映画「アーロと少年」デニス・リーム プロデューサーに訊く“ディズニー/ピクサーが届ける友情”

インタビュー

映画「アーロと少年」デニス・リーム プロデューサーに訊く“ディズニー/ピクサーが届ける友情”
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ディズニー/ピクサー最新作『アーロと少年』は恐竜が絶滅しなかったもう一つの地球を舞台に、弱虫な恐竜・アーロと怖いもの知らずの人間・スポットの冒険を描いたファンタジーアドベンチャーだ。知性を持った恐竜の姿や、アーロとスポットが迷い込む大自然の荒々しさ、そして言葉を交わせない二人の種を超えた友情が、ピクサーならではタッチで描かれている。
3月12日のロードショーを直前に控え、プロデューサーのデニス・リームさんにお話を伺った。VFXスタジオのインダストリアル・ライト&マジック(ILM)出身で『スター・ウォーズ/エピソード3』の製作を務めるなど異色の前歴を持つ彼女が、作品の魅力や製作秘話を解き明かした。
[取材・構成:高橋克則]

『アーロと少年』
http://www.disney.co.jp/movie/arlo.html

――絶滅を免れた恐竜がユニークな進化を遂げているというアイデアはどのように生まれたのでしょうか?

デニス・リーム(以下、リーム)
『アーロと少年』は2009年に企画がスタートし、当初の監督であったボブ・ピーターソンが世界観を生み出しました。彼は子供のときに万国博覧会で恐竜展を訪れて、子供ながら多くのインスピレーションを受けたんです。その気持ちを長年胸に抱いていて、「ピクサーならではの恐竜を作ってみたい」と考えたことが制作のきっかけになっています。

――畑を耕したり牛を飼ったりする恐竜たちに目を惹かれますが、ほかの動物も我々の地球とは異なる姿をしてますね。

リーム
恐竜が絶滅しなかった影響で、あらゆる生命体が独自に進化したんです。動物たちはかなり自由にデザインしていきました。とはいえ、あまりに荒唐無稽すぎてもいけないので、ジュラ紀に存在していた生物をモデルにしました。そこにピクサーなりの味付けを施すことによって、魅力的で興味深いキャラクターを創造できたと思っています。


――広大な自然の風景も印象的です。あの背景美術は実在の場所をモデルにしているのでしょうか?

リーム
谷で有名なワイオミング州のジャクソンホールをロケハンしました。背景は実際の地形をそのままベースにしています。アメリカ地質調査所の地形データをもとに、アート部門がイマジネーションを加えて作品舞台を構築しました。本編に登場するギザギザ山もグランド・ティトンという山がモデルです。西部劇の『シェーン』に出てきたので、ご存じの方も多いかも知れませんね。でも『アーロと少年』は恐竜の世界が舞台なので、より尖ったかたちにデフォルメしました。まるで恐竜の歯のようだと思いませんか?

――確かに迫力があります(笑)。背景はとても写実的に描かれていますが、恐竜たちはデフォルメされたデザインです。その理由について教えて下さい。

リーム
まず自然や背景をリアルに描いたのは、冒険に危機感を持たせるためです。アーロが遭遇する嵐や洪水を、ある種のパターンのように戯画化して描くこともできました。でもそれでは自然の脅威を表現できなくなってしまう。観客にインパクトを与えるためには本物の自然らしくする必要があったんです。
一方でアーロとスポットを可愛らしいデザインにしたのは、たった二人で見知らぬ土地に放り込まれた不安な気持ちを描くためです。キャラクターに愛らしさがないと、そういった心象を描くのは難しいですからね。そこでリアルな自然とデフォルメしたキャラクター、二つのスタイルを組み合わせようと決めました。

――ピクサーはこれまでも様々なコンビを描いてきました。その中でもアーロとスポットは最もサイズが異なるペアではないでしょうか?

リーム
大きさがまったく違う二人をどうやって同じフレームに収めるか。それが『アーロと少年』にとって最大のチャレンジでした。アーロの全身を映そうとすると、スポットは豆粒のように小さくなる。彼も重要な主人公の一人ですから、それでは困ってしまいます。もともとアーロはもう少し大人の設定でしたが、子供の恐竜にすることでスポットと一緒にギリギリ収まるサイズになりました。


――二人が冒険の途中に出会うT・レックスの家族が印象的でした。とくに父親のブッチはアーロに指針を示す重要な役柄でもあります。あの一家はどのように生まれたのでしょうか?

リーム
実はT・レックスにはモデルとなった人物がいるんですよ。オレゴンで牧場を営んでいるジョー・マッケイという白人の一家で、映画と同じようにとても豪快な人たちです。ハイチから黒人の子供を5人も養子にとって、田舎の牧場で一緒に暮らしています。お父さんは完全にブッチそのものですね。子供たちの教育方針も手取り足取り教えるのではなく「俺の背中を見て覚えるんだ」というスタイルでしたし(笑)。T・レックスの造型にはかなり影響を受けました。

――リームさんはVFXスタジオのILMで『ハリー・ポッターと賢者の石』や『スター・ウォーズ/エピソード3』など実写映画にも携わってきました。その経験はピクサーでどう役立っていますか?

リーム
ILMの技術者がピクサーの技術部門に移ることはありますが、制作チームに入るのはかなり珍しいんです。そういった意味で、私はかなり変わった経歴と言えるでしょう。ILMはエフェクト会社なので、クライアントから作品単位で依頼を受ける、いわゆる請負仕事なんです。そのため自分たちの能力を発揮して作品を生み出すだけでなく、顧客が求めるニーズにも応えなければいけません。クライアントが何を求めているのか。それをきちんと感じ取って理解して、映像に反映させる仕事でした。その経験は映画プロデュースでも重宝しています。

――お気に入りのシーンはありますか?

リーム
アーロとスポットの二人が親友になって、鳥たちを追いかけて走っていくシーンが大好きなんです。自分の人生にとって初めての友達ができた喜びが感じられます。人生そのものが希望にあふれていて、とても気分が高揚する。あの場面は何度観てもグッと来ますね。日本の皆さんにも気に入ってもらえると思いますよ。

――本日はありがとうございました。


『アーロと少年』
3月12日(土)ロードショー
(c)2016 DISNEY / PIXAR.
《高橋克則》

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