもあります。マインドを切り替えるなど演じる上で工夫したこと・意識したことがあれば、お聞かせください。

市ノ瀬:フェルンは一見淡々としているけど、人間らしい部分がいっぱいある子です。エルフと人間の対比を感じてもらうためにも、クールに感じるセリフを少しだけ感情豊かにすることはありました。ただ、フェルンはフリーレンやシュタルク(CV:小林千晃)に対してすごく塩対応になることがあるので、語気を強めてしまうときつく感じることもあるんですね。そこの塩梅が難しく、家でも演じ方について考えていたのですが、最終的には(アフレコ)現場で種崎さんや小林さんのお芝居を聞いて出たものを大切にしようと思いました。

実際にアフレコをしてみると、自分が用意していた以外の感情が自然と出てきました。そういう意味でも一緒にお芝居ができる環境はとてもありがたいなと思います。特に、フリーレンがギャグ調になる種崎さんのお芝居は、予想以上のコミカルさで演じていて、フリーレンがより可愛らしく感じられました。

一方で少し冷たい目で見ているフェルンとの対比がまた好きです。

種崎:「ギャグだー!」とバキバキに意識してはいないのですが(笑)。私もシリアスなシーンでも、コミカルなシーンでも、基本はその場の空気、受け取ったものに返すことが一番大切だなと思ってお芝居をしていました。

ただ、フリーレンを演じていて個人的に思い始めたことがあって……フリーレンはミミックに自分から噛まれに行っているんじゃないかなと(笑)。こんなに強い人が、ミミックに噛まれて「暗いよ~! 怖いよ~!」ってなるわけがない。どうとでもできるだろうに!って(笑)。

市ノ瀬:フリーレンならミミックに噛まれても自力で脱出できそうですよね(笑)。助けてもらうのも込みで楽しんでいそうな気がします。それくらい噛まれることが多いので(笑)。

種崎:「開けたらこうなるでしょ!」「お約束でしょ!」「楽しい!」と、あえてそうしているんじゃないかと思うんですよ。ヒンメル(CV:岡本信彦)に「旅は楽しんでナンボ」と教えてもらっているので(笑)。そう考えると振り切ってお芝居をした方がいいのかなと、「暗いよ~! 怖いよ~!」のセリフでは普段のローなテンションを一旦忘れて演じています。



種崎「市ノ瀬さんは一生懸命ちゃんとしようとしている人!」


――シュタルク役の小林さんが「種崎さんと市ノ瀬さんは二人とも落ち着いた空気感が似ていて姉妹のよう」とコメントしていたのを拝見しました。おふたりは、似ていると感じることはありますか?

市ノ瀬:どうなんですかね? 2人で旅をしている時の現場は落ち着いた空気感でしたけど。

種崎:静かでしたねぇ。(市ノ瀬と)ご一緒したことはあったものの、ここまでガッツリご一緒するのは初めてで。フリーレンとフェルンはそこまでテンションの高いキャラクターではないですし。だけど、シュタルクが入ってきてからは、「騒がしいな」と思うくらい急に賑やかになって(笑)。

市ノ瀬:後々、小林さんがあえてそうしてくれていたと聞きましたね(笑)。

種崎:私も最初は役者として(市ノ瀬と)似ている部分があるのかなと思っていたのですが、千晃さんはまだ私たちのことを分かっていないです。私と市ノ瀬さんはパッと見では似ていますけど、実際は全く似ていないです!(笑)

市ノ瀬:あはは(笑)。

種崎:キャラ(フリーレンとフェルン)のまんまではあるんですけど、私の方がゆるいというか……でも、きっと市ノ瀬さんもちゃんとしていない! 一生懸命ちゃんとしようとしていると思います!(笑)

市ノ瀬:はっ……! 見抜かれ始めているかもしれないです(笑)。この仕事を始めてからちゃんとしようと思いました。不器用なので、できていない部分もあるんですけど……。

種崎:アフレコ中に私が黒いジャケットを着ている時、猫の毛がついていて。千晃さんから「種さん、猫の毛がついていますよ」と言われたんですね。私自身、ついていようがどうでもいいので、「本当だね~」と言っていたら、すぐに(市ノ瀬が)コロコロを出してくれて。「フェルンかよ……まんまやん……」と思いました(笑)。私はコロコロなんて持ったことないよという感じなので、そういうところも違う。

市ノ瀬:(笑)。

種崎:ちゃんとしている部分もちゃんとある。でもちゃんと「しようとしている」を強く感じる。説明するのが難しいけれど、私から見た市ノ瀬さんは現状そんな印象です(笑)。

――すごく理解できました(笑)。市ノ瀬さん的にはどう感じていますか?

種崎:なんでも言ってください!!!

市ノ瀬:いやいや! そうですね……(逡巡しながら)男気があるな、と思います(笑)。

種崎:ふふ(笑)。

市ノ瀬:役者として、歴戦の猛者という感覚があるんですよね。座長としてお芝居で見せてくれている。キャラクターへの向き合い方もすごく学びが多くて、種崎さんが現場にいらっしゃると引き締まる感じがします。

種崎:それがいい方向に作用していたらいいんですけどね……。緊張させているとしたら嫌だなと。

市ノ瀬:とてもいい方向に作用しています! メインキャラクターとして作品をご一緒していて、たくさん学ばせていただいていると思っています。



人生に大きな影響を与えた出来事


――フリーレンにとっての勇者一行との旅のように、おふたりの人生に大きな影響を与えた出来事はありますか?

種崎:たくさんある中でパッと思い浮かんだのは、TVアニメデビュー作(『となりの怪物くん』)の打ち上げの時のことですね。その時はまだ、ほとんど仕事をしていなかったのですが、打ち上げの最後に副監督(長沼範裕)が「また一緒に仕事をしたいから消えないでよ!」と言ってくださって。そして、後々その方が監督をやられた作品では主演としてご一緒することができました。あの言葉で「消えてなるものか!」と思って、ここまでやってこられたことは大きな出来事です。

――その言葉が仕事の原動力に繋がっていたということですね。

種崎:はい。もちろん自分がやりたいからこの仕事を続けているのですが、仕事をしていく中で出会った大好きな人たち、尊敬できる人たちとこれからも一緒に仕事をしていきたい。一緒に仕事をしていられる自分でいたいという思いも同じくらいあって。それを最初に自覚できたのがが、この出来事だと思います。

――市ノ瀬さんはいかがですか?

市ノ瀬:声優を目指して事務所のオーディションを受けた時、家族がすごく応援してくれて。事務所が決まった時には、すごく喜んでくれました。その姿を見て「この仕事で自分はしっかり歩んでいかなきゃ」「絶対に成し遂げてやる!」という気持ちになったことが、この仕事をしていく上での大きな出来事だったと思います。



人生を旅に例えるなら「まだまだ登り始め」


――人生を旅と例えるとすると、おふたりの現段階での旅の目的は何ですか?

種崎:現段階というか、たぶんずっとそうなんですけど……旅の目的を探すための旅をずっとしていますね。目的がずっと分からないし、ずっと考え続けていると思います。

あと、旅の目的とは少し話がズレるかもしれませんが、私は『フリーレン』の中で一番好きなのがヒンメルの「クソみたいな思い出しかないな」というセリフなんですね。死ぬ時には、この言葉を笑って言える人になりたいなとこの作品を通して思いました。

市ノ瀬:人生という旅の目的って私には壮大なテーマ過ぎて、10年後も分かっていないような気がします。ただ、人生を通してずっと成長し続けていきたいとは思っていますね。分からないことでも、成長のために挑戦したい。おばあちゃんになっても、何かしら変化していたいですね。それを旅の目的と言うのかは分からないのですが、そうありたいとは思います。

――その旅の目的を山に例えるとするならば、今は何合目くらいだと感じますか?

市ノ瀬:私、山に登ったことがないので、どのあたりなんだろう(笑)。

種崎:私も(登ったこと)ない(笑)。

市ノ瀬:でも、まだまだだとは思います。登り始めている感じです。

種崎:同じく、まだまだ登り始めですね。山の上の方にいる方々がすごい方だらけで、途方もなさすぎて…上はまだまだ霞んでるぜ…あはは、まだ麓が見えるぜって感じです(笑)。

――ありがとうございます。最後に、『葬送のフリーレン』の登場人物の中で一緒に旅をするとしたら誰と旅をしたいですか?

種崎:うーん。ヒンメルじゃないですかね?

市ノ瀬:そうですね。ヒンメルとフェルンがいいな。

種崎:私もヒンメルかフェルンのどっちかがいいかな。

市ノ瀬:2人ともちゃんとしていますよね。安心感がある。

種崎:ヒンメルなら危険な目にあったとしても絶対に助けてくれると思いますし。

市ノ瀬:フェルンも世話焼きだから。「もう」って言いながらも助けてくれそう。

種崎:ああでも…私はフェルンのお母さん的な部分とどこかで衝突しそうな気がするな…。なので、私はヒンメルで!

市ノ瀬:なるほど(笑)。私はヒンメルとフェルンとパーティーを組みたいです。とはいえ、ヒンメルとフェルンだとどんな化学反応が起きるんだろう。

種崎:そっか、(作中では)絶対に交わらない2人だものね。

市ノ瀬:意外と静かなパーティーになりそうだなって(笑)。ヒンメルの発言に対してフリーレンはスルータイプですけど、私とフェルンは「あっ……」と止まってしまいそうなので、だんだん何も発言しなくなるかも。ヒンメルのおちゃらけた感じが失われてしまう気がする……。そう思うとちょっと切なくなりますね(笑)。



TVアニメ「葬送のフリーレン」

■放送情報
2023年9月29日(金)21:00~日本テレビ系「金曜ロードショー」にて初回2時間スペシャル放送
2023年10月6日(金)より日本テレビ系毎週金曜日23:00~「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」にて放送

■スタッフ
原作:山田鐘人・アベツカサ「葬送のフリーレン」(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
監督:斎藤圭一郎
シリーズ構成:鈴木智尋
キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子
音楽:Evan Call
アニメーション制作:MADHOUSE

■キャスト
フリーレン:種崎敦美
フェルン:市ノ瀬加那
シュタルク:小林千晃
ヒンメル:岡本信彦
ハイター:東地宏樹
アイゼン:上田燿司

(C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
《阿部裕華》
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