TPPが映像ビジネスに与える影響は?弁護士・福井健策が講義 VIPO主催セミナーレポ | アニメ!アニメ!

TPPが映像ビジネスに与える影響は?弁護士・福井健策が講義 VIPO主催セミナーレポ

イベント・レポート

2016年2月19日、都内・銀座ユニークにて、VIPO(NPO法人 映像産業振興機構)主催セミナー「TPPで変わる著作権とビジネス慣行」~今後5年間で何を準備すべきか?~」が開催された。
講師として、エンターテイメント・コンテンツ業界のクライアントを多数持つ弁護士・福井健策氏が登壇。昨年大筋合意に至った環太平洋パートナーシップ(TPP)協定が映像コンテンツ業界に与える影響と、今後の対策について講義した。
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■著作権の保護期間延長

TPP問題については、著作権などをめぐる知財条項が大きな議論の対象となってきた。とくに影響が大きいのは、「著作権などの保護期間の延長」「非親告罪化」「法定賠償金の導入」の3つだという。
保護期間の延長については、これまでは「著作者のの死後50年」が原則だったが、今回の改正により「著作者の死後70年」と期間が延長された。これは日本の映像コンテンツ側にとってメリットは乏しいという。著作権使用料の国際収支を鑑みるに、アメリカはディズニーやアメコミなど昔からある作品が強い一方で、日本はゲーム、アニメ、マンガ分野など比較的新しい作品が人気を集める。保護期間が延びたところでその恩恵は受けられないのだ。
さらにデメリットとして、相続機会が増えることで「権利処理が困難化」するという。作品が死蔵されてしまう可能性が高くなり、多メディア展開やデジタル化のビジネスに打撃を与えることが懸念される。

■「非親告罪化」で二次創作文化に影響は?

続いて「非親告罪化」について説明。日本では著作権侵害の際「最高で懲役10年又は1000万円以下の罰金」と重い刑罰が科せられるが、親告罪のため実際に刑事告訴に至るケースは少なかった。この非親告罪化は二次創作文化やビジネス活動の萎縮を招く懸念があるとして、当初より議論が盛んに行われてきた。
大筋合意では、作者からの告訴が無くても起訴できるのは、以下の3つをすべて満たした際に限定した。「市販作品の利用」「原作のままの利用」「権利者の利益を不当に害する場合」が条件となり、二次創作文化やクリエイターが萎縮しないよう留意された形だ。
これまでパロディや二次創作については“グレーゾーン”であったが、「原作のままの利用」ではないため著作権侵害の心配はないという。だが、実際のゲーム映像をそのまま使う「ゲーム実況動画」などは著作権侵害にあたる可能性があるとして、多様なユーザー発信への影響は大きいという。

■法定賠償・追加的賠償

続いて、大きな注目を集めていたのが法定賠償の導入だ。日本では賠償金の水準が低く、これまでは権利者の実損害分のみの賠償しか認められなかった。アメリカでは1作品あたり最大15万ドルまでと高額の賠償金が定められている。これが導入されれば権利者側の泣き寝入りの防止を期待できる反面、知財訴訟の増加や賠償金増加にともなう企業・クリエイターのリスク増大が懸念されてきた。
改正概要では、権利者団体の使用料規定がある場合、該当額を請求できるようになった。従来よりも賠償金は上がるが、極端に高額化はしないという。著作権侵害への対策は別に考える必要があると話した。

■コンテンツ側は何を準備すべきか?

これらの問題点を踏まえて、コンテンツ・ビジネス側は何を準備すべきなのか。福井氏は海賊版からの被害よりも、GoogleやAmazonなど、巨大プラットフォームがコンテンツ流通を寡占していまうことが脅威だという。プラットフォームと幸福な共存関係をつくりつつ、コンテンツ側も独自プラットフォームを構築し、自ら作品を発信していく必要があると話した。
独自プラットフォームやデジタルコンテンツを拡大していくうえで、大きな障害となるのが「著作権の壁」だ。過大な権利処理コストをいかに下げるかがポイントとなる。
福井氏は権利処理コストを下げる方法として、「マルチユース契約」のほか「利用裁定制度の活用」を紹介。これは権利者が不明な場合、捜索した証拠を文化庁に提出すれば、補償金を供託することでコンテンツ利用可能となる制度だ。

さらに利用者と許諾者双方の権利処理コストを下げるため「オープン・ライセンス」の活用を訴えた。実例として、著作物の取り扱いを条件別に明記した「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC)や、二次創作同人誌を認める「同人マーク」を紹介。オープン・ライセンスの普及によって、ユーザーを巻き込んでのコンテンツ展開が盛んになることが期待される。
セミナーの最後には質疑応答の時間が設けられ、来場したコンテンツホルダーや事業者から続々と質問があがっていた。コンテンツ業界の今後について学べる貴重な機会となった。

VIPO(NPO法人 映像産業振興機構 http://www.vipo.or.jp/

[アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]
《沖本茂義@アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.biz》
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