マイケル・アリアス監督インタビュー“SFではなくリアルに近い物語” Project-Itoh「ハーモニー」 | アニメ!アニメ!

マイケル・アリアス監督インタビュー“SFではなくリアルに近い物語” Project-Itoh「ハーモニー」

インタビュー

『屍者の帝国』に続き、11月13日に伊藤計劃原作の劇場アニメ『ハーモニー』が劇場公開となる。本作では、大災禍と呼ばれる世界規模の混沌から復興し、高度な医療社会へと移行した世界を描く。そのなかに生きるミァハとトァンの強いつながりが、大きな印象を残す作品だ。
監督はなかむらたかしさんと、『鉄コン筋クリート』の監督として知られるマイケル・アリアスさんが共同監督を務めた。同作の見どころや作品から感じたことを、マイケル・アリアス監督に伺った。
[取材・構成:川俣綾加]

Project-Itoh『ハーモニー』
http://project-itoh.com/

――今作ではなかむらさんと共同監督として一緒に制作されていますね。

マイケル・アリアス監督(以下、アリアス)
なかむらさんには『鉄コン筋クリート』の制作中に知人に紹介してもらってご挨拶したことがありました。『パルムの樹』『とつぜん!ネコの国 バニパルウィット』が好きで、その時はいちファンとしてお会いしサインをいただきました。こうして一緒に仕事をできるとは想像していなかったのでいい機会でした。

――原作を読んでみていかがでしたか?

アリアス
キャラクターが鮮明で、みんなカッコイイ。世界観もすごく魅力的で、本当にああいう未来になってもおかしくないと思います。テーマを見てみても単純にSFというカテゴリではなく、リアルに今起きようとしていることを描いていると感じました。


――監督は、どんなテーマを感じ取ったのでしょうか。

アリアス
最近僕が気になっていることと共通しています。みんなFacebookなどのSNSに、何の気なしに自分たちの色々な情報、旅行した時の写真や交際している人がいるかとか、既婚か未婚かなどを公開していますよね。こうした情報が知らないうちに吸い上げられて、企業や政府に勝手に使われて色々なことを失っている気がするんです。

――確かに、自分に関する色々なデータが収集されていますが、実感が無いので危機感は薄いかもしれません。

アリアス
秘密とまでは言わないけれど、自分たちだけが持ちえるものはそういった情報だと思うんです。なのにいつの間にか誰かに情報がプロファイルされ、管理されている。そしてプロファイルされた情報が、その人の全てだと判断されてしまう。
作中に描かれている“WatchMe”がそうですよね。政府のサーバに、本来なら自分しか知り得ない情報が集積されている。肉体は全てを管理されて健康だけど、心はどうだろう? 支配によって死んでいるんじゃないか?この作品では、今僕たちがいる世界が加速した別の形の世界を見ることができると思います。

――ビジュアル面についてもお話を聞かせてください。螺旋監察官たちのバーチャル会議のシーンは、クリーンな建造物、穏やかで清潔感ある人々とは対照的に、バーチャルの顔や体にノイズが走るという、どこか不安になる場面でした。

アリアス
制作は最後のほうだったのですが、正直、表現がどう転ぶかわからないシーンでした。バーチャル空間は、美しさとシンプルさのある安定した空間にしたり、もしくは昔のCGのようなアナログに近いデジタルのイメージにするなど色々な方法があると思います。しかし、結果的にこのような形に落ち着きました。意外と緊張感が出ていて僕はいいと感じています。正直、作っていて一番不安でしたね。たぶん僕のことを知っている人は「ここはマイケルがやったシーンだな」ってわかると思いますしね。


――制作はシーンの順番に行われているわけではないので、並べてみてわかることもあるのかな、と感じます。

アリアス
特にデジタル分野では、実際にやってみないとわからないことが多いんです。何をするにおいても初めての気分で臨まなければなりません。ある程度は仕上げてみないと判断がつかないし、確認するにもたくさんのカットを連動してみないと相対的に良いかが判断できません。SEといった効果の色々な要素をのせてみて「これはいける」と決めるんです。毎回ドキドキする一方、時間がない中でも、作ってみると予想外の良さがあったりもしますけど。

――トァンとミァハの関係性をどう捉えているか教えてください。

アリアス
男2人で制作しているから女性からしたらどうなんだろうという気持ちもあるんです(笑)。とてもウェットな印象です。ティーンエイジャーって、自分がどういう人間かを探りながら成長していきますよね。ある意味で一番純粋な時期です。
その期間において、男女関係ってわかりやすくハッキリしているけれど、トァンとミァハ2人の関係は矛盾を孕んでいます。大好きなのか大嫌いなのか、セックスではないけれど一緒になりたい、相手と融合したい。お互いがそんな存在だと思います。
純粋な感情は若い頃にしかないのですが、それが大人になってもトァンの中でずっと響き続けている。人間にとっては結局ウェットな部分が大事で、一番守らないといけないところ。ところがこの世界では、社会がそれを殺しにきているんです。

――最後に、読者にメッセージをお願いします。

アリアス
なぜ今この作品を見ないといけないか僕の中ではハッキリとしています。これはSFじゃなくてむしろリアリティのあるストーリーだからです。大切なメッセージがこの作品の中にたくさんあると思います。ぜひ楽しんでください。

――ありがとうございました。


Project-Itoh『ハーモニー』
11月13日(金)より、TOHOシネマズ新宿ほか全国劇場にて公開
http://project-itoh.com/
《川俣綾加》
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