残酷歌劇「ライチ☆光クラブ」、少年たちの未熟さ、幼さ、エネルギーが残忍に”開花”する | アニメ!アニメ!

残酷歌劇「ライチ☆光クラブ」、少年たちの未熟さ、幼さ、エネルギーが残忍に”開花”する

連載・コラム

(c)古屋兎丸/ライチ☆光クラブ プロジェクト 2015
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高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義
連載第158回

■ 舞台作品から出発、コミック、舞台、そして映画化される異色のコンテンツ

この作品、原作者は古屋兎丸(太田出版『ライチ☆光クラブ』)、発表されたのは2006年、作品自体の誕生は実にユニークだ。もともとは舞台作品『ライチ☆光クラブ』、演出家・飴屋法水が1980年代に東京グランギニョルという劇団を創設、その劇団で上演されたもので、公演を観劇した原作者が作品に感銘を受け、この漫画を執筆したのである。
単行本を紐解くと、その舞台の様子が後書きに記されている。漫画の舞台化、初演は2012年、翌年に早くも再演、演出は江本純子、猥雑かつエンターテイメント性の高いステージで好評であった。今回の公演は演出に河原雅彦を迎え、新演出となる。そしてパフォーマンス演出は独特の振付で知られる東京ゲゲゲイの牧宗孝、脚本は劇団鹿殺しの丸尾丸一郎という布陣、さらなる”残酷歌劇”な予感がする。

キャストはゼラに中村倫也、主に映像で活躍しているが舞台でも『ヴェニスの商人』や『フルモンティ』等の話題作に出演している気鋭の俳優。その他、来年の大河ドラマに出演が決まっている玉置玲央(タミヤ)、ペンギンプルペイルパイルスの吉川純広(ジャイボ)、『カーネーション』等の連続テレビ小説に出演の尾上寛之(ニコ)、ミュージカル『テニスの王子様』や舞台『時をかける少女』に出演し、注目された池岡亮介(雷蔵)、ミュージカル『リボンの騎士』で好演の赤澤 橙(カネダ)、ミュージカル『薄桜鬼』の山南敬助役で注目の味方良介(タフ)、来年春の連続テレビ小説に出演予定の加藤 諒(ヤコブ)、東京ゲゲゲイのBOW(デンタク)、といずれも個性的。また独特のダンススタイルで評価が高い皇希(ライチ)、ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』の七木奏音(カノン)がキャスティングされている。
また『ライチ☆光クラブ』は映画化もされ、公開は2016年の2月13日より。メインキャストは野村周平、間宮祥太朗ら。また、ミュージカル『薄桜鬼』で注目された池田純矢、松田 凌も出演する。舞台から様々に展開する異色のコンテンツ、と言えよう。

■ ヒステリックで無情、残酷そして純粋な少年たちの”桃源郷”の顛末

秘密基地。なんだかワクワクする響きがする。タミヤが中心となって作った”光クラブ”も元々はそういった少年たちの他愛ないものであった。そこへメガネをかけた少年・ゼラが加わった。そこから少しずつ”秘密基地”が変貌していくのである。

舞台の幕開きは女教師が登場、ちょっと意味深なことをおだやかな口調で語りつつ、時折、乱暴な言葉で毒を吐く、が、その内容は真実だ。そして、舞台に現れたのは少年たちが作った基地、それは地下にあり、外の光は決して入らない、閉ざされた、息苦しい空間だ。けたたましい笛の音が響く。
皆、ゼラを”崇拝”する。「ゼラ、ゼラ、ゼラ」と叫ぶ声はどこか不気味でヒステリックだ。少年たちはあるロボットを作ることに成功する。その名は”ライチ”。エネルギー源はエキゾチックな香りの果実・ライチだ。彼らの住む街は工場が多く、油と排気ガスの匂いで常に充満している。ロボットのエネルギーはギトギトした油類では彼らの美学に反するのだ。

少年たちの”寓話”、その危ない感覚と思想を妖しく彩るダンス。エロティックで猥雑な独特の動きでその時の心情や状況を表現する。「大人は醜い」と言い放ち、女教師を処刑する、しかもとびきり残忍な方法で。そして美を求め、ライチに美しい少女を捕まえてくるように命令し、カノンという髪の長い美しい少女を連れてくる。彼女が来たことによってまとまっていたかのように見えた少年たちの間に不協和音が起こる。そしてライチにも変化が訪れる。
少年たちの想いも、ライチの想いも純粋だ。ライチに惹かれるカノンは強い少女だ。自ら考え、感じ、行動する。ロックな楽曲が少年たちの激しい想いを表現する。タミヤはゼラのやり方に疑問を抱き、彼と対決する姿勢を見せる。

成長することを拒む少年たちだが、”時”は無情だ。その”時間”に逆らおうとするゼラ、美しいままでいたいジャイボ、成長し、行動を起こすタミヤ、彼らを取り巻く少年たち、皆、本当は素直な少年だ。理想の世界を構築するが、実はそれは彼らの幻想にすぎない。それに気づき始めた時、その世界は音をたてて崩れていく。それを阻止したいゼラは”裏切り者”を残忍な方法で粛正する。本人は崇高でさしずめ”皇帝”気分なのだが、カノンに「あんたって最低!」ストレートに言われ、ヒステリックさが最高潮に達する。
中村は狂ったように何かに取り憑かれているゼラを大胆な演技で表現する。ラスト近く、本水を使ったシーンではタミヤ役の玉置と大立ち回りをみせる。玉置は正義感と友情に厚いタミヤらしい、真っすぐさを台詞に込める。カノンの七木は可愛らしさの中に秘めた情熱と信念を体現する。吉川演じるジャイボは妖しくゼラを誘惑する。3人の女性ダンサーが時折、少年たちに混じるが違和感はない。照明や映像が原作の作画を感じさせる。昭和なアングラ的などろどろとした色彩を放ちながらも、スタイリッシュで洗練された印象だ。
少年たちの未熟さ、幼さ、とてつもないエネルギー、善悪で判断するなら、間違いなく”悪”だ。しかし、こういった負の部分や心情は誰の心にもある。『ライチ☆光クラブ』はそういった観点では異彩を放つ作品だ。なお、大千秋楽は全国の映画館でライブ・ビューイングが決まっている。

残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』
12月18日~12月27日
AiiA 2.5 Theater Tokyo
http://www.nelke.co.jp/stage/opera_litchi2015/
(c)古屋兎丸/ライチ☆光クラブ プロジェクト 2015
《高浩美》
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