IPブームに沸く 劇的に変化する中国のアニメーション産業 ~杭州アニメフェスティバルを訪ねて~第1回 | アニメ!アニメ!

IPブームに沸く 劇的に変化する中国のアニメーション産業 ~杭州アニメフェスティバルを訪ねて~第1回

イベント・レポート

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IPブームに沸く中国で劇的変化を遂げつつある中国のアニメーション産業
~2016杭州アニメフェスティバルを訪ねて~

[増田弘道]

4月末から5月初旬にかけて杭州で開催された第12回中国国際動漫節(China International Cartoon &Animation Festival)に3年ぶりで参加してきた。尖閣諸島問題に端を発する反日デモによって前回の訪問からブランクが生じたが、その分、現在中国のアニメーション産業が直面している変化の大きさを間近に感じ取ることができた。実質滞在日数わずか2日間という強行軍であっため、全てを網羅できているわけではないが、IP(Intellectual Property)ブームに沸く中国アニメーション産業の動向を伝えられたら幸いである。

■ 熊との遭遇に驚く

2009年に本サイトで第6回目の杭州アニメーションフェアについてのレポートを書いたが、正直に言うならばその当時ことさら取り上げるべきビジネス的内実はなかった。それから7年後の2016年、中国は確実に様変わりを遂げていた。
写真1は杭州アニメフェアのメイン会場(建国飯店)とは別に設けられたビジネエリア(2011年までメイン会場であった世界第一飯店)における作品プレゼンテーション風景である。熊の着ぐるみの横に筆者がいるのは、メイン会場からビジネスエリアへ移動中に広州のアニメーション情報誌「中国動漫週間」の編集長鐘路明氏と遭遇、そのまま「この作品」の発表会場へ同行しステージを見ていたら名前を呼ばれて壇上に上がるハメになったためである。

この作品とは『熊出没』(写真2)。2012年からCCTV14(中国中央電視台のキッズチャンネル)ではじまったキッズ向けアニメーションで、今回お披露目になった『熊出没探検日記』で8シーズン(1シーズン=13分×52話)を数える人気作品である(年数とシーズン数が合わないのは、中国は毎日放映するアメリカと同じスタイルであるため)。
中国の5大アニメーションチャンネル「TOONMAX(上海)」、「優漫カートゥーン衛星チャンネル(江蘇省)」、「嘉佳カートゥーン衛星チャンネル(広東省)」、「Golden Eagle cartoon(江蘇省)」、「少年衛星チャンネル(北京)」の中の二つのチャンネルで視聴率1位(北京、広東)を獲得、江蘇省では2位と4位にランキング(別シーズン作品)されているヒットシリーズである(「中国動漫週間」調査)。

■ コナンやドラえもんを超えていた中国の劇場アニメーション

驚いたのはこの作品の映画興行収入。初の劇場版『熊出没過年』(2014年)が2.48億元、翌2015年の二作目『熊出没雪鈴熊風』が2.9億元という驚くべき成績を収めたのである。2.9億元といえば日本円で52.2億円に相当(1人民元=18円)、2015年の中国国産アニメーション映画年間興行収入の2位となる数字である(表1)。これは日本の劇場アニメでトップだった『バケモノの子』58.5億円とそれほど変わらず、コナンやドラえもんより上である(以下、中国の興行収入や概況については『2015中国動画映画発展報告』より引用)。
以前私がこのアニメフェアに参加していた期間(2009年~2012年)にはこのような劇場アニメーションのブレイクは想像もできなかった。あの国民的アニメーションである『喜羊羊』の劇場版でも最高興収は1.66億元(29.9億円/2012年)、劇場版7作の平均は1.16億元(20.9億円)であるが、『熊出没』は劇場版一作目にしてそれを軽々と打ち破ってしまった。

■ 3年間で中国製アニメの興行収入が5.2倍に

前回訪れた2012年中国国産劇場アニメーションのトータル興行収入はわずか3.94億元(70.9億円/1元=18円)。ところが昨2015年にはそれが20.54億元(369.7億円)とわずか3年で5.2倍にもなった(作品数は20作から43作と倍増)。2015年の日本の国産アニメのトータル興行収入が467.2億円(筆者調査)であるから、同規模のレベルに急速に接近しつつあると言えるであろう。
だが、これに海外アニメーションの興行収入を加えると中国アニメーション興業市場は一気に44億元=793.4億円となる。日本のそれが593億円であったので、アニメーション興行における潜在的なパワーはすでに日本を上回っているのである。
『熊出没』の製作者である「華強方特動漫有限公司」は深センの会社で本業は遊園地の企画・プロデュース業とのこと。そこから発展してアニメーション製作に進出して大成功を収めたのだが、他業種から参入して大きく開花したこのような事例もあってか、現在中国においてはアニメーションビジネスに対する評価が大いに高まっているのである。

■ 日本製アニメが中国を席巻した1980年代、90年代

中国の動画産業は手塚治虫が影響を受けたと言われるワン・ブラザースの『鉄扇公主』から、持永只人(中国名方明)が立ち上げに尽力した上海美術製作所(上海アニメーションスタジオ)を経て、国民的作家盛特偉の水墨動画に見られるような高度な芸術性を誇っていたが、1966年の文化大革命によってその伝統に大きな断絶を来した。それは開放政策の時代になっても回復できないほどのダメージであったため、その間隙を縫う形で『鉄腕アトム』をはじめとする日本のアニメが1980年代から2000年代にかけて一世を風靡することになった。そしてこの間に生まれた80后、90后(文革以降の1980年代、90年代に生まれた新世代中国人)は日本のアニメに直撃され、マンガ、ゲームと共にどっぷり日本文化に浸りながら成長するのである。彼らは大人になってもアニメを見続け、人口でいうと3億人に達するその世代が今なお日本製アニメの最大の消費者層となっているのである。
《animeanime》
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