9月19日、「あにつく2015」の業界向けセッションの2本目には、『キルラキル』などで知られる人気アニメスタジオ・トリガーの代表取締役でありベテラン演出家である大塚雅彦氏による「アニメーションの演出について」が開催された。本セッションでは、「アニメミライ2013」で制作され、続編である劇場版『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』の公開も間近に控えた短編アニメ『リトルウィッチアカデミア』を素材に、アニメ演出とは何なのか、演出家とは何をするのかを紹介、なかでもタイムシートの読み方にフォーカスし詳細な解説が行われた。大塚氏によれば、アニメ演出の仕事には、大きく分けてふたつの作業があるという。「絵コンテ」の制作と、その後の「処理演出」である。処理演出とは各エピソードの監督のようなもので、仕事内容は1.演出打ち、2.作監打ち、3.作打ち、4.美打ち、5.色打ち、6.撮打ち、7.レイアウトチェック、8.原画チェック、9.ラッシュチェックリテイク出し、10.編集(修正台本)、11.アフレコ、12.ダビング差し替え(マーキング)、13.ダビング、14.原版、15.V編集など多岐にわたる。それぞれに関して内容の概説がなされると同時に、たとえば昨今ではダビング時も絵がフルカラーではほぼそろわないなど、現実的なスケジュール状況まで含めて語られた。また上記の処理演出も、大きくは6の撮打ちまでの「打ち合わせ」とそれ以降の「チェック」のふたつに分けられるという。そのなかで、大塚氏は「打ち合わせ」の重要性を強調する。担当者の裁量で取り組んでもらい、上がりを見てから方向性を調整していくのではなく、演出家は事前に具体的なイメージを固め、打ち合わせ時にプランをしっかりと伝えることが、効率の面でもクオリティの面でも重要になるというのだ。若手はここが疎かになっているケースをよく見かけると、演出家を目指す業界人へ注意をうながした。つづいてレイアウトと原画、動画および、タイムシートの仕組みを説明。そこから中割りやカメラワークがどのように指定され、それによって実際の画面がどうなるのかを、『リトルウィッチアカデミア』のショットを使い具体的に解説した。キャラの位置を固定したまま背景だけが動く「付けPAN」など、一般視聴者からは仕組みのわかりづらい演出が、どのようなかたちで記述されているのかがわかりやすく示された。最後の質疑応答では、演出家によるリテイク出しにまで話が及んだ。大塚氏からは、リテイク出しも成果物が打ち合わせ時の指定から外れていた場合に限るべきで、結果を見てから思いつきでリテイクを出すのは可能なかぎり避けるようにしたいと、一貫した主張がなされた。プランに固執しすぎるのももちろん問題だが、どこが変更可能なのかということを判断するためにもプランが必要で、自分のなかで譲れない部分とそうでない部分を自覚し、プライオリティをきちんと決めておく必要があるという。演出家がどういった態度で作品に臨むべきかがうかがえる貴重な機会となった。[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]
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