アニメのプロデュース・演出を学ぶ“NUNOANI塾”の講義と体験談 受講生に訊く

特集

布川郁司氏
  • 布川郁司氏
  • 阿部記之氏
  • 布川郁司氏
  • 阿部記之氏
  • 中川雄介氏
スタジオぴえろの創業者・布川郁司氏がアニメ業界を志す人や業界人へ向けた塾を開いて今年4月で4年目を迎える。NUNOANI塾の特色はプロデューサーや演出家を育成するための私塾だ。1年間のカリキュラムを通してその道の大ベテランから講義を受け課題をこなし、コミュニケーションを通じて成長していく。
講義は布川郁司氏によるプロデュース、阿部記之氏、水野和則氏、亀垣一氏よる演出、ストーリーコンサルタントの岡田勲氏によるシナリオなどまで幅広い。

1月22日(土)。下北沢・放送表現教育センターにて行われたNUNOANI塾の布川塾長とアニメ監督・演出の阿部記之氏の授業を取材した。この日、参加したのは約10名。参加人数の絞られた「塾」という場にふさわしくアットホームな雰囲気で授業は進行していく。毎年15名程度の塾生を募り、応募多数の際には塾長が直接面談をして判断しているとのこと。2015年4月からはじまった3年目も間もなく修了を迎えるという時期での取材だ。
また、布川塾長と講師の阿部記之氏、塾生による座談会インタビューも行った。NUNOANI塾を通じて、何が掴めるのか、掴んだのか、塾の空気感もつかめるだろう。
[取材・構成=細川洋平]

NUNOANI塾 http://nunoani-project.jp/

■ 布川塾長によるプロデューサー講義

時間になると布川塾長によるプロデューサー講義がはじまった。この日はスタジオぴえろ制作作品として現在メガヒットを記録している『おそ松さん』の話題を皮切りに作品作りの最初の要でもある「企画書」について授業が進められた。布川塾長は『おそ松さん』を「いろんな企みが込められている。作品の勝利でもあるし、企画の勝利だよね」と話した。

布川塾長は「企画というのは『企み事を画策(考える)』ということ」と定義。おもしろいと思えない企画書には企みがないという。また「書」にとらわれないことが大事だとし、書き上げて満足するのではなく、企画書にいかに「熱」を込めるかが重要だと布川塾長は話した。
「企み事」と「熱」が伝わるのであれば、企画書が何十枚にも及ぶ必要はない。例えばオリジナルの企画はどこにも実体・実績がない。それを実在するもののように熱をもって伝えることがプロデューサーの仕事だと話した。塾生に言い渡された次回の課題は「企画書の作成/プレゼン実演」。「プレゼンは当然緊張する。何度も鏡の前で練習するんだよ」とアドバイスも交え授業を終えた。


■ 阿部記之監督による演出講義

次の授業は阿部監督の演出講義だ。前回の課題は「TVアニメ『ディバイン・ゲート』あるいはTVアニメ『黒執事』のOPコンテ撮を制作する」というものだった。生徒が提出した90秒の課題作品を鑑賞。提出されたのは6作品ほど。上映後、阿部監督と制作者の質疑応答が行われた。
「コンセプトは?」「このカットの意図は?」「もっとカット割りのテンポを上げた方がスピード感が出るね」。作ってみるとわかることがある。テロップは音楽に合わせる? 歌詞はどこまで拾う? まずどんなコンセプトを立てる? 阿部監督は「人それぞれだけど」と前置きをし「自分ならこうする」と道を示していった。それを踏まえてTVアニメ『ディバイン・ゲート』の本放送で使用されているOP映像を見る。手に取るように意図が明確に伝わってくる。塾生たちは熱心に画面を見つめていた。
絵コンテ実習も行っている。題材は阿部監督が手がけた作品の実際のシナリオだ。提出された絵コンテを全員で見ながら、演出意図やカット、アングル、カメラ位置などにアドバイスを加えていった。

布川塾長の授業では業界の裏話を交えたプロデューサーとしてのマインドや、塾長本人の膨大な経験・知識から来るさまざまな数値に触れることができる。阿部監督の授業からは現場の息づかいや、実際に演出・絵コンテではどこまでを考えるのかがハッキリとわかる。
塾長が認めた企画はぴえろの会議にかけているという。阿部監督も現場を体験させようとさまざまな工夫を凝らしていた。クリエイションの世界に「絶対」はない。だが、業界にとても近い場所であることは確かだ。

■ NUNOANI塾とは?

授業後、布川郁司塾長、阿部記之監督からは教える立場として、塾OBで大手メーカー勤務のI氏、CGアニメーションスタジオ勤務の現役塾生の中川雄介氏の2人からは教わる側として、どのようなモノを得られるのか、座談会形式で語ってもらった。

――開塾から間もなく4年目を迎えるということで、より見えてきたものもあると思います。まずは布川塾長にうかがいたいのですが、NUNOANI塾とはどういう場なのでしょうか。

abesan布川郁司(以下、布川) 
3年前にスタジオぴえろの社長を退任したところからはじまります。長年業界でキャリアを積んできて感じていたのは、業界をどう生き残っていくのか。夢を持って入ってくる人も現場に追われて理想と現実とのギャップに疲弊してやめていってしまうんです。それはもったいないですよね。だから業界を大きな視点で捉えたり、業界を担うような人を養う場が欲しいという思いから設立しました。

――どうして私塾という形を取っているのでしょうか。

布川 
ぴえろは元々演出家集団として立ち上げたんです。その後、阿部記之さんや水野和則さんをNUNOANI塾のようなところで演出家として取った時代があったんですよ。今みたいに隔週土曜日、10人ほどを教えて。阿部さんや水野さんは今、実を結んでいる。じゃあ次代を担う人材を今度は教えてよ、と声をかけました。またプロデューサー、演出には企画やストーリーの理解も必要とストーリーアナリシストの岡田さんにも協力をお願いしました。

――原点回帰とも言えるわけですね。阿部監督はお誘いを引き受けるかどうか、迷ったりしなかったのでしょうか。

abesan阿部記之監督(以下、阿部) 
もちろん、布川さんがやるならどんなことがあってもお付き合いしましょうという思いでした。布川さんがおっしゃったように僕はぴえろで教えていただいていました。普通は現場にアニメーターや制作、撮影で入ってステップアップしていくものですが、僕には「育てたいから演出助手を取る」という機会があった。それがなければ演出になるのは非常に大変だったと思うんです。制作現場も「いきなり入った人が演助からなんて」という葛藤もあったと思いますけど、僕や水野はラッキーだったと思います。

――演出の講師には現在阿部監督をはじめ3名いらっしゃいますが、プロデューサーを目指す人も対象とする本塾でこうしたラインナップはなぜなのでしょうか。

布川 
プロデューサーになる人も演出を覚えた方がいいと思ってるんです。アメリカではプロデューサーが監督をしたりその逆もありますから。プリプロダクションでは「企画を作って、お金を集めて、監督を選んで、シナリオを選ぶ」そこまでがひとつの役割。どんな立場にもなる可能性は持っていた方がいいんです。現在演出の講師は阿部、水野、亀垣(一)の3名です。それぞれ独自のスタイルを持っている。演出を目指している人は自分が目指すスタイルを早く見つけてほしいと思っています。

――阿部監督の授業ではコンテ実習もありますね。

阿部監督 
描かないとどうにもならないですから。コンテチェックはかなりやってきているので、アドバイスや通用するしないの判断もしてあげられます。こっちが困るくらいたくさんコンテを描いてくるような人に出会いたいですね。

■ 塾生からの声

――Iさんは塾生として昨年度1年間通っていました。どうしてNUNOANI塾を選んだのでしょうか。

I 
私は非常にお堅いメーカーに務めているのですが、起業したいと思っていたんです。アニメーターとクライアントのマッチングサイトを作れればと考えていて。アニメ業界の外から見ているとそういう場が必要に思えたんです。ただ一度中で見てみないとダメだなと思って。そこでまずNUNOANI塾に入りました。

布川 
聞いたら非常に有名な企業を辞めてもいい覚悟というので、僕は全力で阻止しました。

I 
進路相談にも乗っていただいて。塾はすごく刺激を受けました。私の会社では柔軟な発想を持っている人が少ないんです。そこでアニメの企画書をもって社長プレゼンをして、社長賞をいただきました。塾は自分の人生のとても大きな一部分になっていると感じています。

――知らない人はいない企業です。そこで社長賞というのはすごいですね。阿部監督をはじめ演出の講義はどう感じられましたか?

I 
私は例外というくらい基礎もなかったので、全部が目からウロコでした。短い映像にもコンセプトを込めて作る。ただ企画も同じだと思うんです。いろんな要素をひとつのコンセプトでもって集約させていく。そこに塾長のいう「熱」というものがないとやっぱり人は動かないのかなあと思いますね。

――次にCGクリエイターの中川さんの入塾したきっかけを教えてください。

abesan中川 
今の仕事では学べない体系的な演出を学びたくて入りました。もともと映画が作りたくて、でも絵は描けないからとCG会社に入って今はディレクターチームに所属しています。でも仕事はクライアント求める演出ばかりで、自分の発想で演出する機会がなかなかありませんでした。悩んでいる時にそれこそアニメ!アニメ!さんでNUNOANI塾の記事を読んで「これだ!」と。

――それはうれしいですね。実際通ってみていかがですか。

中川 
そうですね……。今までこなすことが多かったディレクターの指示も、意図などが見えてくるようになりました。僕がディレクションする仕事も増えてきて、その時の悩みの幅というか表現の選択肢が広がりましたね。

――塾長に質問ですが、学生さんの入塾は難しいですか?

布川 
入れないわけではないんです。ただ、月謝を払ったからといって将来が保障される世界ではないことを踏まえて応募してもらえれば。あとはセンスややる気というところが大きいです。絵は描けなくてもいいです。

阿部監督 
音でもいいし絵の細かいところでもいいし、1年間で自分のこだわるところを見つけてもらえればいいですね。

布川 
1年間は受講料をもらっていますが、2年目も来たいやつはタダでいいって言ってるんです。Iくんはけっこう来てるよね。

I 
ええ、そうですね(笑)。

――ありがとうございます。それでは最後に4月からはじまる第4期に向けて、塾長からメッセージをお願いします。

布川 
作ってきたモノは私や講師陣が「プロの目線」で見ていきますから、何かあれば見せてください。塾は学校と違って塾生から提案や課題をぶつける場でもあります。実践する場がNUNOANI塾の特徴のひとつでもあるので、どんどんチャレンジし、体験してください。

[アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]
《Sponsored by NUNOANI塾》

編集部おすすめのニュース

特集