『アナと雪の女王』『ベイマックス』、そして『ズートピア』と次々と傑作を創り出し、大ヒットを実現するウォルト・ディズニー。多くのファンの心を捉えるそのアニメーション映画の勢いは、2016年以降も続きそうだ。6月17日、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で、ディズニー・アニメーションの最新作『モアナ』のプレビューイベントが開催された。映画はまさに制作進行中ということもあり、ここで紹介されたのは映画から抜取られた何本もの映像、設定、美術の数々である。これをジョン・マスカーとロン・クレメンツの両監督が舞台に立ち、自ら作品を解説した。およそ1時間にも及ぶたっぷりのトークと映像に、会場を埋め尽くした観客は大興奮の一日となった。まだ一本の映画として完成はしていないが、その美しい映像と主人公モアナの成長を描いたストーリーは観客の心を揺さぶるには十分すぎる出来だった。監督によれば『モアナ』のアイディアは、南太平洋のフィージー、サモアを訪れたことがきっかけになっている。そこから広大な海と眩しい太陽が注ぐ島々を舞台にする映画が実現した。オープニングは、あたかも本当にあるような世界創生の神話から始まる。小さな島に住むモアナは、語り部の祖母に導かれ、かつて大洋を航海した船を見つける。大海に乗り出したモアナは太古に失われたあるものを見つけ、さらに伝説の男マウイと巡り合い、共に伝説の島を探す冒険に乗り出す。もちろんラストは伏せられたが、波乱万丈のエンタテイメントであることは十分伝わる。一方でロン・クレメンツ監督からは、ひとりの女性の自立を描くというコンセプトが明らかにされた。『アナと雪の女王』『ズートピア』とヒロインの成長物語を得意とするディズニーだけに、本作にも大きな期待をしてよいだろう。ディズニー・アニメーションには、これまでにも中東の『アラジン』、中国の『ムーラン』など欧米以外を舞台にしたアニメーション映画を制作している。それはエスニックな魅力を生み出した。今回も南太平洋らしい開放的な雰囲気、主人公をはじめとするキャラクターの黒い髪、褐色の肌はエキゾティックだ。豊かな音楽も地域の伝統もたっぷりである。一方で、本作から伝わるのはむしろ普遍的な感動だ。美しい海、空、心を惹くキャラクター、真っ直ぐなストーリー。『モアナ』が国境を越えて愛されるのは間違いなさそうだ。事実フランス・アヌシーでは、プレゼンテーションの後には、会場に大きな拍手が鳴り響いた。『モアナ』 の全米公開は11月23日、日本でも2017年3月に全国公開される。モアナと出会える日を楽しみに待ちたい。[数土直志]
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