フランスの劇場用アニメ動向 -ジブリの穴は埋められるのか- 第1回
フランスの映画市場を概観し、フランスのアニメ市場、そしてその中の日本アニメの状況について紹介したい。フランスの劇場用アニメの動向と日本の作品の上映状況を紹介する。
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フランスでの日本映画の観客動員数を見るには、まずEUが運営するLumiere(http://lumiere.obs.coe.int/web/search/)というデータベースがある。こちらはEU加盟国の劇場での映画上映と観客動員を制作国別に見ることができる。しかし、直近のデータの更新は滞りがちとなっている。
またフランス映画センターは観客動員数が100万人を超えた映画について毎年発表している(http://www.cnc.fr/web/fr/statistiques-par-secteur)。ところが日本映画は、フランスでヒット映画の目安とされる100万人を超えることはほとんどない。このため、フランスの民間の映画データベースのallocine(http://www.allocine.fr/)を使い、劇場公開された日本アニメのタイトルを検索して、観客動員数をみることした。
その結果は図 4のとおりである。
□ 圧倒的に強いジブリ映画
上記は観客動員が10万人以上と確認できた映画の一覧である。10万人以上の映画は14本あったが、そのうち10本がジブリ映画である。ジブリ人気から、「風の谷のナウシカ」「平成狸合戦ぽんぽこ」が日本の上映から時を経て劇場で初めて本格的に上映されたが、それ以外のジブリ映画は全て新作で、日本公開からあまり時を経ないで、公開されている。それだけでも日本映画としては異例といえよう。
フランスで宮崎駿監督の評価が高いことは、日本でも周知のこととなっており、それを裏付けるように、もっとも観客動員が多いのが宮崎駿監督の「ハウルの動く城」で、唯一フランスでヒットの目安となる100万人を超えている。ちなみにフランス映画センターのデータベースでも「ハウルの動く城」は100万人を超える映画に記録されているが、配給会社の関係で、米国映画として記録されている。2位も宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」で92万人と、100万人に少し欠ける数となっている。
注目すべきは3位には米林宏昌監督の「借りぐらしのアリエッティ」である。ACEプロダクションの福原秀己氏が15年1月のクールジャパン戦略推進会議で発表した資料(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cool_japan/suisinkaigi/dai1/siryo4-3.pdf)によると、海外の興行収入割合がもっとも高い日本映画は「借りぐらしのアリエッティ」で全興行収入の2割が海外からである。
米国でもっとも観客動員数が多いジブリ映画は「借りぐらしのアリエッティ」である。フランスでは宮崎駿の人気が高いことから、「借りぐらしのアリエッティ」は「ハウルの動く城」と「崖の上のポニョ」を下回っているが、それでも、新人監督である米林監督が80万人を超える動員を記録しているのは、フランスでジブリ人気が根強いことの証左であろう。さらに、この映画は子どもが見ても楽しい映画であり、フランスのアニメの観客の年齢層にも合致したことも背景にあるだろう。
「コクリコ坂から」が41万人動員ということも注目される。「借りぐらしのアリエッティ」は小人の世界というファンタジーを描いており、子どもでも親しみやすいものだったが、「コクリコ坂から」は日本人の実生活というフランス人にはなじみにくい世界を描いたものである。さらに、宮崎駿監督作品でもなく、かつアニメ映画としては、高い年齢層を対象とした作品である。
ちなみにこの期間の日本の実写映画でもっとも動員を集めたのは、フランスで2013年公開の「そして父になる」の39万人、科白のほとんどが日本語の、フランスでの公開が2007年の「硫黄島からの手紙」が31万人である。「コクリコ坂から」はこの2作品を上回る動員を記録していることも特記すべきことである。
そして、この期間のジブリ映画がすべて10万人以上の動員となっていることも重要である。フランスでの配給はディズニーがー行っているが、ディズニーが配給することにより、スクリーンがきちんと押さえられ、観客動員につながったと考えられる。
第2回に続く
[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載記事]